2019年1月28日月曜日

28 - 国の統計調査 政策の基盤崩れている(北海道新聞)

 北海道新聞が題記の社説を出しました。
 
 以前にも書きましたが、2004年から行われるようになった毎月勤労統計の不正は、社会保障費の抑制を謳った小泉政権時代に、役人が賃金レベルを実際より低く出すために、賃金の全国平均を求めるに当たり、相対的に賃金レベルが高い東京都の分を1/3に抑えることを案出したもので、意図的で犯罪的なものでした。
 
 そして安倍首相が一昨年、大企業を中心に賃金を「3%」アップさせると異例の数値目標掲げると厚労省は昨年1月、今度は東京都の分を3倍にして平均を出すという「正しい」操作に戻した結果、見事に前年同月比で33%増という高い数字が出ました。 いうまでもなくこれは前年のデータが間違っているからで、それらを補正すると14%になりました。
 
 これらで見られるのは、いまや官僚は政権の走狗に成り下がっているということです。 彼らにはもはや国家公務員としての矜持はないようです。
 
 厚労省の賃金調査不正に関する監察委員会の調査が余りにもお粗末だったため、やり直すという異例の事態になりました。そもそも報告書の原案は厚労省の官僚が書いたと言いますから、もはや何をか言わんやです。今回は1週間でまとめるという制約(厚労省自らが決めた)があったためそんなことになりましたが、多くの委員会等において、結論は担当省庁が最初から決めているというのが真相なのでしょう。
 
 闇は果てしなく深いけれども、そうしたことは委員会で調査しても何も明らかにはされない・・・それが現実です。
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社説 国の統計調査 政策の基盤崩れている
北海道新聞 2019年1月27日
 経済や社会の姿を正確に映し出し、政策づくりの基盤にする。そんな政府の統計に対する信頼が、ますます揺らぐ事態である。
 厚生労働省による毎月勤労統計不正調査を受けて各府省庁が56の基幹統計を点検し、22統計で計31件の不適切処理が見つかった。
 21の統計で、計画通りに集計・公表しないなど統計法違反の可能性があると確認された。
 官僚組織に内在する構造的なひずみが問題の背景にあると言わざるを得ない。公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)と根は同じだろう。官僚を使いこなすべき歴代首相や閣僚、監視すべき国会議員の責任も大きい。
 あす召集される通常国会では、与野党ともその自覚を持ち問題の徹底解明に取り組むべきだ。
 
 不適切な22統計は厚労省のほかに国土交通省、農水省など計7省にまたがる。統計行政全般を所管する総務省が自ら集計している統計でも三つが該当した。
 総務省の第三者機関である統計委員会の西村清彦委員長は18日の本紙への寄稿で、勤労統計不正は「氷山の一角」と指摘していた。
 政府が統計部署を軽視し、人員や予算を削減した結果の「制度疲労」であるとの見解だった。
 指摘は的を射ていたと言っていいだろう。政府内の体制の立て直しと再発防止が急がれるが、その前提となるのは真相の究明だ。
 
 勤労統計以外の不適切な処理について菅義偉官房長官は「多くが単純ミス」と述べた。これだけの数の事案を軽微なものとして片付けてはなるまい。厳密な検証が求められることに変わりはない。
 一方、毎月勤労統計の不正問題を巡り根本匠厚労相は、外部有識者の特別監察委員会による調査をやり直す方針を表明した。
 国会の閉会中審査で、一部の厚労省職員に対する聴取を同じ厚労省の職員が行ったことに、中立性が疑われると批判されたためだ。
 「身内調査」もあきれた対応だが、そもそも15年間にも及ぶ不正の全容を、わずか1週間足らずの聴取で解明できるはずがない。
 監察委の報告書が、厚労省の組織的隠蔽はなかったと認定したことには、与党からも強い疑問の声が出た。一から仕切り直しての徹底的な再調査が求められる
 勤労統計不正は、政府予算案修正という異例の事態に発展した。
 膨大な予算書の数字の背後に、隠されたデータ不正は他にないのか。予算案の審議に臨む議員は、一つ一つの費目を精査し、行政監視の使命を果たしてもらいたい。