辺野古新基地建設の是非を問う沖縄県民投票では、うるま市の島袋俊夫市長が18日に県民投票への不参加を正式表明したことで、沖縄県内5市の不参加が決まり、県民の約3割が投票できない異常事態になりました。
沖縄の「新基地建設反対県民投票連絡会」が昨年末、市長が県民投票不参加を表明した5市で実施した調査によると、県民投票に「賛成」の比率は、うるま市69%、沖縄市76%、宜野湾市73%、宮古島市63%、石垣市56%で、それぞれ「反対」を大きく上回っていました。
要するに市長らの投票不参加の決定はそもそも市民の意向に反するものだったわけですが、それだけでなく、5人は揃って沖縄の保守系市長からなる『チーム沖縄』のメンバーであることから、政権の意向に沿って、確信犯的に「県民投票をやらせないようにした」可能性が濃厚です。
LITERAが、沖縄の議員や首長に対して県民投票反対の指南役を果たしたとされる宮崎政久衆院議員の背後に、安倍官邸が見え隠れしていることを報じました。
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沖縄県民投票“不参加”指南の背後に安倍官邸の存在か!
指南議員は安倍チルドレンで、沖縄ヘイトデマ勢力と共著も
LITERA 2019年1月19日
投票によって選ばれた首長が、住民の投票する権利を奪おうとする──。住民投票条例に基づいて来月2月24日に実施される辺野古の新基地建設の是非を問う県民投票をめぐり、宜野湾市、沖縄市、うるま市、石垣市、宮古島市の5市が不参加を表明、主権者の意志表示を封じようという異常事態に発展している。
その結果、本日になって県民投票の選択肢を「賛成」「反対」の2択から、「容認」「反対」「やむを得ない」の3択に増やす案で調整がはじめられたと報道。現在は不参加表明の5市の動きに注目が集まっている。
県議会では「賛成」「反対」の2択の条例案で可決されている上、「容認」にくわえて「やむを得ない」という選択肢を設けるのは事実上の「賛成」を増やそうとするだけの意図的なもの。憲法違反も指摘されている一部自治体の不参加表明によって、ここまで追い詰められていること自体がおかしいだろう。
しかも、このような事態に陥った原因である県民投票の不参加表明の背景には、自民党議員の“指南”があったことが発覚している。弁護士資格をもつ宮崎政久衆院議員が昨年12月、市町村議会が県民投票にかんする予算を採決する前に保守系議員を対象にした勉強会を開催、宮崎議員が作成した資料には〈県民投票の不適切さを訴えて、予算案を否決することに全力を尽くすべきである〉と書かれ、予算案を否決する呼びかけをおこなっていたのだ。
そして、この宮崎議員の動きが市議会の決定に影響を与えた。実際、〈市議会で予算案を否決された下地敏彦宮古島市長らが「県と市は対等で、執行するかしないかは市長の判断」「議会の意向を尊重する」と語った県民投票不参加の理由は、この資料と符合〉しており(沖縄タイムス15日付)、さらに勉強会に参加した市議は「勉強会以前は、否決をしたいという雰囲気はなかったと思っている。説明・説得などによって雰囲気は変わってきたなと感じている」と話している(テレビ朝日『報道ステーション』16日放送)。
国会議員が地方自治にまで介入し、市民の投票する権利を奪うという憲法14条が規定する「法の下の平等」に違反する呼びかけをおこない、決定に影響を与えていた──。しかも、問題は、この宮崎議員の動きの背後に、官邸の存在が見え隠れすることだ。
宮崎議員は今回の問題について、官邸や自民党本部からの指示は「ない」と説明しているが、じつは、宮崎議員が県民投票の予算否決の呼びかけに邁進していた最中の昨年12月10日、宮崎議員は松川正則・宜野湾市長と連れ立って首相官邸を訪れ、菅義偉官房長官と面談をおこなっているのだ。
宮崎議員はこの面談について〈最近の外来機の飛来の多さには政府からしっかりと対応するよう求めています〉とTwitterに投稿しているが、松川宜野湾市長はこの面談から約2週間後の同月25日、下地宮古島市長につづいて県民投票への不参加を表明している。
そもそも宮崎議員は、2012年の総選挙において比例復活で初当選した“安倍チルドレン”だ。選挙戦で宮崎氏は「普天間の危険性除去に最も早くて確実な方法は県外」と県外移設を公約に掲げていたが、翌年、菅官房長官が「県外移設はあり得ない」と沖縄県選出国会議員を“恫喝”すると、宮崎議員は公約を撤回して辺野古容認派に。県民を裏切る言動に出たその後は、菅官房長官と歩調を合わせてきた。
沖縄県民投票“不参加”指南の宮崎政久議員と菅官房長のコンビが
たとえば、2016年1月におこなわれた宜野湾市長選をめぐっては、現職だった佐喜真淳氏が公約に掲げた普天間基地返還後の跡地にディズニーリゾートを誘致する構想に対し、菅官房長官が「非常に夢のある話だ。政府として全力で誘致実現に取り組むことを誓う」と約束するなど、菅官房長官を筆頭に安倍官邸が選挙戦をバックアップ。このとき、佐喜真陣営の陣頭指揮をとったのが、宮崎議員だった。
そして、この選挙で佐喜真氏が当選した翌月には、宮崎議員は衆院内閣委員会で「オール沖縄」という表現を槍玉にあげ、「普天間の返還を一番に考えてほしいし、そのことをストレートに訴えていいんだ、こういう民意が示された」「これは沖縄県民の心の叫び」と発言。すると、菅官房長官も「私も常日頃『オール沖縄』というのは現実と比較をして極めて乖離している、そういうことを言っておりました」と、まるで示し合わせたような答弁をおこなっている。
さらに、宮崎議員は2017年の衆院選で比例復活もならず落選したが、“浪人中”の昨年6月28日には、安倍首相と赤坂で会食。宮崎議員はTwitterに安倍首相との2ショット写真付きで〈今夜は安倍晋三総理から勇気を頂きました。「私の父も3回目の選挙で落選して、夫婦で選挙区を歩いてた。今の宮崎さんが沖縄でやってることと同じ。だから、必ず国会に戻れるから頑張れ」安倍総理の激励に心が震えました〉と投稿している。
この日はほかにも九州・沖縄選出の衆参議員らが安倍首相との会食に同席しているが、当時は11月に予定されていた沖縄県知事選(実際は翁長雄志知事の死去によって前倒し)に向け、安倍首相が選挙対策の強化に発破をかける意味合いがあったのはあきらかだろう。
沖縄の自治体のなかでも官邸が重要視する宜野湾市を選挙区にする宮崎議員と、菅官房長官を筆頭とする安倍官邸との二人三脚──。その上、宮崎議員は、思想的にも安倍首相と軌を一にしている。
現に2014年におこなわれた日本会議系のイベント「沖縄県祖国復帰42周年記念大会」で、那覇市にある「わかめ保育園」の園児らが日の丸のワッペンを胸に付け「教育勅語」を唱和したのだが、宮崎議員も登壇し賞賛、スピーチを披露。その上、2017年には、ヘイト出版社・青林堂が出版した『沖縄の危機!『平和』が引き起こす暴力の現場』なる沖縄ヘイト・デマ本の共著者となっているほどなのだ。
国会議員でありながら沖縄ヘイト・デマ勢力と手を結び、「沖縄の分断」に加担する。今回の宮崎議員による県民投票を妨害するような言動に官邸の指示や意向がはたらいていても、何の不思議もないのだ。
新基地建設に対する県民の意志表示、投票の権利までをも奪おうとする卑劣さ──。民主主義を平気で破壊しようとするこの暴挙には、日本全体で怒りを示さなければならない。 (編集部)