2019年1月5日土曜日

田母神・元幕僚長がレーダー照射は大騒ぎする問題ではないと

 昨年1220日に起きた韓国海軍駆逐艦から海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダーの照射」の疑いについては、4日現在も、大いに「熱い問題」であるとしてTVや各紙が取り上げています。
 
 12月26日付LITERAは、この問題に対する元航空幕僚長の田母神俊雄氏らの発言を紹介し、「韓国の艦艇によるレーダー照射が事実だとしても、それは日本政府やネトウヨたちが血眼になって騒ぎ立てているような事態なのか」、「本当に危機的なのは、いま世論が、こうした好戦的な流れに傾きつつあることだろう」と述べています。
 
 田母神氏はツイッター(21~23日)で、要旨〈海自対潜哨戒機に韓国艦艇が火器管制レーダーを照射したこと危険だとして韓国に抗議したという。全く危険ではない。火器管制レーダーは近年フェーズドアレイ方式で常時ほぼ全周に電波を出し続けている。だから周辺にいる航空機などには電波照射が行われてしまう〈ミサイルが発射されるには艦艇内の複数部署で同時に安全装置を外す必要がある。だから火器管制レーダーの電波照射が即危険だということにはならない〉〈今回ぐらいのことは世界中の軍が日常的にやっていることであり、電波照射をしてもミサイルが直ちに飛んでいかないような安全装置もかけられている〉と述べています。
 
 また元海上自衛官で軍事評論家の文谷数重氏も、要旨〈日本政府は極めて強硬な反応を見せているが、こうした対応それ自体が外交的に見て誤としか言いようがない。火器管制用のレーダーというのも、おそらくは精密レーダー、距離や角度を測定するもので、ミサイル誘導用の電波を照射したわけでもなさそう。状況から敵意も認められないし、脅威度も極めて低い〉と述べています。
 
 いずれにしても一国の首相が大騒ぎするような問題ではなく、メディアを動員して重大事であるかのように煽るのは、ネトウヨを喜ばせるただけの愚かなことです。
 
 火器管制レーダー照射問題をめぐり日韓の主張がぶつかる中、防衛省は28日、当時の映像の公開に踏み切りました。これは同省が防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったものを、韓国にいら立ちを募らせる安倍首相がトップダウンで押し切ったものでした。
 安倍首相は近隣の中国、北朝鮮、韓国に対しては、いつもこのような高圧的な態度を取り続け、子供の喧嘩のように熱くなるのを常として来ましたが、まことに愚かなことです。
 
 4日付のRecord Chinahttps://news.infoseek.co.jp/topics/recordchina_RC_676422)によれば、韓国紙は一斉に「映像公開」を主導したと報じられた安倍首相に非難の矛先を向けています。
 朝鮮日報は「これまでならば、両国の国防関連当局間で水面下の話し合いをして直接、事実関係を確認し、『誤解』を解くことができる事案だ。このように大ごとになっていること自体が今回の問題の本質なのかもしれない」東亜日報は「レーダー問題は6年目に入って支持率が落ちている安倍首相が国内世論用として煽っているという観測も出ている。日本は速やかに事実関係に基づいて静かに問題を解決すべきだ」韓国日報「レーダー問題を煽る安倍、韓日関係復元意志はあるのか」との社説で「日本が一方的に動画を公開したのは深刻な外交欠礼で、外交問題を収拾すべき責任のある首相が、国内政治に利用しようと煽ったのは慨嘆するしかない」ハンギョレは「いったい安倍首相は韓日関係をどこまで悪化させるつもりなのか問わざるを得ない」それぞれ述べています。
 
 「外交の安倍」というのであればなぜ大局的な見地に立てないのでしょうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
韓国軍レーダー照射に田母神俊雄・が「危険じゃない」
「大騒ぎしなくてよい」と発言し ネトウヨがヒステリー
LITERA 2018年12月26日
 日本海上で警戒・監視の任務にあたっていた海上自衛隊の哨戒機が、韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けたとされる問題。日韓両政府の見解が正面から食い違うなか、ネット上ではネトウヨたちが「じゃあ戦争すっか」「反撃するしかないだろ」などと噴き上がっている。典型が高須クリニックの高須克弥院長だ。
    (中 略)
 だいたい、高須院長やネトウヨたちは、さも韓国軍のレーダー照射=自衛隊への攻撃かのようにわめき散らしているが、韓国側は「北朝鮮の漁船探索のためにレーダーを使用したもので、哨戒機追跡の目的で使った事実はない」「低空飛行する哨戒機に対して、レーダーの横に付いている光学カメラを作動させた」などとして、火器管制レーダーの照射を否定。実際、このとき韓国軍の艦艇は遭難した北朝鮮の漁船を救助しており、乗組員3人と遺体1体を北朝鮮側に引き渡している。少なくとも、韓国軍に自衛隊機への“攻撃意図”があった可能性はゼロと言っていいだろう。
 
 もっとも、レーダーの照射の有無や態様については、日韓の両当局の見解が真っ向から対立している以上、オープンな真相究明を待たねばならない。しかし、韓国の艦艇によるレーダー照射が事実だとしても、これ、日本政府やネトウヨたちが血眼になって騒ぎ立てているような事態なのか。というのも、実は、あの元航空自衛隊最高幹部からも「大騒ぎしなくてよい」との指摘が出ているからだ。
 他ならぬ、元航空幕僚長の田母神俊雄氏のことである。周知の通り、田母神氏といえば、日頃から超タカ派の言説をぶちまけ、ネトウヨからも「閣下」「神」扱いされているお方。そんな田母神氏が、このレーダー照射事案のニュースを受けて、Twitterでこんな連投をしたのである。
 
 〈韓国艦艇が海自対潜哨戒機に火器管制レーダーを照射したことで日本政府が危険だということで韓国に抗議したという。全く危険ではない。火器管制レーダーは近年フェーズドアレイ方式で常時ほぼ全周に電波を出し続けている。だから周辺にいる航空機などには電波照射が行われてしまう。〉(21日)
 〈韓国艦艇は海自の対潜哨戒機だけを狙って電波照射したのではないと思う。周辺にほかの航空機がいればそれらも電波照射を受けている。しかしミサイルが発射されるには艦艇内の複数部署で同時に安全装置を外す必要がある。だから火器管制レーダーの電波照射が即危険だということにはならない。〉(同日)
 さらにツイートは
 〈平時は突然ミサイルが飛んでくることはないから大騒ぎしなくてよい〉(同日)、
 今回ぐらいのことは世界中の軍が日常的にやっていることであり、電波照射をしてもミサイルが直ちに飛んでいかないような安全装置もかけられている〉(23日)
などと続く。
 
 ようするに、田母神氏によれば火器管制レーダーの電波照射は常時行われているもので、かつ、常に周辺に電波を出し続けているので、今回の照射事案は偶然にも韓国軍艦艇の周辺にいた自衛隊の哨戒機にあたってしまっただけではないのか、というのだ。
 
冷静に「騒ぐ必要はない」という田母神にネトウヨが炎上攻撃
 念のため繰り返しておくが、一応、この人、腐っても航空自衛隊の元トップである。そのヤバすぎる政治信条や歴史認識にはいささかたりとも同意する部分はないが、軍事機器に関する知識はある程度正確なはずだ(でなければますますヤバい)。ところが、ネトウヨたちはこの“神”のツイートに猛反発、みるみるうちに炎上させてしまったのだ。
    (中 略)
 この絡み方の“キモさ”にネトウヨの真髄を見た気がするが、いずれにせよ、本当に危機的なのは、いま世論が、こうした好戦的な流れに傾きつつあることだろう。
 いうまでもなく、論調を牽引しているのは日本政府だ。たとえば、防衛省が火器管制レーダーの照射を受けたと公表した21日、岩屋毅防衛相は「攻撃直前の行為。不測の事態を招きかねず極めて危険」と言明。前防衛相の小野寺五典・自民党安全保障調査会長も、25日の党の部会で「政府はもっと厳しく韓国に対応すべきだ。強い抗議を韓国にしていただきたい」などと鼻息を荒くしている。
 
過剰な安倍政権、日本政府の対応がさらに事態を困難にしている
 しかし、「そこまで騒ぎ立てることではない」と指摘する自衛隊OBは、前述の田母神氏だけではない。本サイトの取材に対して、元海上自衛官で軍事評論家の文谷数重氏はこう語る。
「日本政府は今回のレーダー照射に関して極めて強硬な反応を見せていますが、こうした対応それ自体が、外交的に見て誤としか言いようがありません。そもそも、火器管制用のレーダーというのも、おそらくは精密レーダー、距離や角度を測定するもので、ミサイル誘導用の電波を照射したわけでもなさそうです。いずれにせよ、今回の事案で一切の損害が生じていないように、照射されたとしても何も起きません。状況から敵意も認められませんし、脅威度も極めて低いでしょう」
 
 さらに、文谷氏はプラグマティックな立場から、日本政府が世論を煽ることのデメリットについて続ける。
「にもかかわらず、韓国側に烈火のごとく抗議して何を得られるというのでしょうか。日本政府も韓国政府も一切の利益を得ることはなく、それどころか両国の関係が悪化するだけです。ただでさえ、元徴用工や元慰安婦の問題で、日韓政府は請求権に関する外交的妥協点をあらためて模索せねばならぬ時期。そのなかで、日本政府が『韓国けしからん』という国民世論を煽ることは、政治だけでなく経済にも重大な悪影響を及ぼす以外にありません。本来であれば、両国当局が水面下で交渉し、見解の相違などについて解決すべきでした」
 
 文谷氏の指摘するように、今回の事案に対する日本政府の反応は、明らかに過剰としか言いようがない。安倍政権にとって、そこにメリットがあるとすれば、国民の意識を韓国に向かわせて、国内の相次ぐ不祥事などに関する批判をうやむやにし、政権浮揚のきっかけとすることぐらいだろう
 だが、こうした偶発的なトラブルの発生を、色気を出した政治権力が利用することで、それこそ冒頭で触れた高須院長のように、「即座に撃沈すべき」などと戦争を煽る論調がはびこる。そして、いつのまにかこうしたファナティックな世論に押され、日韓関係は引き返せないところまで行く可能性もあるだろう。
 
 両国政府も含めて、いまのうちに、わたしたちが抑制的かつ冷静になり、好戦的な論調をなだめていかねば、本当に危険な対立状態に突入しかねない。無論、そうなってからでは遅すぎるのだ。 (編集部)