厚労省は9月に突然、「再編や統合の議論が必要」とする公立・公的病院など424病院のリストを公表しました。リストにあげられたのは、自治体が運営する公立病院と日本赤十字などが運営する公的病院など地域医療の中核を担っている病院ばかりで、新潟県魚沼地方では、町立湯沢病院をはじめ、魚沼市立小出病院、南魚沼市立ゆきぐに大和病院が対象になっています。
これまで安倍政権は、25年時点を見据えてベッド数など医療提供体制を見直す「地域医療構想」の策定を要求する「医療介護総合確保推進法」を14年に成立させるなど、入院ベッド数削減を自治体などに執拗に求めてきました。
しかし地域医療構想がそのまま実行されれば、25年時点のベッド数が本来必要な数より33万床も不足(共産党の小池晃書記局長参院厚労委17年6月の質問)するので、そんな構想が各地で進められる筈がありません。
そこで安倍政権は、17年の「骨太の方針」で、18年までの2年間を地域医療構想の具体化に向けた集中的な検討期間に指定しましたが同じことです。。
ところが今年の「骨太の方針」が閣議決定される直前に、経済財政諮問会議(議長安倍晋三)の中西宏明・経団連会長ら4人の民間議員が連名で、病床数削減が地域医療構想通りに進んでいないことを問題視し、「適切な基準を新たに設定した上で、期限を区切って見直しを求めるべき」だとする意見書を出し、それがそのまま「骨太の方針」に反映され、見直しの期限が「遅くとも20年9月」とされました。
全国知事会、全国市長会、全国町村会は3会長連名で、「地域の個別事情を踏まえず、全国一律の基準による分析のみで病院名を公表したことは、国民の命と健康を守る最後の砦である自治体病院が機械的に再編統合されることにつながりかねず、極めて遺憾」と抗議の声をあげました。極めて当然の指摘です。
しんぶん赤旗が取り上げました。
日刊ゲンダイも「 ~『病院統廃合・病床削減』で地方は壊滅する」の記事を出し、地方自治体などから「地域医療が崩壊する」「住民が生活できなくなる」と反発の声が上がっていることを紹介し、超高齢化が進むなかで病床が足りなくなることは容易に想像がつくのに、増床ではなく削減というのはムチャクチャで、「病院で診てもらえない患者や高齢者が続出するのは間違いない。介護疲れによる自殺や殺人が増える自治体も出てくるだろう。地方創生どころか地方は壊滅」だとしています。
そして「米国の言いなりに数千億円もするポンコツ武器をバンバン買っているのに『限られた財源を賢く活用』なんて、よくも言えたものだ」と述べています。
実際、安倍首相は軍事を10兆円に上げようとしている張本人です。満足な医療が受けられなくなれば、それぞれの家族が介護に追われることになり家庭は破滅に向かいます。
国民の生活を破綻させてまで軍備に走るのはチャップリンのいう「戦争狂」に他なりません。
しんぶん赤旗と日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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厚労省の424病院再編リスト 地方から猛反発
“住民にとって医療サービス後退”
しんぶん赤旗 2019年10月30日
地域医療を担ってきた公立・公的病院の再編・統合を迫る安倍政権の強引な計画に、自治体や医療関係者から猛烈な批判があがっています。発端は、厚生労働省が9月に突然、「再編や統合の議論が必要」とする公立・公的病院など424病院のリストを公表したことです。批判の強さに慌てた同省は全国7カ所で釈明の「意見交換会」を開催する事態となっています。
「(リストに病院の)名前があがったことで、将来性がないという材料にされ、看護師の引き抜きがもう始まっています。住民もとても不安がり、職員が説明に追われている状況です。今後の職員採用もどうなるのか、不安なことばかりです」
仙台市で23日開かれた意見交換会で、福島県の公的病院の関係者はリストに病院名が記載された衝撃をそう訴えました。リストにあげられたのは、自治体が運営する公立病院と日本赤十字などが運営する公的病院など地域医療の中核を担っている病院ばかりです。
知事会などが抗議
リスト公表に、全国知事会、全国市長会、全国町村会は3会長連名のコメントで、「地域の個別事情を踏まえず、全国一律の基準による分析のみで病院名を公表したことは、国民の命と健康を守る最後の砦(とりで)である自治体病院が機械的に再編統合されることにつながりかねず、極めて遺憾」と抗議の声をあげました。福岡市での意見交換会でも病院関係者から、「病床(入院ベッド)を削減すれば住民にとって医療サービスが落ちる」(福岡県)、「人口減少に対応すると言うが、周産期医療がなくなった地域ではすでに子育て世代が住まなくなっている」(熊本県)などの声が相次ぎました。
問題の背景には国の医療費抑制の動きがあります。安倍政権は都道府県に「地域医療構想」を策定させ、同構想に基づいて公立・公的病院ごとにベッド数などを見直すよう求めてきました。
協議に水浴びせる
仙台市での意見交換会で宮城県の公立病院関係者は、病院再編に一定の理解を示しつつも「地域医療構想が始まり、みんなで協議をしているのに水を浴びせたのが厚労省だ」と批判しました。
鹿児島大学の伊藤周平教授(社会保障法)は、人口減少に合わせた医療提供体制の縮減が必要だとの議論について、「地方では、産婦人科や小児科をはじめ医療はむしろ足りていない。人が減っていくから、ベッドを減らせばいいとは単純にならない。安倍政権は病院再編が思い通りにいかないので焦っているのではないか」と指摘します。
安倍政権 病床数削減を執拗に要求
背景に財界のいら立ち
公立・公的病院など424病院を名指しして、再編・統合の議論を求めた厚生労働省のリスト―。震源は、官邸に設けられた経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)、なかでも民間議員として会議に参加している財界人のいら立ちです。
思惑通り進まず
安倍政権は、人口の多い「団塊の世代」が全員75歳以上になる2025年までに医療や介護にかかる費用を抑える仕組みをつくらなければ社会保障制度が持続不可能になると主張。医療分野では看護師の配置が手厚い急性期病床をはじめとした入院ベッド数削減を、自治体などに執拗(しつよう)に求めてきました。
14年に成立した「医療介護総合確保推進法」は、都道府県に対し、25年時点を見据えてベッド数など医療提供体制を見直す「地域医療構想」の策定を要求。日本共産党の小池晃書記局長の参院厚生労働委員会(17年6月)での質問によって、地域医療構想がそのまま実行されれば、25年時点のベッド数が本来必要な数より33万床も少なくなることが明らかとなりました。
安倍政権は、17年の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)で、18年までの2年間を地域医療構想の具体化に向けた集中的な検討期間に指定。18年の「骨太の方針」では、公立・公的病院は、「高度急性期」や「急性期」といった地域の民間病院では担うことのできない機能に重点化するとの方針が決められました。
財界のいら立ちは、この病床削減が思惑通りに進んでいないことにあります。
今年の「骨太の方針」が閣議決定される直前の5月31日の経済財政諮問会議に、経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)、サントリーホールディングスの新浪剛史社長ら民間議員4氏が連名で社会保障制度改革に関する意見書を提出。病床数削減が地域医療構想通りに進んでいないことを問題視し、公立・公的病院について「適切な基準を新たに設定した上で、期限を区切って見直しを求めるべき」だと主張したのです。同時に「民間病院についても病床数の削減・再編に向けた具体的な道筋を明らかにすべき」だと求めました。
民間議員の意見書は「骨太の方針」にそのまま反映され、厚労省は「骨太の方針」に基づいて、424病院の選定作業を進めたのです。見直し期限は「遅くとも20年9月」とされました。
今後の社会保障制度のあり方を議論した28日の諮問会議でも、経団連の中西会長ら民間議員が、医療費抑制の方策として官民合わせて約13万もの病床削減を提言。首相もベッド数の削減などを着実に進めるよう厚労相に指示しました。
選定方法も疑問
医療や自治体の関係者からは、厚労省の選定方法にも疑問や批判があがっています。
厚労省は今回、各病院の手術件数などの診療実績と、車で20分圏内に代替可能な医療機関があるかという基準で、「高度急性期病棟」などがある全国1455の病院を分析。再編・統合対象を抽出しました。
札幌市で23日に開かれた厚労省と自治体・病院関係者との意見交換会では、医療関係者から「分析対象に精神科や感染症などの医療行為が入っていないのはなぜか」「車で20分といっても、雪が降ればそれ以上かかる」との声が上がりました。
(この特集は、佐久間亮、藤原直、前野哲朗、松田大地が担当しました)
安倍政権が推進「病院統廃合・病床削減」で地方は壊滅する
日刊ゲンダイ 2019/10/30
安倍政権が医療費削減を目的に打ち出している地域医療の再編統合をめぐり、地方自治体などから「地域医療が崩壊する」「住民が生活できなくなる」と反発の声が上がっている。
社会保障制度改革を議題に28日、官邸で開かれた経済財政諮問会議(議長・安倍首相)。経団連の中西宏明会長ら民間議員は、団塊の世代が75歳以上となる2025年度を控え、医療費の抑制策として全国の病床数を官民合わせて約13万床削減することや、在宅医療への転換推進を提言。これを受け、安倍首相は「限られた財源を賢く活用し、国民生活の質の向上を図ることが重要なポイント」などと発言し、提言の実行を加藤厚労相らに指示した。
病床数の削減をめぐっては、厚労省が9月、自治体や日本赤十字社などが運営する全国424の公立・公的病院について「再編統合の議論が必要」として実名を公表。民間議員の提言はこれを踏まえたものだが、全国知事会などは「地域住民の不信を招く」とカンカン。厚労省が各地で行っている説明会でも、病院などから「病床削減は住民の命に直結する」と反対意見が相次いでいるのだが、そりゃあそうだろう。
日本は超高齢化が進む。今後、病床が足りなくなることは容易に想像がつくのに、増床ではなく、削減というからムチャクチャ。在宅医療への転換推進というが、現在でも、介護離職などが社会問題化している中、さらなる家族負担を求めるというのはどうかしている。「国民生活の質の向上」どころか、真逆の政策だ。とにもかくにもカネの削減ありきで、国民の命を軽く考えているのは明らかだ。
「元気な地方なくして、日本の再生なし。地方創生は、安倍内閣の最も重要な政策の柱」「令和の時代は地方の時代」――。安倍首相は「地方重視」の発言を繰り返しているが、厚労省の計画通りに地方の病院が統廃合され、病床が削減されたら、病院で診てもらえない患者や高齢者が続出するのは間違いない。介護疲れによる自殺や殺人が増える自治体も出てくるだろう。地方創生どころか地方は「壊滅」だ。
そもそも、「限られた財源を賢く活用」なんて、よくぞ言えたもの。米国の言いなりに数千億円もするポンコツ武器をバンバン買っているのは一体、どこの誰なのか。「税と社会保障の一体改革」を口実に消費増税を繰り返しながら、なぜ、社会保障費から真っ先に削るのか。それも国会で議論することもなく、自分が議長を務める諮問会議で勝手に指示を出すのだから言語道断だ。
「国が強権的に病院の統廃合、病床削減を進めれば、患者が入院できなかったり、在宅医療の環境が整わないまま病院を追い出されたりするケースも出てくるでしょう。(極論すると)地方には住めなくなってしまいます。病床削減しなくても、保健予防の政策充実などで医療費の軽減は図れるはずです」(全日本民主医療機関連合会の内村幸一事務局次長)
都市部の大企業や金持ちを優遇する安倍政権にとって、地方はどうでもいいのがホンネなのだ。