毎月勤労統計の不正が発覚したきっかけは、厚労省の担当職員が総務省の統計委員会の打ち合わせで「東京以外の地域でも従業員500人以上の事業所について抽出調査を実施したい」と発言したことで、西村委員長が「抽出調査は重大なルール違反」と指摘し、統計の信頼性確保の観点からも危機的状況だとの認識を示したことでした。
統計法では、毎月勤労統計など、政府の経済指標などに幅広く用いられる「基幹統計」を行う際、担当大臣が総務相に調査内容などを事前申請し、承認を受けることを義務付けています。しかし厚労省は、調査内容の変更を総務相に申請していませんでした。
抽出調査は何よりも誤った統計値が得られる点で問題ですが、統計法にも違反していたわけです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
勤労統計不正 統計法違反の疑い 抽出に変更、届けず
東京新聞 2019年1月16日
賃金動向を把握する「毎月勤労統計」の不正調査問題で、十五日の自民党の厚生労働部会に出席した総務省の担当者は、今回の調査が統計法違反にあたる疑いを指摘した。公明党は党部会で、第三者機関による原因調査を求めたのに対し、厚生労働省は、省内に設置した弁護士らによる監察チームで調べる方針を説明。自民党も了承した。(坂田奈央)
厚労省は今回、従業員五百人以上の事業所はすべて調べると申請しながら、東京都内では一部の事業所だけを抽出して調査していた。
統計法は、毎月勤労統計など、政府の経済指標などに幅広く用いられる「基幹統計」を行う際、担当大臣が総務相に調査内容などを事前申請し、承認を受けることを義務付けている。しかし厚労省は、調査内容の変更を総務相に申請していなかった。
自民党部会に出席した総務省の担当者は、こうした対応について「承認した通り行っていない。統計法に抵触するのではないか」と話した。違反すると、六月以下の懲役または五十万円以下の罰金が科せられる可能性がある。
自民党の小泉進次郎部会長は会合後「恐らく統計法違反だろう。厚労省は責任感を発揮してほしい」と原因の徹底究明を求めた。
立憲民主、公明両党も同日に厚労部会を開催。立民は、厚労省の担当者に不正の動機や経緯、今後の調査方法などをただした。公明の部会では、党所属の大口善徳厚労副大臣が「国民の皆さんはもとより、国会、党の皆さんに大変ご迷惑をおかけした」と陳謝した。
厚生労働省の「毎月勤労統計」不適切調査を巡る経緯
1996年以降
|
全国の約3万3000事業所が対象と公表しながら、
|
約3万事業所しか調べず
| |
2004年1月
|
東京都分で従業員500人以上の事業所を一部抽出
|
する調査を開始
| |
2016年11月
|
総務省統計委員会で「今後も現状を同様、全数調
|
査で行う予定」と事実と異なる説明
| |
2018年1月
|
全数調査に近づける統計上の修正処理を導入した
|
が、経緯を公表せず
| |
6月0
|
政策統括官付参事官の名で神奈川、愛知、大阪の
|
3府県に通知を出し、19年から抽出調査への切り
| |
替えを打診
| |
12月0
|
総務省からの指摘により不適切調査が判明。
|
3府県への打診を撤回
|
(原図の写真版をテキスト版にしました。青字の部分が「統計法違反」の疑い)