2019年1月14日月曜日

14- 日本もアメリカも司法システムは信頼できない(櫻井ジャーナル)

 ゴーン・元日産会長が逮捕されたことを機に、日本の司法制度が世界から注目されています。その影響か東京地裁は珍しくゴーン氏の勾留延長を認めない判断を下しました(但し、検察は別の理由で再逮捕したため結局保釈されませんでした)。
 
 日本の刑事司法制度における人権侵害については、以前から国連の人権委員会などから指摘されてきましたが、法務省はこれまでそのほとんどを受け入れないでいるのは何故なのでしょうか。
 かつて(2013年)国連拷問禁止委員会でモーリヤスの委員から「日本の司法制度の不透明性は『中世の名残』」であり、「刑事手続を国際水準に合わせる必要がある」と指摘されたのは、実に日本の検察・警察の実態を見据えたものでした。
   関係記事
     ⇒(2013年6月15日)日本の人権大使が国連で「シャラップ」と
 
 櫻井ジャーナルの記事「日本もアメリカも司法システムは信頼できない」を紹介します。
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日本もアメリカも司法システムは信頼できない    
櫻井ジャーナル 2019年1月13日
 昨年(2018年)11月19日、​東京地検特捜部は日産自動車の会長だったカルロス・ゴーンと代表取締役のグレッグ・ケリーを逮捕した​。
 ゴーンに限らず、新自由主義が蔓延した世界では巨大企業の経営者が法外な報酬を得ると同時に大多数の人々は貧困化、その不満は高まっている。
 
 生産活動を軽視する新自由主義はカネの転がしがシステムの中心に据えられている。不動産を担保にして高利でカネを借り、相場が上昇すれば不動産の担保価値が膨らんで融資余力が生じ、さらに借金するというのもそうした仕組みのひとつだ。
 そうした転がしを続けているとシステムは不安定化し、どこかの時点で崩壊する。場合によっては人為的に破裂させることもある。破裂のタイミングがわかれば儲けられるからだ。
 2008年9月に倒産した投資銀行のリーマン・ブラザーズは他の巨大金融機関を助けるための人身御供だという説はそうしたところから出ている
 この倒産劇の後、巨大金融機関は「大きすぎて潰せない」として庶民のカネで救済、犯罪行為が発覚してもその幹部は「大物すぎて処罰できない」ということになった。それ以降の金融界は無法地帯だ
 
 これが現在の世界であり、日本も例外ではない。ゴーンはその世界の住人だが、彼が特殊な存在だとは言えないだろう。
 前にも書いたことだが、ゴーンなどは日本人重役と対立していたと言われている。ゴーンの出身母体であるルノー側は日産との経営統合、あるいは合併を目論み、それに対して日本人重役が反発していたのだ。ルノーは日産自の株式の43%を、日産自はルノー株の15%を保有、両社の会長を務めるゴーンが統合後の新会社を率いる見通しだとされていた。
 ルノーと日産の経営一体化を進めるようにゴーンへ求めていたのはルノーの筆頭株主であるフランス政府だという。そのトップは言うまでもなくエマニュエル・マクロン大統領だ。
 ゴーンは2014年4月にロシアでの自動車販売を推進する姿勢を見せていたが、これはアメリカ支配層を刺激したはずだ。ロシアとのビジネスを推進しようとしてアメリカに睨まれたEUの会社のひとつはドイツのフォルクスワーゲン。アメリカからの圧力をはねのけ、2015年9月4日からロシアでエンジンの生産を始めているのだ。
 工場が動き始めた2週間後、アメリカのEPA(環境保護局)がフォルクスワーゲンが販売している自動車の一部が排ガス規制を不正に回避するためのソフトウエアを搭載していたと発表している。
 
 ゴーンの逮捕は日本の刑事司法制度の実態を世界に知らせることになった。見込み捜査、自白偏重、不透明な取り調べ、代用監獄、人質司法、長期拘留といった問題が指摘されてきたが、最近では司法取引という新たな闇が加わっている。監獄を刑事施設と言い換えても本質に変化はない。弁護士を伴わない証人喚問は日本の「革新勢力」も大好きだ。
 日本の刑事司法制度が民主的でないことは以前から世界に知られていた2013年5月にジュネーブで開かれた国連拷問禁止委員会の「第2回日本政府報告書審査」でも日本側は批判されている。
 この審査でモーリシャスの委員から日本の刑事司法について「弁護人取調べの立会がない。そのような制度だと真実でないことを真実にして、公的記録に残るのではないか。」と指摘されている。「自白に頼りすぎではないか。これは中世のものだ。中世の名残りだ。」とも言われたという。
 この指摘に対し、外務省の人権人道大使だった上田秀明はそうした疑念を自らが証明してしまう。「日本は、この分野では、最も先進的な国の一つだ」と彼は発言、会場で笑い声が起こったのだが、問題はその後。「笑うな。なぜ笑っているんだ。黙れ!黙れ!」と叫んだのである。日本を知る世界の専門家はモーリシャスの委員と同じように考えているだろう。
 
 もっとも、司法当局が信頼できない国は日本に限らない。アメリカの場合、本ブログでも繰り返し書いてきたように、「ロシア疑惑」を証拠なしに宣伝しているのはFBI、司法省、特別検察官。こうした組織に「正義」を期待するべきではない。
 
 エレクトロニクス技術は1970年代から急速に発展、不特定多数のターゲットを追跡、情報を記録、分析するシステムの開発も進んだ。
 その中で能力が高く注目されたのがINSLAW社のPROMIS。このシステムに関する報告が1979年3月と80年3月に法務総合研究所の『研究部資料』に載っている。このとき駐米日本大使館の一等書記官だった原田明夫は「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を推進した人物だ。
 そのシステムの優秀さに目をつけた司法省は詐欺的な手段を使った盗み、トラップドアを組み込んで国際機関、各国の政府機関、金融機関など売っている。
 INSLAW社は司法省を訴え、ワシントン破産裁判所は1988年に、ワシントン連邦地裁は1989年にそれぞれINSLAW社の主張を認めている。つまり司法省がシステムを盗んだと認定したのだ。1992年には下院の司法委員会が司法省による盗みを認める報告書を発表した。
 
 しかし、控訴裁判所は「破産裁判所と連邦地裁に裁判権がない」という理由で原判決を破棄。最高裁判所は1997年、イラン・コントラ事件で偽証して有罪になったロバート・マクファーレン、あるいは証券詐欺や銀行詐欺などでロサンゼルスの連邦地裁で有罪の評決を受けたアール・ブライアンの証言に基づいて司法省がシステムを盗んだという主張を退けた。