2019年1月6日日曜日

06- 2018年「芸能人よく言った大賞」(前・後編)(LITERA)

 LITERAが、恒例の新年特別企画 2018年「芸能人よく言った大賞(前編)(後編)」を発表しました。
 安倍内閣の登場以後、TVの娯楽番組の中でさえ少しでも政権を批判するようなことを口にすると、ネトウヨや時には出席メンバーから徹底的に叩かれるという、実に歪み切った世情になりました。
 そんな中で芸能人が敢えて政権批判をするのは、場合によってはテレビ番組やCMから降板につながることを覚悟しなければならないほど、特別に勇気がいることです。勇気だけでなく、周囲から攻撃されても冷静に対処できるように才覚を磨き、常に多角的な知識を吸収しておくという研鑽も必要です。
 2018年も、政治や権力に対しておかしいことは「おかしい」とはっきり口にし続ける勇気ある芸能人や文化人がいました。
 リテラはそんな人たちを称えようと、毎年「芸能人よく言った!大賞」を発表しています。
 原文は前・後編合わせて12000字超の長いものなので、事務局で作った抜粋版(9500字)を紹介します。
 原文をご覧になりたい方は下記をクリックしてアクセスしてください。
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リテラの新年特別企画 
安室奈美恵、上田晋也、村田諒太…圧力に負けず政権への怒りを貫いた芸能人に捧ぐ!「芸能人よく言った大賞」(前編)
LITERA 2019.01.04.
 最近起きたローラのケースをみてもわかるように、タレントや芸能人が少しでもいまの政治を批判するような発言をするや、ネトウヨや安倍応援団から束になって攻撃され、テレビやCMから降板するよう圧力をかけられるというのが、芸能界の現状だ。その結果、メディアでは空気を読むのに長け、政権や強いものに媚を売るタレントばかりが席巻するようになった。
 しかし、一方で政治や権力に対しておかしいことは「おかしい」とはっきり口にし続ける勇気ある芸能人や文化人も、少ないながら存在している。そんな芸能人、文化人を称えようと、リテラが毎年、選んでいるのがこの「芸能人よく言った!大賞」だ。
 もちろん、リテラに表彰されたところで誰もうれしくないだろうし、下手をしたら、「ネガティブな反応が増えるだけ」と迷惑がられるかもしれない。しかし、それでも、わたしたちは彼らの勇気を称えずにはいられない。彼らが言葉を発してくれたおかげで、国民が今まで隠されていた政治の問題点を知り、沈黙していた人たちが励まされ、権力の横暴に「NO」を突きつける声が確実に増えているからだ。
 
 ということで、迷惑を承知でお届けする「芸能人よく言った!大賞」、まずは前編、10位から6位までを発表しよう。
 
★10位 上田晋也(くりぃむしゅちゅー)
「赤坂自民亭」問題で安倍首相の責任を問い「退陣に値する」と怒り全開
 多くの情報番組でMCをつとめているものの、あまり政治的な発言をしている印象がなかったくりぃむしゅちゅーの上田晋也。ところが、2018年は安倍政権に対して、毅然と批判の声を上げた
 そのひとつが、7月、豪雨被害が起きた最中に安倍首相はじめ自民党議員が「赤坂自民亭」なるどんちゃん騒ぎの飲み会を行っていた問題へのコメントだ。ほとんどのニュースやワイドショーが「野党から批判の声が上がっています」という程度でお茶を濁す中、上田は自らがMCをつとめる『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)で、こう語った。
「先日の大阪の地震のときもね、安倍総理と岸田さんお食事会してらしたわけでしょ。で、今回のコレでしょ。僕はね、以前、えひめ丸の事故のとき、森喜朗首相がゴルフやってて退陣まで追い込まれたじゃないですか。僕はまったく同レベルの話だと思うんですよ」
(中 略)当然、この発言は話題になり、ネトウヨや安倍応援団から一斉に〈上田晋也は反日左翼〉〈極左マスゴミの操り人形に成り下がったな〉などと攻撃を仕掛けられたが、しかし、上田の「言うべきことは言う」という姿勢はぶれなかった。
(中 略)「なんて言うんでしょうね、あの特定秘密保護法案のときですかね、(法案を)強引に通して、『ちょっと私も説明不足でした』と安倍総理がね、『今後、真摯に丁寧に説明していきたい』とおっしゃいましたけど。あれ以降、1個も丁寧に説明していただいた覚えはないんですけどね。どの法案もただ強引に通して、今回も党利党略で拙速に決められた感が非常にあるんですが」
(中 略)大物芸人ということで、政治的発言は他のタレント以上に難しい面があると思うが、今年も引き続き、安倍政権の横暴や怠慢を徹底批判する気骨を発揮し続けてくれることを期待したい。
 
★9位 村田諒太——安倍首相の国民栄誉賞乱発に「広告価値で判断」「差別」と真っ向批判!
 オリンピックの金メダリストや人気のプロスポーツ選手をかたっぱしから取り込んで、政権の宣伝に利用しまくっている安倍首相。(中 略)そんな醜悪なスポーツの政治利用に、はっきりと「NO」を突きつけたのが元WBA世界ミドル級王者の村田諒太だ。村田は、(中 略)「東京新聞」のコラムや「週刊新潮」(新潮社)のインタビューなどで、こう批判したのだ。
「五輪の価値とは競技レベル(競技人口、普及率等)ではなく、企業や政治的に広告として価値があるかどうかなのかと考えさせられる(中 略)「厳しい練習を重ねたすえにようやく掴んだ問いへの答えが、同じスポーツ選手なのに差別されることには疑問を感じないわけにはいきませんでした」
(中 略)「週刊新潮」のインタビューでは、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を引くかたちで、人間にとって「公平」というものがいかに難しいかを語ったうえ、安倍政権の姿勢を「差別」だと批判していた。雑誌やテレビで哲学者と対談し、ニーチェやアドラーを愛読するなど“読書家”の一面が知られる村田選手ならではの、知性と倫理性のある批判だったといえるだろう。
(中 略)村田選手のように流されない自立したスポーツ選手が一人でも多く登場してほしい。
 
★8位 世良公則——『バイキング』で空気に逆らい「安倍長期政権の弊害」を鋭く指摘
 往年のスターやミュージシャンが続々と出演して、社会問題や事件にコメントするのが恒例になった『バイキング』(フジテレビ)。しかし、多くは、中条きよしや山本譲二などのように、強者の権益を擁護する時代錯誤的説教オヤジがほとんどだ。
 しかし、そんななかで異彩を放っていたのが、ミュージシャンの世良公則だった。世良は日産のカルロス・ゴーン元会長の事件を扱った回に出演、その構造的な背景として、安倍政権批判に踏み込んだのである。
(中 略)「いまの国だって文書改ざんしてくれる役人がいるし、スポーツ界でもなんとか揉み消してくれる親方たちがいる相撲界があったりするじゃないですか」
 森友文書改ざんをもちだしたこの発言に、スタジオは微妙な空気になり、司会の坂上忍も(中 略)まぜっかえした。しかし、世良はその空気に「あれ? 僕、なんか言っちゃいました?」と返しながらも、実際はまったくひるむことなく、こう続けたのだ。
「僕は共通していると思うんですよ。いまの日本って。すごく力をもっている方が、政治の世界もそうですけど、長くやられる。そうすると、実力如何に関わらず、仲の良い方とか、コントロールしやすい方たちで固める。そうすると、そこからボロが出る。そこで丁寧に説明しますと言いながら、まるで僕らには理解のできない説明で話が次に行く、知らない間に日数だけが過ぎて過去の話になっていく」
(中 略)感心したのは、その確信犯ぶりだ。慌ててフォローに走る坂上に、世良は笑いながら「じゃあ、(『バイキング』に呼ばれることは)二度とないですね」と答えていた。ロック魂の健在ぶりに拍手したい。
 
★7位 星田英利(ほっしゃん。)—— 政権の横暴を言葉で批判するだけでなく、デモにも参加
 安倍政権の問題点を鋭く指摘するたびに、ネトウヨから攻撃を受け、メディアからバッシングを浴びてきた星田英利、ほっしゃん。しかし、2018年もそうした圧力に屈することなく、森友加計問題や公文書改ざん、対米従属姿勢などを批判し続けた。
 しかも、3月30日には官邸前で行われた、森友文書改ざん問題に抗議する大規模デモに参加した。
(中 略)星田は〈“サクラ”ではなく、自分個人の心で集まった、想像を遥かに超える数の憤った一般市民が咲き誇ってました。民主主義は決して散らない。〉と、デモに参加しての感想をツイート。ネトウヨや冷笑系がよく言う「デモに参加しているのはサクラ」「デモは民主主義じゃない」などというトンチンカンなデモ批判を一蹴し、デモの意義を訴えた。
 星田がすごいのは、こうした芸能人としては勇気のいる行動を起こしながら、あくまで自然体を保っていることだ。「withnews」のインタビューで記者から「芸能人はものを言うなとか、言う人もいるのではないですか」と問われた星田は、このように返している。
「はいはいはい。それが一番あほなやつで。じゃあ、誰がもの言うていいのか分からなくなりますよ。政治家じゃないのに政治の話すなという人に、じゃあお笑い芸人でもないくせに、おもろいとかおもろないとか言うなと言いますか? 芸人だとか、素人だとか、言うことがおかしい。僕は一切それはありません」(後 略)
 
★6位 安室奈美恵—— 圧力にも負けず、引退後も翁長前知事への追悼コメントを残し続けた思い
 昨年9月をもって芸能界から引退した安室奈美恵だが、その直前に非常に印象的な姿勢を示した。8月8日に亡くなった翁長雄志前沖縄県知事を追悼するコメントを自身のホームページにアップしたのだ。
〈翁長知事の突然の訃報に大変驚いております。
ご病気の事はニュースで拝見しており、県民栄誉賞の授賞式でお会いした際には、お痩せになられた印象がありました。
今思えばあの時も、体調が優れなかったにも関わらず、私を気遣ってくださり、優しい言葉をかけてくださいました。
沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております。心から、ご冥福をお祈り致します〉
(中 略)これに焦ったのが、安倍政権とその応援団だった。ネトウヨは安室を「反日」「パヨク」などと攻撃し、官邸も翁長氏の後任を選ぶ知事選挙で、自公候補である佐喜真淳候補を支援するよう、エイベックスなどを通じて圧力をかけようとしたといわれている。
 しかし、安室はそういった圧力に屈することなく、翁長氏への思いをつらぬいた。
(中 略)これは明らかに、翁長氏の遺志を受け継ぎ、沖縄を守ろうとする安室なりの意思表示だった。具体的な発言をしたわけではないが、安室なりの行動で意思を示した勇気に敬意を表し、6位にランクインさせてもらった。
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 前編では、新しく政治的なメッセージを発信し始めたニューカマーが目立った。安倍政権が年々ひどさを増し、我慢できなくなった人たちが少しずつ増えているということだろう。
 後編では、これまで継続して政権批判をし続けてきた芸能人たちも含めた、新たな動き、そして大賞を発表したい。(編集部)
 
 
リテラの新年特別企画 
ローラ、ウーマン村本、りゅうちぇる…社会問題にコミットし考えを深化させた芸能人たち!「芸能人よく言った大賞」(後編)
LITERA 2019.01.05.
 お送りしている「芸能人よく言った大賞」。前編はニューカマーを中心に紹介したが、2018年は以前から社会的イシューにコミットしてきた芸能人たちがさらに踏み込み、深化した発言をするケースも数多く見られた。後編ではそういった発言を中心に紹介したい。
 ふだん、ネトウヨや冷笑系から「お花畑」「勉強不足」「操られている」などとディスられている彼らがいかに深く考え、勉強し、本質を見極めようとしているのか。ほんとうに「操られている」「お花畑」はどっちなのか。これを読めば、そのことがよくわかるはずだ。そして、大賞になぜ、この人を選んだのかということも……。「芸能人よく言った大賞」後編、ぜひ、最後まで読んでほしい。
 
★5位 本田圭佑−−−炎上を恐れず朝鮮学校を訪問!「自分の国しか愛せないのは悲しいこと」と
 本田圭佑ランクインの理由はもちろん、W杯閉幕直後の7月19日に神奈川朝鮮中高級学校と、横浜朝鮮初級学校を訪れたことだ。朝鮮学校への差別問題はいまやリベラルなメディアさえ、右派からの攻撃、批判を恐れてほとんど言及しなくなっているが、本田は「訪問」という行動でそのタブーを乗り越えて見せた。しかも、本田がすごいのはその訪問について真正面から語ったことだ。
 フリーのスポーツライター・金明昱氏のインタビューで、訪問の真意について問われた本田は「僕が一番伝えたかったのは、両国の間に歴史として様々な事があったとしても、僕らが人である限り、“仲間”になれるんだ!ということを伝えたかったんです(中略)そして朝鮮学校を訪問することで、間接的に日本人にも同じことを伝えられればという想いがありました」と答えた。
 加えて、「愛国心」や「政治家の果たすべき役割」について問われた本田選手は「自分の国を家族と思えることが愛国心かなと。ただ問題なのは自分の国しか愛せないこと。それは悲しいことだし違うと思う」「結果から言うと世界を平和にすることではないでしょうか? 国益だけを考える政治家は、今後は必要とされなくなっていく時代になると思います」と指摘した。
(中 略)そもそも本サイトは、本田に対して、若者世代の自殺が多いとのニュースについてTwitterで〈他人のせいにするな! 政治のせいにするな!!〉と説教するなど、成功したトップアスリートにありがちな「強者の論理」を無自覚に発信してしまう「自己責任論者」のイメージを抱いていた。(中 略)本田の思想的深化に素直に賛辞を送りたい。
 
★4位 SKY-HI−−−“音楽に政治を持ち込むな”論に「この国の問題に目を塞いでいてはいけない」と真っ向反論
 共謀罪法案をめぐるプロセスを直接的に批判した「キョウボウザイ」など、これまでも積極的に社会的トピックについて言及してきたSKY-HIだが、2018年は、ミュージシャンと政治、社会の関係について、想像以上に深い思索をめぐらしていることを証明した。(中 略)SKY-HIはケンドリック・ラマーのようなアーティストが大きな力を持つアメリカの状況と比較しながら、日本の状況をこう憂える。
「日本だとそういうムーブメントは起こらないですよね。あゆ(浜崎あゆみ)が流行ったから、ヒョウ柄のギャルが増える、とか、アーティストの本質にかかわらず、表層的に人々の消費欲求を刺激するに留まるものがほとんど。(中 略)
 
 さらに、「音楽に責任はありません」という宇多田ヒカルの言葉が入ったタワーレコードのポスター問題について訊かれ、こう語った。
「『音楽で世界を変える』って言葉の方が、いまは欺瞞として捉えられがちじゃないですか。(中 略)でも、「僕にできることなんて歌うことくらいだから」とか、(中 略)そう発言することが美徳とされていたり、逆に社会に対してコンシャスな人を「意識高い系」と冷笑する状況は、決して理想的な状態ではないと思う。(中 略)どうして日本がこういうことになってしまったのかを考えるのは、ミュージシャンだけではなくすべての大人の責務なんだけど、とりわけ俺たちミュージシャンは若い世代と触れ合う機会が多いから、その責任が重大になってくる。(中 略)
 
 また、このインタビューのなかで、SKY−HIは政治的、社会的発言が排除されがちな状況の大元に、日本社会の構造的な問題があることまで言及していた。
(中 略)日本の戦後教育のやり方を問い直すことにも繋がるような気がして。制服の問題に代表されるように、同じ格好、同じ行動、規律を乱すな、ということを是とするスタンスは、明治初期ならまだしも、現代でいまだにそれをやっているのかと呆れてしまうし……」
(中 略)SKY-HIがいてくれることは日本の音楽界にとって救いだ。オーバーでなく、そう思う。
 
★3位 りゅうちぇる−−−叩かれてもブレない“多様性の伝道師”! 故郷・沖縄基地問題についても貴重な発言
 反動的説教オヤジばかりが重宝されるワイドショーや情報番組にあって、多様性とリベラルなスタンスを崩さず高い評価を集めてきたりゅうちぇる。2018年も感心させられる発言を連発した。(中 略)2018年は沖縄をめぐる問題に関してもメッセージを発信した。
 6月23日の沖縄「慰霊の日」を前に、複数のメディアでインタビューに登場。おばあから聞いた沖縄戦のむごさ、「戦争は人を変えてしまう。皆が皆悪い人じゃないし、皆が皆いい人でもない」という言葉を紹介したうえ、米軍基地問題についても言及した。
「今も米軍基地があるから、戦争を身近に感じます。宜野湾市にあった自宅前には普天間飛行場があり、ヘリコプターや飛行機が爆音を響かせて飛行するのは当たり前の光景でした」
「危険と隣り合わせだと感じたのは、2004年に米軍ヘリが沖縄国際大(同市)に墜落した時です。(略)ヘリが上空で旋回するのを眺めていたら、急に止まって、垂直に落ちたのです。その光景は忘れられません」
 さらには、辺野古の新基地建設作業の停止を求めるホワイトハウスへの署名に関する情報共有をツイッターやインスタグラムを通じて行った。
 りゅうちぇるが素晴らしいのは、(中 略)炎上したり、批判されたときに、沈黙したりごまかしたりするのでなく、きちんと正面から反論する。そして、議論の本質を外さない。
 (中 略)『news zero』同性婚特集に出演した際も、現行の法制度内での代替策を番組が紹介したことに対し、「こういう取り組みを紹介するということは、やさしさだなと思うんですけど。お金がかかっちゃうのかって。やっぱり、愛を証明するためにお金がかかるっていうのは、ふつうじゃあり得ない話」と、本質を指摘した。
 
 伝統を大切にすべきという同性婚への反対意見に、(中 略)「でもそれ(伝統)にとらわれてしまって、自分の生きていく人生、自分の個性や、自分の色に、自分のなかで制限をかけてしまうというのは、この世界、やっぱり、いまから生きていく世界のなかではとっても悲しいこと」と、伝統と多様性・個性がぶつかる場面では、多様性・個性のほうが尊重されるべきとキッパリ断言した。
 文句のつけようがない、りゅうちぇるの誠実で冷静な姿勢。今年もぜひこの調子で自分の思いを伝え続けてほしい。
 
★2位 村本大輔(ウーマンラッシュアワー)−−−ネトウヨ言論人のデマにも怯まず、知識も芸も更新し続けるリベラルの新しいかたち
 前回の大賞受賞者である村本大輔だが、2018年も変わらず素晴らしかった。なかでも、特に評価したいのは、ネトウヨ言論人からの攻撃に、沈黙せず倍返しする姿勢を見せたことだ。
 たとえば、百田尚樹氏が、(中 略)「そんな事実はどこにもない」と否定した際は、〈あ、百田さんからのコメントでしたか、すいません。アホのネトウヨのコメントと間違えました〉〈極右ハゲの作り話作家が沖縄の歴史のデマを流していたらしい。探偵ナイトスクープに依頼してちゃんと調べろよ〉と喝破。ぐうの音も出ないくらいに論破された百田氏は名誉毀損をちらつかせて恫喝するしかなかった
 また、ローラが辺野古新基地工事中止を求める署名を呼び掛けたことを問題視し、高須克弥氏が「僕なら(CMから)降ろす」といった発言をしたことに対しても、村本は〈リベラルな発言をした芸能人に『僕ならCMを降ろす』発言は芸能人だけじゃなくリベラルな発言を黙らせ、この国の声を『右だけのように』見せる。言論の自由は権力に対してある、スポンサーは芸能人には権力。言論には言論なのに『おれなら降ろす』は権力が言論の自由を脅迫してるようにみえる〉と言い切った。
 
 ネトウヨファンがバックについている百田氏や高須氏に絡まれたら、普通は無視したり、はぐらかしてなあなあにしてしまうものだが、村本はこのようにひとつひとつ向き合い、戦い続けた。しかも、その切り返しは鮮やかで、相手の本質をえぐる鋭いものばかりだった。これは、村本がお笑い芸人ならではの反射神経の持ち主であることにくわえて、社会問題をより深く勉強し、知識どんどん更新させているからだろう。しかも、村本はただ知識を増やしているだけでなく、どうやったら伝わるかとか、どうエンタテインメントにするか、その方法論も更新させている。
(中 略)ツイッターの切り返しも含めて、反権力の主張をエンタテインメントに昇華させるこうしたスタイルは普通のリベラルメディアや言論人にはできないものだ。
 今年の元旦のツイートによると、ウーマンラッシュアワーは政治的発言を始めてから、「THE MANZAI」以外のネタ番組呼ばれなくなっているらしいが、今年は流れが変わって、少しでも多くのメディアに露出することを願ってやまない。
 
★大賞 ローラ−−−「リスクがあっても人と地球のために」発信し続けた勇気が大きなうねりに
 今年の大賞はやっぱりローラしかいないだろう。発言の内容だけでなく、芸能人が政治的発言をすることの重要性を改めて実感させてくれたからだ。
 昨年12月18日朝にインスタグラムに投稿した〈We the people Okinawa で検索してみて。美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの。名前とアドレスを登録するだけでできちゃうから、ホワイトハウスにこの声を届けよう〉との言葉は、これまでとは桁外れの反応を引き起こした。
 520万人のフォロワーを抱えるローラの影響力は絶大で、(中 略)1月4日現在では17万筆を超え、「We the people」のトップページに掲載されるまでになっている。
 
 もちろん一方で、ネトウヨからは総攻撃を受けた。(中 略)だが、こんな卑劣な攻撃でローラの活動を止めることはできないだろう。そもそもローラの社会貢献に対する意識は、バラエティ番組でブレイクするよりはるかに前から、もち続けているものだ。デビュー当時から「貧しい子どもの役に立ちたい」という強い意志を抱き、災害時に被災地に炊き出しボランティアに行ったり、日本ではまだ意識の低いプラスチックゴミ問題についても早くから声をあげたりしている。ローラが、社会問題に広くアンテナを張り勉強していることは明らかだ。
 
 今年8月にユニセフのイベント参加し1000万円に寄付したことを報告した際、ローラはこう締めている。
〈何をするために生きているか何をしないといけないか冷静に考えて自分の感情を信じて生きて行こうと思います。リスクがあっても嘘のない、人にとっても地球にとっても幸せが続くことに精一杯力を注いで頑張っていきたいです〉
 こんな覚悟を持ったローラが、身過ぎ世過ぎで権力にしっぽを振るコメンテーターや頭の悪いネトウヨの卑劣な言葉に屈するわけがない。実際、今回の辺野古問題について、世論は圧倒的にローラの味方だった。
(中 略)この波及力は、やはりローラという存在があってこそのものである。芸能人が積極的に政治的発言を行っていくことの重要性、そして、芸能人の政治的発言に対して圧力を加えたり、揶揄して貶める動きに抗っていく必要性を改めて再確認させてくれたその功績を讃え、ローラに「芸能人よく言った大賞」を贈りたい。
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 いかがだったろうか。「芸能人よく言った大賞」。このランキングに名前を連ねた芸能人や文化人たちがいかに真摯に社会問題に向き合い、知識を吸収し、考えを深化させているかがわかってもらえたと思う。
 ただ、付け加えておかなければいけないのは、だからといって、「深い考えをもつ芸能人」だけが発言していいというわけではないということだ。社会問題にコミットする芸能人の多くは、「戦争はよくない」「困った人を助けたい」「虐げられる人の声を届けたい」といった素朴な思いから出発している。それに対して、ネトウヨや安倍応援団だけでなくリベラル派も、勉強不足を指摘したり「わかっていない」とか「甘い」と批判するケースがある。
 もちろん相互批判は重要だが、社会問題にはさまざまなアプローチがある。辺野古の問題ひとつとっても、沖縄の負担軽減からアプローチする人、対米従属に異を唱える立場からの批判、沖縄の人たちの思いを代弁するアプローチ、環境問題からのアプローチなど、さまざまだ。どのアプローチが正しいかといった主張が交わされることもあるが、それぞれの持てる知識レベルで、いろんな角度から、できるだけ多くの声をあげることが重要だろう。
 (中 略)政治や社会の問題にコミットし、権力の横暴に「NO」の声をあげる芸能人が一人でも多く登場することを願っている。(編集部)