2023年8月21日月曜日

日米韓首脳会談 3カ国の安保協力強化 共同訓練・会合を毎年

 バイデン米大統領と岸田首相、韓国の尹錫悦大統領は18日、ワシントン近郊のキャンプデービッド山荘で会談し成果文書として中長期的な指針と位置付ける「キャンプデービッド原則」と具体的な取り組みを盛り込んだ共同声明を発表しました。

「キャンプデービッド原則」は、中国や北朝鮮を念頭に日米・米韓の同盟をいっそう深化させ、インド太平洋地域やそれを超えた地域でも軍事的、経済的な協力を強める方向を打ち出したもので、日米韓の「歴史的」合意を達成し、クアッド(QUAD=日米豪)やオカス(AUKUS=豪英米)に次ぐ新たな「枠組みを形成」したとして、バイデン氏が来年の大統領選挙に向け自らの実績としてアピールするものと見られています
 この首脳会談について日本総研の寺島会長は20日のサンデーモーニングで、中国を敵視してNATOの極東版を構築しようとするもの(要旨)と評しましたが、NATOをあたかも至高の組織を見做している岸田首相何の違和感もなかったのでしょう。
 共同声明は「インド太平洋およびそれを超えた地域」で3カ国の協力を拡大し、「共有する野心を新たな地平へと引き上げる」と表明し、日米韓の首脳会談や、外相・防衛相、安全保障担当高官の会合を毎年開催し、自衛隊と米軍、韓国軍の共同訓練を毎年実施するとしました。
 岸田首相の対中国敵視的言動と日米軍事同盟深化へ賛同は留まるところを知りません。
 中国が厳しく反発するのは当然のことで、岸田首相はなぜ排他的なプロック的対応ではなく、すべての国を包摂する安全保障の枠組みを目指そうとしないのでしょうか。
 しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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3カ国の安保協力強化 日米韓首脳会談で原則確認 共同訓練・会合を毎年
                       しんぶん赤旗 2023年8月20日
【ワシントン=島田峰隆】バイデン米大統領と岸田文雄首相、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は18日(日本時間19日未明)、米首都ワシントン近郊のキャンプデービッド山荘で会談しました。3首脳は成果文書として、中長期的な指針と位置付ける「キャンプデービッド原則」と具体的な取り組みを盛り込んだ共同声明を発表しました。中国や北朝鮮を念頭に日米・米韓の同盟をいっそう深化させ、インド太平洋地域やそれを超えた地域でも軍事的、経済的な協力を強める方向を打ち出しました
 日米韓の3カ国首脳が国際会議の場ではなく、独自に会談するのは初めてです。
 会談後の共同記者会見でバイデン氏は「インド太平洋地域での3カ国の防衛協力を前例のないレベルに引き上げる」と強調。「台湾海峡で平和と安定を維持し、経済的な威圧とたたかう約束を再確認した」と述べました。
 岸田首相は「3カ国の戦略協力を開花させることは不可避であり、今の時代に求められている。日米、米韓の同盟の調整が強化され、3カ国の安全保障協力は新たな高みに引き上げられる」と応じました。
 尹氏は「3カ国の安全保障協力の強化で合意した。新たな時代と可能性に向けたパートナーシップを確認した」と述べました。

 共同声明は「インド太平洋およびそれを超えた地域」で3カ国の協力を拡大し、「共有する野心を新たな地平へと引き上げる」と表明。日米韓の首脳会談や、外相・防衛相、安全保障担当高官の会合を毎年開催し、自衛隊と米軍、韓国軍の共同訓練を毎年実施するとしています。
 中国については、南シナ海で「危険で攻撃的な行為」を行っているとし、「現状を変更するいかなる一方的な試みにも強く反対する」と表明。台湾に対する3カ国の立場は変わらないとし、台湾問題の平和的解決を求めています。
 北朝鮮の核・ミサイル開発は国連安保理決議違反だと非難。北朝鮮によるミサイル発射の探知情報のリアルタイム共有を年内に始めるとしています。
 ウクライナを侵略するロシアについては、領土保全や主権の尊重などを求め、対ウクライナ支援の継続を確認しました。
 他方、共同声明は「東南アジア諸国連合(ASEAN)の中心性」を再確認し、「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」の実践への協力を表明しました。


軍事対決の悪循環に拍
                       しんぶん赤旗 2023年8月20日
「日米韓パートナーシップの新時代」「新たな章を築いた」「安全保障協力を新たな高みに引き上げる」-。 18日(日本時間、19日未明)、米ワシントン郊外のキャンプデービッドで会談を行った日米韓の3首脳は、その歴史的成果を口々に強調しました対北朝鮮にとどまらず、対中国を念頭にしたインド・太平洋地域の新たな軍事的枠組みへと拡大させる狙いですが、日韓の歴史問題などを抱えた3カ国の枠組みは多くの矛盾をはらんでいます
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 今回の会談で、核心となる文書は、長期にわたる連携の指針を示した「キャンプデーピッド原則」です。冒頭、3力国の連携は、「インド太平洋並びにそれを超えた地域に対する共通のビジョン」だと明言し、3カ国を「ンド太平洋国家」と位置付けました。
 戦後、米政権は何度も日米韓軍事同盟の形成を画策してきましたが、旧日本車による戦前の苛烈な植民地・支配の経験から、韓国国民に日韓の車事遅携への反発をもたらし、米国のもくろみは頓挫してきました。
 バイデン政権は、1978年にイスラエル・エジプト合意を実現した「キャンプデービッド合意」になぞらえた「キャンプデービッド原則」で、日米韓の「歴史的」合意を達成し、インド太平洋地域における対中国包囲網であるクアッド(QUAD=日米豪)やオカス(AUKUS=豪英米)に次ぐ枠組みを形成として、来年の大統領選挙に向けた自らの実績としてアピールする狙いです。

軍事協力が突出
 日米韓首脳会議や並行して行われた2カ国会合では、軍事協力の強化が突出しています。日米韓首脳共同声明「キャンプデーピッドの精神」では、「米国の『拡大抑止』は強固だ」と強調。米国のあらゆる種類の能力によって裏打ちされている」として、米国の核戦力を強調しました。
 米国は既に、核抑止の可視化=あえて核戦略を見せつけ威嚇する手法を推進。5月には沖縄県の海兵隊所属のCH53Eヘリコプター2機がフィリピン海で、最大20発の核ミサイルを搭載可能な米海軍オハイオ級原潜メインにロープを降ろすなど補給を実施。韓国では7月、米戦略原子力潜水艦としての寄港が42年ぶりとなる米戦略原潜ケンタッキーが釜山に入港しています。
 さらに、共同声明は、「名称を付した」複数領域におよぶ3カ国共同訓練を毎年開催することを明記。軍事情報の共有や、「有事」を念頭に3カ国が協議を行うことも確認しました。
 重大なのは、日米首脳会談で、中国やロシアが開発している「極超音速滑空弾」に対処する新型迎撃ミサイルの日米共同開発で合意したことです。先制攻撃を含む米国の「統合防空ミサイル防衛」IAMD)に日本をより深く組み込み、新たな軍拡をもたものです。

包摂にこそ未来
「キャンプデービッド原則」は「北朝鮮の非核化」「前提条件なしでの北朝鮮との対話」に言及していますが、こうした軍事の脅しを強めれば、北朝鮮も・ミサイル軍拡を加速し、軍事対軍事」の悪循環をいっそう高めることは明らかです。
 さら「原則」は、中国を念頭に「台湾海峡」に言及。共同声明では、南シナ海で不法な海洋権益の主張を貫く危険な行動をしているとし中国を名指しで非難ましたが、既に中国側から「軍事ブロック」だと、厳しい反発の声が上がっています
 一方、「キャンプデービッド則」も共同声明も、東南アジア諸国連合(ASEAN)が主導し、日米韓に加え中国、ロシア、北朝鮮も合む包括的な枠組み=「インド太平洋構想」(AOIP)への支持を言及せざるをえませんでした。排他的なプロック的対応ではなく、すべての国を包摂する安全保面の枠組みにこそ未来があります。 (石橋さくら)


新たな軍事的枠組みづくりに反対する 志位委員長が談話
                       しんぶん赤旗 2023年8月20日
 日本共産党の志位和夫委員長は19日、日米韓首脳会談で発表された共同声明について「新たな軍事的枠組みづくりに反対する」とした談話を発表しました。
 一、18日、米国で行われた日米韓3カ国の首脳会談で、発表された共同声明では、「日米同盟と米韓同盟の間の戦略的連携を強化し、日米韓の安全保障協力を新たな高みへと引き上げる」ことを宣言し、共同演習の拡大・定例化をはじめ、軍事・経済安全保障上の協力強化による「抑止力」強化を打ち出した。日韓への核兵器による「拡大抑止」についても確認した。
 これは、米国の戦略に沿って、3カ国の新たな軍事的枠組みをつくり、インド太平洋地域のブロックによる分断を強め、東アジアにおいて軍事対軍事の悪循環を一層加速させる、きわめて危険な動きである。
 北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国の力による一方的な現状変更の試みが許されないことは当然だが、日本共産党は、それへの対抗を名目に、東アジアに新たな軍事的枠組みをつくり、分断と対立をより深刻にする動きに厳しく反対する
 一、日米首脳会談で合意された極超音速兵器に対処する新型迎撃ミサイルの共同開発は、米軍が主導して構築されている「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に日本を深く組み込み、危険な軍拡の悪循環を助長し、地域の緊張を高めるもので、わが党は強く反対する。
 一、3カ国の首脳は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みとその「インド太平洋構想」(AOIP)への支持をあらためて確認した。AOIPは地域のすべての関係国を包摂する平和の枠組みの提唱であり、排他的なブロック的対応の強化とは根本的に矛盾するものである。
 排他的なブロック的対応を強めるのではなく、対話を強め、地域のすべての国を包摂する安全保障の枠組みを推進することこそ、求められている