2019年1月19日土曜日

「外交の安倍」どころか疫病神 日露、日韓、日米の無残(日刊ゲンダイ)

 安倍・トランプ両氏の関係をみて、日米関係が良好と本気で考えている人がいるならば、それは甘すぎます。トランプ大統領氏にとって安倍首相は単なる「カモ」であり、そのことは3月から始まる日米FTA交渉で明らかになることでしょう。
 
 北方領土問題では、プーチン大統領に手玉に取られていまや惨憺たる状態です。多くを語る必要もありません。
 
 韓国とのレーダー照射問題、徴用工問題では、安倍首相は韓国蔑視を絵に描いたような対応に終始しています。
 韓国社会で安倍首相ほど嫌われている日本の現役政治家はいないということですことごとに見せる韓国への横柄な態度がそうさせているのでしょう。
 第2次安倍政権発足から6年あまり安倍首相の一連の言動を振り返れば、日韓関係が悪化の一途をたどるのは必然で、安倍政権が続く限り日韓関係の信頼回復は不可能と見られています。拉致問題のことなど安倍首相の念頭には、端からなかったのでしょう。
 
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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「外交の安倍」どころか疫病神 日露、日韓、日米の無残
日刊ゲンダイ  2019年1月16日
(阿修羅 文字起こしより転載)
「戦後日本外交の総決算を果断に進めてまいります」
 安倍首相が年頭所感でこう気炎を吐いてから2週間。“外交の安倍”は新年早々から立ち往生している。「プーチン大統領とは戦後70年以上残されてきた課題に必ずや終止符を打つという強い意志を完全に共有した」と喧伝してきた北方領土問題は、完全にドツボにハマった。
 
 1956年の日ソ共同宣言を基礎とする平和条約締結に向けた「交渉責任者」に位置付けられた日ロ外相による14日の初協議。ラブロフ外相が強硬に主張したのは「南クリール諸島(北方領土)の主権はロシアに移ったというのが基本的な立場だ。それを日本側が認めることなしに交渉の前進は難しい」「日本の国内法で『北方領土』と規定されているのは受け入れられない」というロシア側の姿勢だった。
 つまり、第2次世界大戦の正当な結果として北方領土がロシア領になったと認めない限り、平和条約交渉は進めないというのだ。
 元レバノン大使の天木直人氏は言う。
「北方領土問題を巡る対ロ交渉は予想できない展開になってきました。歴史的成果を求める安倍首相は4島返還という従来の政府方針を後退させ、2島返還まで譲歩したにもかかわらず、ゼロ返還だとダメ押しされたようなもの。おそらく、官邸も想定外なのではないか」
 
「帰属」言及で期待をあおった交渉進展 
 共同宣言は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記している。安倍はそれを前提に年頭会見で「北方領土には多数のロシア人が住んでいる。住民の方々に、日本に帰属が変わるということについて納得、理解をしていただくことも必要です」と踏み込み、北方領土交渉の進展をにおわせていたのは一体何だったのか。この前のめり発言がプーチン大統領の怒りを買い、駐ロ大使が外務次官に呼びつけられて抗議を受け、官邸は火消しに追われていたが、狡猾なプーチンにとっては序の口だったのだ。
 
 そもそも、北方領土問題が急浮上したのは16年5月にソチで行われた13回目の日ロ首脳会談だ。
 安倍が共同経済活動を持ちかけ、領土交渉を巡る「新しいアプローチ」で合意。ところが、支援を出し惜しむ日本側にシビレを切らしたプーチンが昨年9月の東方経済フォーラムで「年内に前提条件なしで平和条約を結ぶべきだ」とブチ上げ、11月に日ソ共同宣言を基礎とする交渉加速で合意する。93年の東京宣言、2001年のイルクーツク声明を経て4島返還に押し戻したのに、一瞬でパーになり、揚げ句がこのザマなのである。
 
首脳会談で要求される在日米軍の縮小・撤退 
 安倍政権による政策の“大転換”に警鐘を鳴らしてきた北海道大名誉教授の木村汎氏(ロシア政治)は、日経新聞(15日付朝刊)でこう喝破していた。
〈安倍晋三首相は自分の任期内に決着させるとして交渉期限を自ら区切ってしまった。交渉は期限を決めた方が不利になる。首相の自民党総裁としての任期は2021年9月までで3年もない。プーチン氏の任期は24年までで、憲法を改正してさらに延ばすとの見方もある。プーチン氏は交渉が長引くほど首相は焦るとみて強気にでてくるだろう〉
〈安倍首相は信頼外交を重視して首脳会談で一対一の会合を好むが、外交の常道からしても危険きわまりない。プーチン氏とは信頼関係はつくれない。中国や米国をけん制するために日本を利用しているだけだ〉
 
 木村氏の指摘は正鵠を射たものだ。プーチンは交渉のハードルをどんどん上げてきている。7月の参院選を控え、安倍は6月に大阪で開催されるG20のタイミングで平和条約締結の大筋合意を目指している。残された時間はわずか。この状況で突っ込めば、22日にモスクワで予定される25回目の日ロ首脳会談では何を要求されるか分かったものではない。
 筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。
「外相会談でハッキリしたのは、日ロ間に領土問題は存在しないというロシアの立場です。2島返還はおろか、北方領土についても議論する考えはなく、念頭に置いているのは平和条約締結だけ。安倍首相は日ロ首脳会談をキャンセルするのが筋です。交渉進展を演出するために訪ロすれば、プーチン大統領の思うツボ。年末恒例の大記者会見で言及したように、プーチン大統領の関心事は在日米軍の展開です。ロシアの安全保障政策上、米軍の存在は邪魔で仕方がない。平和条約締結の条件に在日米軍の縮小・撤退の法的確約を押し込まれるのは必至。日米同盟との板挟みに陥り、国際社会の不信を招くだけです」
 
 その日米関係だって、トランプに押されっぱなしなのは言うまでもない。安倍は訪ロと世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)への出席を理由に21~24日の日程で外遊する。そのシワ寄せで通常国会の召集は28日まで先送りされた。自分勝手なレガシーづくりの妄想の挙げ句、国会を軽視し、成果を得るどころか、やることなすこと亡国の迷走。目も当てられない「安倍外交」の無残である
 
政権交代以外に対韓関係改善の道なし 
 元徴用工賠償やレーダー照射問題を抱える日韓関係もこじれにこじれている
 昨年10月に韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決を巡り、安倍は「国際法に照らしてあり得ない判断だ」と繰り返して韓国世論を逆なで。65年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」とする政府方針にならった企業側も原告団との協議に応じず、一部資産が差し押さえられた。安倍政権は文在寅政権に対して請求権協定に基づく協議を要請し、30日以内に応じるかどうか回答するよう求め、韓国世論のさらなる反発を招いている
 
 韓国軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に射撃用の火器管制レーダーを照射したとされる問題を巡っては、日韓防衛当局者が駐シンガポールの両国大使館を行き来する形で2回目の実務者協議を実施したが、議論は平行線だ。韓国の世論調査会社リアルメーターによると、対日外交への政権対応について45・6%が「より強硬に対応すべきだ」と回答。「対応は適切」が37・6%で続き、「自制すべきだ」は12・5%にとどまった。
 
 韓国情勢に詳しい国際ジャーナリストの太刀川正樹氏はこう言う。
期限を区切った協議要請は最後通牒のようですし、第三国での協議開催はまるで国交のない国同士のやりとりです。安倍政権は恣意的にコトを大きくしているのではないか。今回の件に限らず、韓国社会で安倍首相ほど嫌われている日本の現役政治家はいません。朝鮮民族をイジメ抜いた岸信介元首相の孫にあたる上、韓国を見下したような横柄な態度を取るので思想の左右を超えて忌み嫌われている。さらに、南北融和に水を差し、一方で北朝鮮による拉致問題解決に向けて協力を求める。支離滅裂です。安倍政権が続く限り、日韓関係の信頼回復は不可能といっていいレベルまできている」
 
 第2次安倍政権発足から6年あまり。安倍の一連の言動を振り返れば、日韓関係が悪化の一途をたどるのは必然だった。93年の「河野談話」で決着した慰安婦問題を蒸し返して反日感情をあおった揚げ句、15年の日韓合意で「和解・癒やし財団」に10億円を拠出。それも文在寅政権誕生で空中分解してしまった。約11年ぶりの南北首脳会談、史上初の米朝首脳会談の足掛かりとなった平昌五輪では、米韓合同軍事演習に口を挟んで文在寅に「内政干渉だ」と一喝される始末。これだけ日韓関係を悪化させておいて、よくもまあ、「拉致問題の解決が最優先」などとホザけるものだ。
 
 15日、しまね観光大使らからボタンの花束を贈られた安倍は「安倍政権も大輪の花を咲かせたい」とニヤけていたが、この国にとって安倍の存在は今や完全に「疫病神」だ。それはもはや疑いようがない。