米国が長崎に原爆を投下してから78年の9日、長崎市は市内で平和祈念式典を開き、被爆2世の鈴木史朗市長が「長崎平和宣言」で、核保有国の指導者に「核抑止力論」からの脱却、日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求めました。
岸田首相はビデオメッセージで「核兵器のない世界」をめざして、「核不拡散条約(NPT)を国際社会が結束して維持・強化するため国際社会の取り組みを主導していく」と述べましたが、核兵器禁止条約については一切触れませんでした。
しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「核抑止」脱却の決断を 被爆78年長崎市平和祈念式典 「平和宣言」で市長迫る
しんぶん赤旗 2023年8月10日
米国が長崎に原爆を投下してから78年の9日、長崎市は市内で平和祈念式典を開き、鈴木史朗市長が「長崎平和宣言」で核保有国の指導者に「核抑止」からの脱却、日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求めました。この1年間で亡くなった被爆者は3314人で、累計19万5607人となりました。
台風6号の影響で、会場を平和公園から屋内の出島メッセ長崎に変更し、岸田文雄首相や各国大使、被爆者・遺族などの参列を中止。市長、副市長、教育長、市議会の正副議長・議員の市関係者と被爆者代表の42人が参列しました。
鈴木市長は、広島での主要7カ国(G7)首脳会議の「広島ビジョン」を、「核抑止」を前提としていると指摘。核保有国と核の傘の下の国のリーダーに「核抑止への依存からの脱却を勇気を持って決断すべきです」「対決ではなく対話によって核兵器廃絶への道を着実に歩むよう求めます」と訴えました。日本政府と国会議員に核兵器禁止条約第2回締約国会議へのオブザーバー参加、禁止条約の署名・批准を求めました。
長崎で原爆被害に遭いながら被爆者と認められない「被爆体験者」について鈴木市長は宣言で、大石賢吾知事はビデオメッセージで救済を求めました。
被爆者代表の「平和への誓い」で工藤武子さん(85)は「唯一の戦争被爆国の日本が、地球と人類の未来を守るために核兵器廃絶しかないと強く訴えるべきだ」と求めました。
国連のアントニオ・グテレス事務総長のあいさつが代読され、若い世代にむけて「被爆者の思いを引き継いで前進させてください。世界は長崎で起こったことを決して忘れてはなりません」と呼びかけました。
岸田首相はビデオメッセージで「核兵器のない世界」をめざして、「核不拡散条約(NPT)を国際社会が結束して維持・強化するため国際社会の取り組みを主導していく」と述べましたが、核兵器禁止条約については一切触れませんでした。
岸田首相、「核抑止論」批判に向き合わず 広島に続き長崎でも 長崎市長は核抑止脱却を訴え
東京新聞 2023年8月10日
岸田文雄首相は9日、台風接近に伴い欠席した長崎市での平和祈念式典に寄せたビデオメッセージで、核軍縮への取り組みに全力を尽くす姿勢を強調した。だが、核兵器を全面的に違法とする核兵器禁止条約や、核抑止からの脱却への道筋については、6日の広島市での式典に続いて言及しなかった。被爆地は核廃絶への具体的な行動を求めているが、深い溝は埋まらないままだ。
首相は「『核兵器のない世界』を実現するため非核3原則を堅持し、たゆまぬ努力を続ける」と説明。核軍縮の具体策については「核拡散防止条約(NPT)を国際社会が結束して維持・強化するよう訴え、取り組みを主導する」と触れるにとどまった。
一方、被爆2世の鈴木史朗長崎市長は平和宣言で、広島サミットで発表された核軍縮に関する共同文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論を全面的に否定。「私たちの安全を本当に守るには、地球上から核兵器をなくすしかない」と訴えた。
核抑止脱却は、広島市での平和記念式典でも、松井一実市長や湯崎英彦広島県知事が求めた。だが、政府は「核抑止力を含む米国の拡大抑止が不可欠」との立場を崩さない。
鈴木市長は「日本政府と国会議員に訴える」と前置きし、核禁条約への署名や第2回締約国会議へのオブザーバー参加も求めたが、この点についても首相が触れることはなかった。
9日に予定されていた長崎の被爆者団体と首相の面会は、月内に行われる見通し。(近藤統義)
広島ビジョン
今年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)でまとめられた核軍縮に焦点を当てた文書。核兵器について「防衛目的のための役割を果たし、侵略を抑止し、戦争や威圧を防止すべき」と明記し、核抑止力を肯定した。米ロ英仏中の5大国の核保有を前提とする核拡散防止条約(NPT)体制の堅持や、核兵器のない世界を「究極の目標」とすることも確認した。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。