2019年1月19日土曜日

辺野古埋め立て土砂は1m3 1万円超、超高額なのに仕様はデタラメ

 防衛省が資金計画書で示していた辺野古埋め立て工事費は2400億円でした。しかし、昨年11月段階で工事費用は当初予定の実に10倍になっており、そのペースで行けば、埋め立て工事の総額は2兆5500億円に膨らむとの試算を、玉城デニー知事が政府との集中協議で示していたということです(11月29日付琉球新報)。実際、工事現場の警備費などは驚くべき巨額に達しています。
 
 東京新聞が防衛省の辺野古埋め立て工事を巡り、
<税を追う>辺野古の土砂、割高1m3 1万円超 良質石材の倍
「<税を追う>辺野古土砂含有率を無断変更 防衛省、回答拒否続ける」
の二つの記事を出しました。
 
 辺野古の海域を埋め立てている土砂(岩ズリ)の発注単価はナント1m3当たり1万1290円です。
 東京新聞によれば、岩ズリは通常、路盤材に使う一番安価な石材より安く取引されその一番安価な石材1m3当たり4000円前後だということです(m3単価はいずれも運搬費込み)。それが3倍近くの単価で発注したので、岩ズリの「購入費」だけで1856億円になり、防衛省の当初資金計画での埋め立て工事費1400億円を軽く超えてしまいます。
 こんな調子では工事費が計画の何倍にもなるのは当たり前で、防衛省沖縄防衛局には税金を無駄遣いしないという観念がないとしか考えられません。
 
 それだけではありません。海域に投入された「岩ズリ」には赤土が大量に含まれていたようで、海域が茶色に濁ったということです。沖縄防衛局は着工前の2013年、県に提出した埋め立て承認を求める文書では、土砂に含まれる砂や粘土など「細粒分」の割合を「概ね10%前後」と記していました。ところが県の了解を得ずに1711業者に対し、細粒分の割合を40%以下として発注していました。超高価な単価なのに、購入仕様は逆に超ユルユルのものになっていたわけです。
 投入土砂を現場で見た人たちには、あれは「赤土だ」と一目で分かりました。赤土は細粒分が多いため粘着力が弱く、埋め立てに多く使うと環境に悪影響を与えるため、それを禁止する沖縄県赤土等流出防止条例」があります実際に土砂が投入されると海域は茶色に染まったので、赤土が大量に含まれていたのは明らかでした。
 
 この問題でも防衛省は、県や国会議員の抗議に対してシラを切り通し、必要な書類の提示を拒んでいるということです。
 国民の血税を一体何だと思っているのでしょうか。こんなデタラメな税の使い方は許されません。
 東京新聞の2本の記事を紹介します。
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<税を追う>辺野古の土砂、割高 1立方メートル1万円超 良質石材の倍
東京新聞 2019年1月18日
 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、防衛省沖縄防衛局が埋め立て用土砂の単価を県内の良質な石材の倍以上の一立方メートル当たり一万円以上と見積もり、業者に発注していたことが本紙の取材で分かった。防衛省の内規で、土木工事の材料単価は原則三社以上から見積もりを取ることになっているが、一社だけの見積もりを採用していた。石材業界からは「単価が高い」という指摘が出ている。 (中沢誠)
 
 防衛局は採石場などで石を砕く時に出る「岩ズリ」という規格外の砕石を埋め立てに使用。岩ズリを含む埋め立て土砂に、サンゴなどの自然環境に悪影響を与える粘土性の「赤土」が大量に混じっている疑いが浮上している。沖縄県は土砂の検査などを求めているが、国は応じていない。
 
 防衛局は二年前、都内の調査機関に県内産岩ズリの見積もりを委託し、単価を積算していた。本紙が入手したこの調査機関の報告書によると、十三社に岩ズリの見積額を尋ねた結果、回答があったのは一社だけで他は見積もりを辞退した。
 防衛省の内規は「原則として三社以上から見積を徴収する」と定めている。ところが防衛局は、この一社が提示した見積額をそのまま採用。海上運搬費を含め一立方メートル当たり一万一千二百九十円で、埋め立て工事の予定価格に反映した。先月から土砂を投入している工区は、防衛局が予定価格七十六億円で大林組などの共同企業体(JV)に七十二億円で発注している。
 
 防衛局の仕様書では、埋め立て土砂は岩石以外の粘土などの細粒分が40%まで混じってもいいとしており、岩ズリだけを使うよりも品質はさらに落ちる
 沖縄県の公共工事の資材単価表では、岩ズリより良質な石材「雑石(ざついし)」を辺野古周辺で使う場合、一立方メートル当たり四千七百五十円(運搬費込み)と積算。また、国の出先機関の沖縄総合事務局は、那覇地区で港湾工事に使う場合、岩ズリの単価を同三千五百五十円(同)と積算している。
 建設資材の価格を調査している建設物価調査会(東京)の担当者は「岩ズリは相場観が出づらいが、通常、路盤材に使う一番安価な石材より安く取引される」と説明。一番安価な「クラッシャラン」という石材でも、沖縄本島の相場は運搬費込みで一立方メートル当たり四千円前後という。
 業界団体の日本砕石協会(東京)も「地域や用途、ストック量によって変動はあるが、一立方メートルで一万円というのは高い」とする。
 
       岩ズリ単価の比較(1m3当たり・運搬費込み)
 
沖縄防衛局の辺野古埋め立て用
1万1290円
 
(2018年1月積算)
 
 
内閣府沖縄総合事務局発注の那覇
7250円
 
空港滑走路埋め立て用(工事中)
 
 
沖縄総合事務局の単価表
3550円
 
(17年10月公表、那覇地区)
 
 
より良質な石材なら・・・
 
 
沖縄県の単価表「雑石5~200kg」
4750円
 
(18年1月公表)
 
 
◆埋め立て費 拡大の恐れ
 沖縄防衛局が着工前に沖縄県に示した計画では、辺野古の新基地建設の工費を二千四百億円と試算。このうち土砂の埋め立てに千四百億円かかるとしている。
 埋め立てに必要な土砂は二千六十二万立方メートルで、東京ドーム十七個分に相当。うち八割が岩ズリを使う。
 今回明らかになった一立方メートル当たり一万一千二百九十円の単価で計算すれば、岩ズリの購入費だけで千八百五十六億円に上り、防衛局の試算を大きく上回る。今後は県外からも調達することになっており、輸送費を考えればさらに費用が膨らむ可能性がある
 
◆適正に単価を積算
<防衛省整備計画局の話> 沖縄では大型工事も多く、需給の変動が大きい。しっかり価格調査を行い、適正に単価を積算し発注した。
 
 
<税を追う>辺野古土砂含有率を無断変更 防衛省、回答拒否続ける
東京新聞 2019年1月18日
 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、防衛省が埋め立て用土砂の成分比率を県に無断で変更していた問題などを巡り、十六日に野党の国会議員らによる現地調査が行われた。防衛省沖縄防衛局は「当時の担当者に確認できておらず答えられない」と繰り返すのみ。現地では「赤土が使われている」と疑念が広がる。県側は「埋め立てを強行し、基地の既成事実化を図るのは許せない」と反発を強めている。(望月衣塑子)
 
 沖縄防衛局は着工前の二〇一三年、県に埋め立て承認を求める文書を提出。土砂に含まれる砂や粘土など「細粒分」の割合を「概(おおむ)ね10%前後」と記していた
 ところが防衛局は一七年十一月、業者から土砂を調達する際、細粒分の割合を40%以下として発注埋め立て承認の内容に変更がある場合、防衛省は事前に県と協議することになっているが、県に細粒分の変更を知らせていなかった
 
 岩屋毅防衛相は十三日、記者の質問に「細粒分の含有率は概ね10%前後という記述は、護岸を閉め切る前に埋め立てを実施する場面を想定した。今の作業は海を閉め切って(石を砕く時に出る)岩(がん)ズリを投入している」と反論したものの、変更した理由は説明しなかった。
 十六日の現地視察でも防衛局担当者が同じ説明をしたため、野党議員や県の幹部らは反発。県の担当者は「埋め立て承認願書に添付された環境保全図書には『外海を切り離し閉鎖的な水域をつくり』『概ね10%前後の土砂投入』とある。閉め切っているから問題なしという防衛局の主張は初めて聞いた」と批判した。
 
 那覇市での合同ヒアリングでも質問が集中。立憲民主党の川内博史議員が「防衛局は県にきちんと説明したのか」と聞くと、防衛局調達部の担当者は「当時の担当者でないので確認できない」と回答。共産党の仁比聡平(にひそうへい)議員は「今日の防衛局の説明や岩屋防衛相が話した論理は、いまになって作り上げたものとしか思えない」と批判した。
 
 埋め立て現場で、実際に土砂を見た議員たちは船上から口々に「あれ、赤土ですよね」と指摘すると、立ち会いの防衛局職員が「一応、岩ズリです」と答え、議員らから失笑が漏れた場面もあった。
 
 赤土は細粒分が多いため粘着力が弱く、埋め立てに多く使うと環境に悪影響を与えるため、沖縄県では、赤土が大量に流出しないよう埋め立て事業者に届け出を義務付ける「沖縄県赤土等流出防止条例」がある
 議員らの「赤土はあるのか」の質問にも防衛局は一切答えず、「細粒分含有率は10%前後です」とだけ言い続けた。県は防衛局に立ち入り調査と検査用の土砂の提供を求めているが、防衛局は「法的根拠を示せ」として応じていない。
 
 謝花喜一郎(じゃはなきいちろう)副知事は「どんなに行政指導しても、それに従わないことが常態化している。わが国は法治国家なのか」と強く批判。県は十八日までに防衛局に回答するよう再度求めている。