日刊ゲンダイの連載記事:集中企画・マイナ狂騒(38)~(40)を紹介します。
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集中企画・マイナ狂騒(38)
資格確認書つぶしへ次なるペナルティー画策…2回目以降は「申請」しないと届かず10割負担?
日刊ゲンダイ 2023/08/22
来年秋に健康保険証が廃止された際、マイナ保険証を持たないすべての人に交付されることになった資格確認書。申請によらない職権交付にマイナ保険証の非保有者は胸をなでおろしたはずだ。しかし、喜ぶのは今のうち。早々に申請交付に戻される可能性が浮上している。
資格確認書に人気が集まるとマイナ保険証の普及にブレーキがかかる。そこで資格確認書を不便で損なものにする必要があり、政府はいくつか“ペナルティー”を考えたという。都内の医療関係者が言う。
「ひとつがマイナ保険証よりも窓口負担を割高にすること。もうひとつが、1年に1度の申請交付とすることで手間を強いることです。申請を怠れば、資格確認書は届かず、10割負担を請求されてしまう。ならば、マイナ保険証を持とうと思うからです。トラブル多発で保険医療が行き届かなくなるとの懸念が広がり、職権交付に追い込まれてしまいましたが、政府内では職権交付はあくまで緊急避難との位置づけで、早々に申請交付に戻したいのが本音です」
健保組合に判断丸投げか
資格確認書の職権交付はいつまで続けるのか──。今月9日の立憲民主党のヒアリングにヒントがあった。
立憲議員が「後期高齢者は1年ごとに期限が切れるが、2年後に2回目の職権交付がされるのか。健康保険組合の有効期限は5年だが、5年経過後、再び、職権交付となるのか」と、質問すると、厚労省の担当者はこう答えた。
「政府の立場としては(職権交付を行う)当分の間とは、さまざまな環境によって、異なると考えており、現時点では想定しているものはございません」
驚きの答弁だ。来年秋の保険証廃止後の初回は資格確認書を職権交付するが、2回目以降は「未定」。つまり、最短で来秋から1年後に職権交付をしない選択肢もあり得るということだ。マイナ保険証を持たない人にとっては、「申請」というペナルティーが科せられるのである。
「2回目以降、職権交付か申請交付かについて、国は健保組合や市町村などの保険者の判断に委ねる可能性がある。職権交付を打ち出した首相会見後のブリーフィングで厚労省は『法律の付則で職権交付が可能となっているが、その主語は保険者で、“保険者が必要があると認めるときは”となっており、最終的には保険者判断ということだ』とわざわざクギを刺しています」(前出の医療関係者)
国の責任での職権交付は初回だけ。岸田政権は逃げるつもりだ。国民の不安をやはり軽く考えている。
集中企画・マイナ狂騒(39)
マイナ保険証で相次ぐ「窓口負担割合」誤登録 今も起きている過大・過少支払いの驚愕実害
日刊ゲンダイ 2023/08/22
次から次へとトラブルが飛び出すマイナ保険証。今度は医療費の窓口負担をめぐり、看過できない重大欠陥が発覚した。患者がマイナ保険証を使って医療費を支払う際、窓口負担の割合が誤って登録されているケースが続出。過大負担や過少負担といった“実害”が、今も起きている可能性は高いのだ。
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医療費の窓口負担は複雑だ。6歳未満は2割で、6歳から70歳未満は所得に限らず3割。70~75歳未満の前期高齢者は2割で、75歳以上の後期高齢者は1割だが、現役並みの所得があれば高齢者でも3割負担となる。
神奈川県保険医協会は7月21~28日に会員医療機関を対象に窓口負担割合の登録状況について調査を実施。608医療機関から回答を得た。
現行の健康保険証の券面と、マイナ保険証を使ったオンライン資格確認の画面で負担割合に相違があった医療機関は87機関(14.6%)に上った。県内の各自治体でまんべんなく発生しているという。トラブル事例はこうだ。
〈1割表示だが本来は3割だった〉〈2割の前期高齢者の方が3割で表示〉〈70歳未満なのに2割負担と出た〉〈後期高齢者はみんな1割負担で入っていました〉〈オンライン資格確認だと負担割合がわからないことがあり、結局保険証を見せていただき確認するため手間がかかる〉
中には、自己負担に関し、〈後期高齢者がオンライン資格確認で2割負担となり会計した後で後期高齢者医療証で3割負担が判明し、差額を精算した〉とのトラブルもあった。このケースは後で気づいたから差額を精算できたが、他にも表面化していない誤払いが起きているに違いない。
協会の担当者も「14.6%はあくまで誤登録が判明したケースです。知らないまま過大負担や過少負担になっているケースがある可能性はあります」と答えた。
原因や実態は不明
なぜ、誤登録が起きるのか。21日付の朝日新聞によると、厚労省は診療報酬請求を行うレセプトコンピューターと連携する際に、誤って独自の負担割合を算出するミスが一部で生じている可能性を説明しているという。しかし、コトはシステム上の問題だけではなさそうだ。
「マイナ保険証を使うオンライン資格確認システムと、レセプトコンピューターを連携させる過程で不具合が起きたケースがありました。しかし、レセプトコンピューターと連携させていない場合でも、負担割合の誤りは起きており、システム起因に限らず、さまざまな要因が存在するとみられます」(前出の協会担当者)
厚労省に誤登録の原因と実態把握の状況について問い合わせたが、締め切りまでに回答はなかった。
原因も実態もハッキリしない重大トラブル。負担割合の誤登録により、22日もどこかで誤った金額で支払っている患者がいるはずだ。マイナ保険証の運用をいったん、ストップするのが常識ではないのか。
集中企画・マイナ狂騒 (40)
衝撃! 使えないマイナ保険証の新弥縫策…「半世紀」もペラペラの紙切れを持ち歩くバカバカしさ
日刊ゲンダイ 2023/8/25
マイナ保険証離れの決定打となりそうだ──。政府はマイナ保険証1枚でデータに基づくより良い医療を受診できると散々アピールしてきた。しかし、マイナ保険証では受診できない医療機関が少なくないことが発覚。厚労省は新たな書類を交付する方針だ。マイナ保険証の保有者はマイナカードとは別に、もう1枚持ち歩くことになる。
◇ ◇ ◇
マイナ保険証はオンライン資格確認システムが導入された医療機関や薬局で利用可能だ。このため、今年春にシステム導入が原則義務化された。しかし、レセプト(診療報酬明細書)を作成するシステムを使わず、紙のレセプトで請求している医療機関などは義務化の対象外とされた。
23日の立憲民主党のヒアリングで対象外の件数を問われた厚労省の医療介護連携政策課長は「8月13日時点で医療機関・薬局は22万9336施設あり、義務化の対象は21万516施設。その差分(1万8820施設)が対象外だ」と明らかにした。全体の8%にあたる1・.8万施設でマイナ保険証が利用できないとは驚きだ。
もし、マイナ保険証の保有者がこの1・.8万施設を利用する場合、どのように保険資格を示すのか。国民健康保険課長は「マイナンバーカードの券面には被保険者番号などが書かれていない。(マイナ保険証の)新規資格取得時や負担割合の変更時などに保険者から『資格情報のお知らせ』を交付することにしている」と新たな対策を示した。
どこでも保険医療を受けられるようにするためには、マイナ保険証の保有者は常時、「お知らせ」を携行する必要があるということだ。
岸田首相が廃止方針にこだわる限り矛盾は拡大
「お知らせ」とはどんなものなのか。長妻昭衆院議員が「カードで来るのか」と問うと、国民健康保険課長は「保険者の判断になるが、一般的には“お知らせ”なのでたいそうなものにはならないと想像している」と答えた。どうやら、プラスチック製のガッチリしたカードではなく、ペラペラの紙切れ1枚となりそうだ。
雇用者保険の場合、転職しなければ、同じ健保組合に属し、保険資格に変更はない。高卒で入社し、65歳の定年まで同じ会社で働いたとすると、47年間、負担割合が変わることはなく、マイナ保険証の保有者なら、半世紀近くも「お知らせ」というペラペラの紙切れを持ち続けなければならないのだ。破れたり、黄ばむのは避けられないだろう。
柚木道義衆院議員は、「お知らせ」ではなく「今の健康保険証を持参すればいいように対応できないのか。(来秋の)廃止を延期すればできる」と迫った。
医療介護連携政策課長は「先生のおっしゃることは理解しますが、当然、私どもは今、政府の一員として仕事をさせていただいておりますので、大きな政府の方針にのっとって取り組みを進めていく」とポロリ。官邸から“やらされている感”をにじませた。
「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏が言う。
「すでに破綻が明らかなマイナ保険証の弥縫策に追われる官僚が気の毒でなりません。さまざまな問題が起きていますが、現行の健康保険証を存続させれば解決する問題がほとんどです。岸田首相が廃止方針にこだわる限り、矛盾は拡大し、『お知らせ』のような誰が見てもおかしな対策を繰り返すことになるでしょう」
ペラペラの紙切れを半世紀も大切に保管するなんてゴメンだ。