2023年8月16日水曜日

16- 医療費負担割合 マイナカードに記載なし/トラブル続出 「マイナ保険証」

 保険証と一体になったマイナンバーカードには負担割合は書かれていないので、従来の保険証が廃止されると、オンライン資格確認に誤った情報が登録されていても分からないままとなります。

 それは最初に登録された情報が「正」とされ、保険診療の負担割合などの確認はその登録情報と照合する仕組みになっているため、診療報酬の請求や国保連による審査支払いのどの過程でも登録情報の誤りが発見されないからです(13日付)
 それとは別に、マイナ保険証であればスムーズに窓口で受け付けられるかというとそんなことはなく、例えば本人であっても顔認証が出来なくて保険資格が確認できない機械トラブルが後を絶たないなど、一つひとつのトラブルをクリアするために受診者や医療機関に多大な手間が要求されているのが実情です(15日付)
 こうした具体的な不具合がありながら、保険証の廃止を止めることもせず、廃止の期限を来秋以遠に動かそうとしない政府は一体何を考えているのでしょうか。しんぶん赤旗が報じました。
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医療費負担割合 マイナカードに記載なし 誤登録 気づけない
       紙の保険証存続は必須
                        しんぶん赤旗 2023年8月13日
 年齢や所得により1~3割に区分される70歳以上の医療費の窓口負担割合が、紙の保険証と、マイナンパーカードなどを使ったオンライン資格確認に相違のある事例が全国各地で相次いでいます。保険証と一体になったマイナンバーカードには負担割合は書かれておらず、従来の保険証が廃止されると、オンライン資格確認に誤った情報が登録されていても分からず正されないまま保険給付が続いてしまいます。従来の保険証存続は必須です。
                                                                  (内藤真己子)
 全国保険医団体連合会保団連)が9日公表した「オンライン資格確認のトラブル実態調査」結果では、19都府県の370医療機関で、従来の保険証とオンライン資格の照会に負担割合の相違があったことが分かりました(回答数2780医療機関)。一つの医療機関で10件、15件発生している場合もありました。「患者さんが出した保険藍は割負担なのにオンライン資格は2割」岩手県)、「3割の人がオンラインで)2割と表示が数名いる」(神奈川県)、「オンライン割、保険証3割」(静岡県)、「保険証は割が資格確認は2割」(山口県)など、全国に広がっています

登録誤り認める
 従来の保険証とオンライン資格確認の負担割合の相違は本紙が千葉市国民健康保険の事例を告発。報道後、千葉市はオンライン資格確認システムに誤った負担割合が登録されていたと認めました。
 市が加入者の負担割合を入力した際、3割とすべきところを2割と入力。その日のうちに誤りに気づき入力し直しましたが、誤った情報を消去無効化)しませんでした。そのため、正しい3割負担と誤った2割負担の両方の情報が都道府県国保連合会のシステム国保情報集暇システム)に送られました。
 ところが国保運のシステムは、プログラムに従て誤た2割負噛の情報を正しいものとして処理し、登録してしいました。その情報がオンライン資格確認シスームにも送られました。
 一千葉市が発行した保険証には正しい負担割合が記載されています。
 重大なことは、保険証が廃止されれば、こうしたオンライン資格確認への誤った負担割合の登録が、医療機関の窓口で発見できなくなってしまうことです。保険証と一体化したマイナンバーカードには負担割合は書かれておらず、医療機関はオンライン資格確認の負担割合に沿って窓口臭担を徴収し、残りを保険請求することになるからです。

運用停止求める
 そのうえ本紙の取材で、いったん誤った情報が登録されてしまえば、医療機関による診療報酬の請求や国保連による審査支払いのどの過程でも誤りが発見されないことが分かりました。負担割合などの確認は、オンライン資格確認に登録された情報と照合する仕組みになっているからです。
 こうした事態をうけ全国保団運の住江憲男会長は9日の会見で、「全容解明のための運用停止と保険証の存続」を強く求めました

情報一元化が誤りうむ
マイナンバ-問題に詳しい自治体情報政策研究所代表の黒田充さんの話
 岸田政権が進めるデジタル改革の狙いは、国民の個人情報を集約し、大企業のもうけや、社会保障給付の削減に利活用することです。保険証を廃止し、国民全員にマイナンバーカードを持たせようとするのも、そうした利活用を進めるためです。
 日本の医療保険制度は、健保組合や協会けんぽなど多数の保険者によって業務が行われています。自治体の国保も、それぞれが持つ情報処理システムで業務を行っていますが、システムは自治体ごとに異なります。保険者が多数あり、システムもバラバラなもと、情報を集め一元化しようとするなら、誤りを避けるのは難しいでしょう。
 国保や後期高齢者医療の患者負担割合は、行政が被保険者の年齢や所得に応じて決定する行政処分であり重いものです。それが一元化のための情報処理・連携によって誤って登録されるというのは制度の根幹を揺るがす重大な問題です。
 しかも保険証が廃止されれば誰も誤りに気付けないというのは極めて深刻です。保険証廃止方針は撤回するしかありません。


医療機関や患者にツケ トラブル続出「マイナ保険証」
                       しんぶん赤旗 2023年5月15日
 トラブル続出の「マイナ保険証」をめぐり、厚生労働省が対応策を示した事務連絡を矢継ぎに出しています.中身を見ると行保険証を廃止しマイナンバーカードに一本化する方針ありきで、不完全なシステムをごり押ししてきたツケを医療機関や患者に払わせる内容となっています。
「マイナ保険証」で受診する際、保険資格が確認できない機械トラブルが後を絶ちません。厚労省はその場合、患者がスマートフォンを操作し、個人向けサイト「マイナポータル」の資格情報画面を見せるか、現行保険証を見せるよう求めています。操作が不慣れでマイナ保険証しか持参していない患者には、保険情報を申告させる「資格申立書」をわざわざ書かせることとしています。

患者に聞き取り
 厚労省が3日付で自治体などに出した事務連絡は、患者が申立書の記入欄にある患者負担割合を「わからない」と答えた場合、医療機関に患者から「可能な限り聞き取って判断」するよう求めており、余計な手間を増やそうとしています。
 負担割合が間違っていても、レセプト(診療報酬明細書)内容をチェックする審査支払機関が医療機関に、レセプトを差し戻し(返戻=へんれい)しないことを基本とするとしましたが、支払機関の事務負担が増すのは必至です。医療機関への診療報酬の支払いが遅れる恐れもあります。
 患者が申立書に加入保険の種類を「わからない」と答えた際も、医療機関に特定する作業を要求しています。
 自治体が行う子どもの医療費助成などは、有効な受給者証を見せれば保険資格が「不詳」でも患者負担を減免できると説明しています。ただ、厚労省担当者は、間違いがあれば、「レセプトが返戻される可能性もあります」と説明。忙しい医療現場がいっそう疲弊するのは目に見えています。
こうした対応策では到底、現場の混乱は解決しないし、不安も払拭されません」と語るのは全国保険医団体連合会(保団連)の上所聡子事務局次長です。
70歳以上の高齢者は所得によって負担割合が異なるので、記憶違いで間違うこともありえます。加入保険者の名称を覚えていない人もいるでしょう。立書を書かせること自体、患者さんとの信頼関係に影響しかねません」
 さらに厚労省は11月から申請受け付け・交を始める予定の暗証番号なしのマイナカードをめぐる事務連絡を7付で医療団体などに出しています。

「顔認鉦」が基本
 暗証番号の管理負担やトラブルを懸念する介護施設などの声を受け暗証番号なし″を決めたもので保険証の利用登録は可能です。ただ、暗証番号がないため、受診時の本人確認はカード読み取り機の顔認証を基本とする」というのです
 現場では、本人なのに顔認証されないなどトラブルが読いているのが実態です。その場合、事務連絡では受付職員が資格確認システムを切り替え、患者を目視で確認する対応に「可能な限り御協力を」と求めています。企業に精度改善を要請したと言いますが、一体いつ完了するのか定かではありません。
その場しのぎの対応で、現場は手間ばかりが増えています」と怒る上所さん。「現行の保険証は廃止せず存続すべきです。そのことがいっそうはっきりした対応策だと思います」と強調します。(松田大地)