メディアは、厚労省の「毎月勤労統計」での不正を「不適切調査」、「勤労統計ミス」などと呼んでいますが、あまりにも甘い表現です。
東京新聞は、安倍政権下で相次いで明るみに出ている調査や統計の誤りの中でも「悪質さが際立つ不正調査」であるとしています。
給与レベルが相対的に高い東京都の調査数を3分の1に抑えれば、正しい値を下回ることは明らかです。その結果、約2000万人に対して失業給付などを537億円も過少に抑えたのでしたが、それこそが目的だったと言うこともでき、厚労省の関与職員たちは確信犯として関与し続けたことになります。
今後不足分を支払うということですが、いわゆる役所仕事では、いつになるのかも分かりません。かつて年金積立金管理のデタラメさが問題になったとき、安倍氏は「最後の1人まで明らかにする」と断言しましたが、最後の1人どころか、いまだに、少なくとも数百万人の年金積立情報が不明のままになっています。
厚労省は、早急にデータに関する不正の全容を明らかにし、再発防止策を講じるのは勿論のことですが、途中から「3分の1調査」に変えた動機や組織的な関与の有無を明らかにする必要があります。
「勤労統計、際立つ悪質性 ~ 意図的加工」とする東京新聞の記事を紹介します。
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勤労統計、際立つ悪質性 不正を職員把握、意図的加工
東京新聞 2019年1月13日
毎月勤労統計の不正調査問題は、安倍政権下で相次いで明るみに出ている調査や統計の誤りの中でも悪質さが際立つ。厚生労働省の一部職員は不正を認識していた上に、調査方法を正しく装うためにデータを意図的に加工していたからだ。今後の調査では、抽出調査の動機や組織的な関与の有無が焦点になる。(中根政人、木谷孝洋)
昨年、続けざまに発覚したデータ問題も、国民の生活に関する政策の根幹を揺るがした。(1)裁量労働制を巡る厚労省の調査データの誤り(2)中央省庁による障害者雇用水増し(3)失踪した外国人技能実習生に対する法務省調査の集計ミス-だ。野党は「捏造(ねつぞう)ではないか」と国会で追及したが、政府はいずれの問題も「意図的ではない」と主張した。
ところが、毎月勤労統計の不正調査に関しては、厚労省は一部の職員が知っていたことを認めた。昨年一月分の調査に際し、全数調査に近づける補正処理を始めたのに、公表しなかったことも明らかにした。
さらに、同年十二月二十日に根本匠厚労相が問題に関する報告を受けた翌日には、調査手法の不正は伏せたまま十月分の「確報値」を公表した。不正が「意図的」だったことは明白で、「組織的隠蔽(いんぺい)」も疑われて当然の経緯だ。
国民民主党幹部は「補正処理を始めた昨年一月に公表すべきなのに、国会が働き方改革でもめていたから隠したのだろう」と指摘。野党は「影響は計り知れない」(共産党の小池晃書記局長)と国会で追及する構え。与党からも「全く許せない。第三者機関が原因を究明すべきだ」(公明党の斉藤鉄夫幹事長)と求める声が出ている。
勤労統計調査は、雇用保険の失業給付や労災に遭った場合の休業補償給付などの算定にも使われる。安倍晋三首相は「全世代型社会保障の実現」の中核として生涯現役社会に向けた雇用制度改革に意欲を示す。その前提となるデータに関する不正の全容を早期に解明し、再発防止策を講じなければ、雇用制度改革に国民の信頼は得られない。
毎月勤労統計調査を巡る経過
1996年
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・労働省(当時)が公表資料より1割少ない事業所数で調査。
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以後も継続
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2004年
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・東京都で本来の全数調査ではなく対象事業所の一部だけを調
べる不適切調査を開始
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2018年
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・同年1月分速報値を発表。全数調査に近づけるため補正処理
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3月9日
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を開始も公表せず
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6月
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・神奈川、愛知両県と大阪府に抽出調査への切り替えを打診。
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後に撤回
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12月10日
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・総務省の統計委員会が「不自然な点がある」と指摘
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13日
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・厚生労働省が統計委に「抽出調査をしていた」と説明
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20日
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・根本匠厚労相に問題を報告
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21日
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・不適切な調査手法を伏せたまま10月分確報値を公表。
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19年度予算案が閣議決定
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28日
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・問題が発覚
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2019年
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・根本氏が記者会見で謝罪。雇用保険などの過少給付者は
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1月11日
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延べ1973万人、総額537億5000万円に上ることが明ら
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かに
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