五十嵐仁氏のブログを紹介します。
ゲッペルスはヒトラーの第一の部下で、国民を戦争へと駆り立てる宣伝担当大臣として辣腕をふるいました。
一方、前川前次官と奇兵隊との関係は同氏の名前の「喜平」をもじってつけたもので、小泉政権時代に「奇兵隊、前へ!」のブログを立ち上げて反権力の意見を出したほか、文科省内に彼を支持する「奇兵隊」と呼ばれる人脈を持っていました。
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憲法15条をめぐる菅「ゲッペルス」と前川「奇兵隊」の闘い
五十嵐仁の転成仁語 2017年6月1日
「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」
これは憲法15条に書かれている条文の一部です。ここで規定されている公務員のあり方をめぐって、菅「ゲッペルス」と前川「奇兵隊」が闘っています。
加計学園疑惑をめぐって、「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」などと書かれた一連の内部文書は「怪文書」だとして安倍首相を守ろうとする官邸側と、「担当の専門教育課から報告を受けた際に示された文書。確実に存在していた」「行政がゆがめられた」と証言した文科省の前の次官である前川喜平さんとの対立が続いています。文書を否定し関係者に対する情報統制と前川さんに対する個人攻撃によって事実を隠蔽しようとしている菅官房長官は、まるでヒトラーの忠実な副官だったゲッペルスのような役を演じています。
これに対して、前川さんは、その名の通り「奇兵隊」です。圧倒的に劣る兵力と貧弱な武器を手に立ち上がりました。頼りにできるのは民衆の支持だけです。
この件で争われているのは、公務員のあり方です。首相が行政に介入したのか、あるいは官邸周辺の公務員が権力者の意向に従い、その友人に便宜を図って一部の人々に奉仕してしまったのかが問われているのです。
安倍首相はさかんに国家戦略特区による岩盤規制の打破を繰り返しました。しかし、問題は規制緩和ではなく、それによって特定の人物が便宜を図られ133億円という大きな利益を得たのではないかという疑惑にあります。
もし安倍首相が指示を出していたとすれば、あるいは内閣府などの公務員が首相の意向に従って、またはそれを忖度して、「腹心の友」の加計考太郎さんに「奉仕」していたとすれば、冒頭に掲げた憲法15条に違反することになります。加計学園疑惑の核心はここにあります。
疑いをかけらているのは安倍首相、官邸であり内閣府です。説明責任を果たして身の潔白を証明する先頭に立つべき菅官房長長官が調査や証人喚問を拒否するばかりか、内部告発者に等しい前川さんに対する口ぎたない人格攻撃に終始しているところに、疑惑の信ぴょう性が逆に示されていると言うべきでしょう。
この問題については、その後、新たな展開がありました。前川さんが在職中の昨年9月に和泉洋人首相補佐官から学部新設の対応を急ぐよう直接要請されていたことを明らかにしたからです。和泉さんからは「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」との趣旨の発言もあったそうです。
前川さんが30日に報道各社に送ったコメントによれば、官邸内の和泉さんの執務室で面会し、獣医学部設置の特例について「文科省の対応を早くしてほしい」と求められて了承しました。また、昨年10月半ばに再び和泉さんに呼ばれて官邸で面会し、学部新設に向けた状況について質問され、「引き続き検討中」と答えたといいます。
この件について、菅官房長官は「前川さんが勝手に言われていること」として、調査する考えがないことを明らかにし、和泉首相補佐官は「そんなことを言った覚えはない。総理からの指示もない」とし、前川氏との面会については「会ったことはあるが記録が残っていないので確認できない」と述べています。昨年の秋に会って何を話したか「覚えていない」「確認できない」という答えが苦しい言い訳に聞こえるのは私だけでしょうか。
この前川さんについても、新たな事実が分かりました。文科省退官後にNPO法人「キッズドア」で素性を明かさずに子供の貧困に関するボランティア活動に参加していたというのです。
これについて、子供の貧困問題に取り組んでいる渡辺由美子代表は、自らのブログで「実は、前川氏は、文部科学省をお辞めになった後、私が運営するNPO法人キッズドアで、低所得の子どもたちのためにボランティアをしてくださっていた。素性を明かさずに、一般の学生や社会人と同じようにHPからボランティア説明会に申し込み、その後ボランティア活動にも参加してくださっていた」と書いています。
『毎日新聞』5月30日付夕刊のコラム:ウラから目線「『笛吹く人』を守る」で、この事実を紹介した福本容子論説委員は、「経歴を知らなかったスタッフたちは、会見を見て『あのおっちゃん、偉い人だったんだ』と驚き、心配しているそうだ」と書いている。出会い系バーに通っていたということで菅「ゲッペルス」が人格攻撃した前川「奇兵隊」の本当の「人格」を知るうえで極めて重要な事実だと言うべきでしょう。
まだ、あります。安倍首相と加計学院の関係についても、新たな事実が判明しました。
安倍首相は参院法務委で加計学園との関係を問われ、「(1993年に衆院議員に)当選した当初、数年間、監査のようなものを務め、1年間に14万円の報酬を受けたことがある」と明らかにしたのです。首相は「はるか昔のこと」だと言い訳していますが、ただの友人にとどまらない関係であったことが分かります。
また、31日の記者会見で萩生田光一官房副長官は「和泉補佐官に確認したところ、『そのような発言をした記憶はなく、本件について総理から支持を受けたこともない』ということだった」と述べています。その萩生田さんはかつて落選中に加計学園グループが営む千葉科学大学の客員教授にしてもらっていたことがあり、加計さんに恩義を感じても当然の人です。
千葉科学大学と言えば、第2次安倍内閣で内閣官房参与だった元文科省高官の木曽功さんもそこの学長をやられていますが、この木曽さんは前川さんの3期先輩で獣医学部新設を進めるよう働きかけていたことが『週刊文春』の取材で分かったそうです。前川さんによれば、昨年8月下旬、木曽さんは次官室を訪ねて「国家戦略特区制度で、今治に獣医学部を新設する話、早く進めてほしい。文科省は(国家戦略特区)諮問会議が決定したことに従えばいいから」と要請したといいます。
さらに、安倍首相夫人の昭恵さんは森友学園が設立する予定だった瑞穂の国記念小学院の名誉校長(辞任)を引き受けていましたが、この加計学園でも昭恵さんはグループ傘下の御影インターナショナル子ども園の名誉園長になっています。
国家戦略特区制度担当の山本幸三地方創生担当相についても新たな事実が明らかになりました。山本さんは閣議のあとの記者会見で、「去年9月7日には、加計学園の加計孝太郎理事長が私のところに来て、今治市と共同で獣医学部新設について提案しているので『よろしく』というあいさつがあった。 私は『公正・中立・透明性を持って、しっかりと粛々と進めていきますので、それ以上のことは言えません』と対応した」と述べました。
また山本さんは、記者団が安倍総理大臣と加計理事長が親しい間柄にあることを知っていたかと質問したのに対し、「面会がセットされた時に、事務局から『総理とは親しい間柄の人ですよ』というような話を聞いた。それはそれとして、むしろきちんとした手続きに沿って、客観的に堂々と進めていくという姿勢を心がけないといけないと思った」と述べています。やましいところはない、と強調したいのでしょう。
ここで注目されるのは、「事務局から『総理とは親しい間柄の人ですよ』というような話を聞いた」という点です。なぜ「事務方」は、わざわざそんなことを耳に入れたのでしょうか。
「だから、良しなに」という意味だったのではないでしょうか。そしてこの後、事態は加計さんが望む方向で急進展したのは、皆さんご存知の通りです。
前回のブログで触れた元TBS記者でワシントン支局長だったフリー・ジャーナリストの山口敬之さんの準強姦問題についても新たな展開がありました。山口さんに「レイプされた」と主張するジャーナリストの詩織さんが司法記者クラブで記者会見したのです。
詩織さんは警察に相談して告訴状が受理され、山口さんが日本に帰国するタイミングで逮捕するとの連絡を受けていましたが逮捕されませんでした。その後、書類送検されたのに不起訴処分となり、この東京地検の判断を不服として検察審査会に審査を申し立てました。
報道によると、逮捕をもみ消したのは先日まで官房長官の秘書官だった中村格警視庁刑事部長(現在は共謀罪関係を統括予定の警察庁組織犯罪対策部長)で、山口さんが泣きついたのは北村滋内閣情報官だったそうです。ここでも菅「ゲッペルス」が暗躍していたのでしょうか。山口さんはフリーのジャーナリストですから、どうしてこうなったのか、きちんと取材して事の真相をあばいていただきたいものです。
国政に対する影響力の行使によって行政や司法を歪めたのではないかという疑いが濃厚なのに、安倍首相に対する調査はなされていません。これに対して、共謀罪が成立すれば一般市民であっても監視され捜査されます。
首相なら怪しくても調べないのに、一般市民なら怪しくなくても調べるのでしょうか。この日本は転倒したアベコベ社会になろうとしています。