2019年1月12日土曜日

日銀の株投資(株の買い支え)24兆円 海外投資家ばかりが得

 日銀による株式市場への投資である株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入額が201812月までの累計で239兆円にのぼりました。海外投資家が日本株売りを増やす中、日銀が必死に株価下支えした結果、異常な額に達したものです
 
 特に17年以降は米中貿易摩擦などで世界経済の先行きに不安が強まり、海外投資家は日本株の「売り」を増やす中、18年には海外投資家が売った株は買った株を57兆円も上回ったのに対抗して、日銀は18年だけで65兆円ものETFを買い入れたので、海外投資家は安心して保有株を売ることができました(しんぶん赤旗)
 
 24兆円もの資金を投じてこのような不健全な株の買い方をした結果、日銀の保有株の損益分岐点は1万8434円(11月末)となりました。
 株価がそこまで下がり、「万一、日銀が含み損を抱えているということが公になったら、日銀の信用力は世界的にガタ落ちし、円そのものの信頼度が低下する危険性があ」(黒岩泰氏)ということです。
 日銀は、まさに〝負のスパイラル〟から抜け出せなくなっているのが現状(日刊ゲンダイ)です
 しんぶん赤旗と日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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日銀の株投資24兆円 「日本売り」買い支え 海外投資家ばかり得
 しんぶん赤旗 2019年1月11日
 日銀による株式市場への投資である株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入額が2018年12月までの累計で23・9兆円にのぼりました。海外投資家が日本株売りを増やす中、日銀による株価下支えが異常な額に達しています。
 
 ETFはいくつもの大企業の株式銘柄を組み入れた金融商品です。ETFを買うことによって日銀は間接的に日本の大企業の株を買い、株価をつり上げてきました。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の主要政策です。安倍首相は就任翌年の訪米の際、ニューヨーク証券取引所で講演し、「バイ・マイ・アベノミクス」(わがアベノミクスを買ってください)とまで言って、日本株買いを呼びかけました。
 
 しかし、17年以降は米国の利上げや米中貿易摩擦などで世界経済の先行きに不安が強まり、海外投資家は日本株の「売り」を増やしています。18年には海外投資家が売った株は買った株を5・7兆円も上回りました。これに対して日銀は18年だけで6・5兆円ものETFを買い入れました。日銀が巨額の下支えをしたことで、海外投資家は株価が暴落する心配もなく、安心して保有株を売ることができました
 
 18年末の株価は17年末から13%も下落しました。安倍政権と日銀の株価つり上げ政策は失敗し、日本株を売り抜けてもうけた海外投資家ばかりが得をしています。
図

大発会からETF買い 日銀が抜け出せない“負のスパイラル”
日刊ゲンダイ 2019年1月6日
 日銀が大発会から動いた。きのう(4日)、日経平均は一時、前営業日比で773円(マイナス3・9%)下落。金融市場の混乱を収めるため、政府と日銀は緊急会合を開いたが、市場が最も反応したのは、この会合ではなかった。
「日銀が後場にETF(上場投資信託)を買ってくるとの観測が強まったことで、ようやく下げ止まったのです。緊急会合より効果的でした」(市場関係者)
 終値は452円安(マイナス2・3%)まで戻したが、新年初日から「買い発動」(716億円のETF購入)した日銀に対し、不安を募らせる金融マンが続出している。
 日銀は昨年1年間に6兆5040億円のETFを購入。過去最大の買い入れ額だったばかりか、黒田東彦総裁が目安としていた6兆円を軽く突破した。それだけに市場では、2019年は買い入れ額を減らすべきとの指摘が相次いだ。ところが日銀は、そんな憂いなどお構いなしだった。
 
■このままだと2年後に浮動株が消える
「日銀は現在、取得価格ベースで約25兆円のETFを保有しています。しかも買い入れ中心で、ほぼ売却しません。市場に流通する浮動株は減少するばかりです。今のペースで日銀が株を買い続けたら、ユニクロのファーストリテイリングは約2年後に浮動株がなくなるといわれています」(株式アナリスト・黒岩泰氏)
 日銀にしても、株を買い続けられないことなど百も承知だろう。それでもETF購入をやめられない。
「きのうの暴落局面で日銀がETFを買っていなかったら、市場は絶望したでしょう。次に暴落が起きたとき、『日銀は動かない』と判断され、株安が止まらなくなる。そうなったら、売りが売りを呼ぶ大暴落です。ただ、実は日銀の事情も絡んでいます。日経平均が現在の水準を大幅に下回ると、日銀が含み損を抱えることになるのです」(証券アナリスト)
 
 ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏の推計によると、日銀の保有株の損益分岐点は1万8434円(11月末)だ。きのうの最安値は1万9241円。あと800円あまりの下落で含み損が現実になりかねない。
 
「マイナスに転落しないためには、自ら株を買い続け、株価を維持するしかありません。含み損なんてことが公になったら、日銀の信用力は世界的にガタ落ちし、円そのものの信頼度が低下する危険性があります」(黒岩泰氏)
 日銀は、まさに〝負のスパイラル〟から抜け出せなくなっているのだ。
「日銀のETF購入額を年度ベース(18年4月~19年3月)で見た場合、約1兆4000億円の買い余力があります。月ベースで4600億円程度のETFを購入できる計算です」(ちばぎん証券アナリスト・安藤富士男氏)
 少なくとも3月までは日銀の爆買いが続くことになりそうだ。