沖縄の県民投票は、24日、県議会の各派代表が3択に条例改正することで合意し、5市の36万余人の有権者たちも投票に参加できるようになりました。条例改正案は29日の臨時議会で全会一致可決の予定です。
琉球新報は、若い元山仁士郎・県民投票の会代表のハンガーストライキが転機になったとして、11日の県民投票条例改正見送りの知事発表以降、24日までの関係者の動きをまとめる記事を出しました。
記事を日付順に整理すると下記のようになります。
11日 玉城知事 県民投票条例改正見送りを発表
15日 県民投票の会・元山代表 ハンガーストライキ開始 (19日17時ドクターストップ)
16日 うるま市長(県市長会長)「可能な限り幅広く柔軟な対応を求める」と県知事と県議会議長に宛て声明
17日 謝花副知事は「若者にここまでさせてしまった」とハンストの影響で前週までと状況が異なってきたとの認識を示す 以後5市長の意向を電話で確認
17日 公明党県本の金城勉代表、選択肢の3択への修正で全会一致に協力すると副知事に伝える
18日 新里米吉県会議長、玉城知事に「与野党の調整に動く」と伝える
18日 与党3会派、議長提案の3択案に「5市長の責任があいまいになる」と猛反発
? 日 玉城知事、条例改正に進むかどうか、賛否2択で条例制定を請求した「辺野古」県民投票の会の意思と5市長の投票実施の意向の確認を指示
21日 県民投票の会・元山代表、緊急会合を開き「全市町村で実施するために柔軟な対応が必要」と3択を容認する姿勢を打ち出す
23日 玉城知事、選択肢を見直し全県実施を目指す立場へにかじを切り、与党代表者らに「私の責任でやらせてほしい」と3択への支持を取り付ける。
24日 新里県議会議長、各派代表者会議を招集し、3択に条例を改正することで合意。29日に臨時議会が開かれ、全会一致で条例改正案を可決へ。
毎日新聞は27日の社説で、「どちらでもない」を新たな選択肢に加えるという異例の展開になったことについて、「これほど複雑な背景のあるテーマを『賛成』『反対』の2択で尋ねる設問のあり方に問題があったことも否めない」と、変更に理があるとしました。
そして「2択にこだわって全県で実施できなければ、投票結果に疑念を差し挟む余地が生まれる。~ その意味で、沖縄県議会が自民党も含む全会一致で県民投票実施を決める形になったことは評価できる」とし、「そもそもの問題は、なぜ沖縄県民だけが苦渋の判断を迫られなければならないのか、だ。むしろ、この県民投票を沖縄の基地負担軽減について国民全体で考える機会としたい」
と述べています。
琉球新報と元山・県民投票の会代表の声明を紹介したしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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ハンスト、窮地を打開 若者の決意が政治動かす
琉球新報 2019年1月27日
「条例の改正はさまざまな課題があり、難しい」。玉城デニー知事は11日の記者会見で県民投票条例の改正を見送ることを一度は発表していた。
条例を改正しなければ選択肢を増やしたり、県が5市の事務を代行したりすることはできない。投開票事務を拒否する5市長と県の協議は平行線をたどっており、このままでは全県の有権者の3割が投票できない。記者から「参加しない自治体が出ても2月24日で実施するのか」と問われると、玉城知事は「それを与党と確認したところだ」とこわばった表情で答えた。
「われわれを置き去りにしないでほしい」「全県で実施しなければ県の責任になる」。市長が事務を実施しないことに抗議するハンガーストライキを始めた「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表の行動に呼応するように、謝花喜一郎副知事の下にも全県実施を求める声が寄せられていた。17日、謝花副知事は面談した市民らに「若者にここまでさせてしまった」と感極まった様子で語り、ハンストの影響で前週までと状況が異なってきたとの認識を示した。そして「このまま条例改正せずにいいのかという思いもある」と打ち明けた。
実はこの時、謝花副知事の下には公明党県本の金城勉代表から、選択肢の3択への修正で全会一致に協力するとの要請がもたらされていた。16日には県民投票参加に難色を示すうるま市の島袋俊夫市長が、県市長会の会長として「可能な限り幅広く柔軟な対応を求める」と県知事と県議会議長に宛てた声明を発表。投票実施に向けた出口を探ろうとするメッセージには首長側の変化を感じさせた。
公明の金城代表は「辺野古」県民投票の会の幹部にも条例改正を打診していた。謝花副知事に相談した県民投票の会幹部に(1)公明が了承する(2)公明が自民に働き掛ける(3)5市長の投票実施の確約がとれる ― が担保できれば検討するとの玉城知事の回答が伝えられるなど、事態は水面下で急速な動きを見せていた。
公明から同様に要請を受けた県議会の新里米吉議長は18日、行政視察で県庁を離れていた玉城知事に「与野党の調整に動く」と電話で伝えた。だが、社民・社大・結、会派おきなわの与党2会派は「5市長の責任があいまいになる」と議長が提案する3択案に猛反発、調整は冒頭で立ち止まった。
与党で激しい議論が交わされる中で玉城知事は、県としても条例改正に進むかどうか、二つの条件を確認する必要があると指示を出す。賛否2択で条例制定を請求した「辺野古」県民投票の会の意思と、5市長の投票実施の意向だった。
これを受け、県民投票の会は21日夜に緊急会合を開いた。会合後、元山代表は「全市町村で実施するために柔軟な対応が必要となっている」と、3択を容認する姿勢を打ち出した。
県では謝花副知事が5市長と電話で連絡を取り合い、期待にも近い前向きな感触を得ていた。
3択案に対する与党会派の反発で手詰まり感が強まっていた22日夜、ある与党県議の携帯に玉城知事からメッセージが届いた。「県民投票は必ず全県実施します。元山君の動きが市民を動かしました」―。
翌23日午前、選択肢の見直しにより全県実施を目指す立場へとかじを切った玉城知事は、自ら与党代表者らに連絡を取り「私の責任でやらせてほしい」と3択への支持を取り付ける。与党3会派が急転直下、一致したことで、新里議長は各派代表者会議の24日招集に瀬戸際でこぎつけた。(中村万里子、与那嶺松一郎)
さあ 県民投票へ 全沖縄実施見通し「歓迎」 「会」が会見
「議論さらに深める」
しんぶん赤旗 2019年1月26日
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設の埋め立ての賛否を問う県民投票で、選択肢を3択にする条例改正案を県議会が全会一致で合意したことを受け、「『辺野古』県民投票の会」(元山仁士郎代表)は25日、県庁で記者会見し、声明を発表しました。
声明は、選択肢が賛否のほか「どちらでもない」を加えた3択となったことで、不参加を表明していた5市で県民投票実施に向けた条件が整い、全市町村で県民投票が実施される見通しとなったとして「すべての有権者に投票権を保障するために行った与野党の歩み寄りを歓迎する」と表明しました。
一方、賛否の2択を前提に県民投票条例の制定を求める署名をした県民の批判や複雑な心境も真摯(しんし)に受け止めるとし「現在、『どちらでもない』という意見を持つ県民には、これからさらなる議論を深め、明確な賛否の意思表示が可能となる環境を整えるために全力を尽くすことを決意する」としました。
会見した元山氏は、全県実施のめどがついたことに「すごく安堵(あんど)した」と述べつつ、2択を支持していた県民に対し、会として説明や意見交換を行っていく考えを示しました。