2023年8月7日月曜日

広島 原爆忌 犠牲者を追悼 / 広島平和宣言 核抑止論は破綻していると

 広島に原爆が投下されてから78年になる6日、爆地・広島では、犠牲者を追悼し、核兵器のない世界の実現に向けた訴えを国内外に発信する1日が続きました。

 世界で核の脅威が高まる中、広島市の松井市長は平和宣言で「核抑止論は破綻していることを直視する必要がある」と世界の指導者に呼びかけました。
 核抑止力論=核の傘論の誤りは先の広島G7の共同声明の際にも、被団協の人たちから徹底的に批判されました。
 この件は18年2月、参院国際経済・外交に関する調査会に招聘されたICANの川崎 哲氏が、米国の「核抑止力」を根幹とする安全保障政策を再検討するよう日本政府に改めて求めたことで注目されました。それがいまや世界の常識になりました。
  ⇒182.9)「核の傘」論の批判的再検討 ICAN 川崎哲氏
    (19.7. 8) 野党は「核の傘」に対抗軸を ICAN川崎氏
 日本政府は一刻も早く虚妄の認識から脱するべきです。
 NHKの記事と広島宣言を紹介します。
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広島 原爆投下78年 犠牲者を追悼 核兵器ない世界へ発信続く
                     NHK NEWS WEB 2023年8月6日
広島に原爆が投下されてから6日で78年です。
世界で核の脅威が高まる中、広島市の松井市長は平和宣言で「核抑止論は破綻していることを直視する必要がある」と世界の指導者に呼びかけました。被爆地・広島では、犠牲者を追悼し、核兵器のない世界の実現に向けた訴えを国内外に発信する1日が続いています。

広島市の平和公園では、夜明け前から被爆者や遺族が祈りをささげました。
午前8時から行われた平和記念式典には、被爆者や遺族の代表をはじめ、岸田総理大臣のほか、過去最多となる111の国の代表が参列し、ことしの参列者は、新型コロナウイルスの感染が拡大する前と同じ規模のおよそ5万人となりました。
式典では、この1年に亡くなった人や死亡が確認された人、あわせて5320人の名前が書き加えられた33万9227人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められました。

そして、原爆が投下された午前8時15分に、参列者全員が黙とうをささげました。世界では、ロシアが核による威嚇を続ける中核軍縮の議論が停滞し、核抑止力への依存を強める動きも見られます。

広島市の松井市長は、平和宣言で「世界の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取り組みを早急に始める必要があるのではないか。平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっている」と訴えました。

その上で、各国の為政者に対して、核による威嚇を直ちに停止し、対話を通じた信頼関係に基づく安全保障体制の構築に向けて一歩を踏み出すことを強く求めました。
そして、日本政府には一刻も早く核兵器禁止条約の締約国になることや、まずはことし11月の締約国会議にオブザーバーとして参加することを要望しました。
           (後 略

   

78年前の原爆投下の日を、まるで生き地獄のようだったと振り返る当時8歳の被爆者は、「核兵器を保持する国の指導者たちは、広島、長崎の地を訪ね、自らの目で、耳で、被爆の実相を知る努力をしていただきたい。あの日、熱線で灼(や)かれ、瞬時に失われた命、誰からも看取られず、やけどや放射能症で苦しみながら失われていった命。こうして失われた数え切れない多数の人々の命の重さを、この地で感じてもらいたい。」と訴えています。

本年5月のG7広島サミットで各国首脳が平和記念資料館の視察や被爆者との対話を経て記帳された芳名録は、こうした被爆者の願いが各国首脳の心に届いていることの証しになると思います。また、慰霊碑を参拝された各国首脳に私から直接お伝えした碑文に込められた思い、すなわち、過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和を祈念する「ヒロシマの心」は、皆さんの心に深く刻まれているものと思います。こうした中、G7で初めて「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が独立の文書としてまとめられ、全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現が究極の目標であることが再確認されました。それとともに、各国は、核兵器が存在する限りにおいて、それを防衛目的に役立てるべきであるとの前提で安全保障政策をとっているとの考えが示されました。

しかし、核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか。市民社会においては、一人一人が、被爆者の「こんな思いは他の誰にもさせてはならない」というメッセージに込められた人類愛や寛容の精神を共有するとともに、個人の尊厳や安全が損なわれない平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっています。

かつて祖国インドの独立を達成するための活動において非暴力を貫いたガンジーは、「非暴力は人間に与えられた最大の武器であり、人間が発明した最強の武器よりも強い力を持つ」との言葉を残しています。また、国連総会では、平和に焦点を当てた国連文書として「平和の文化に関する行動計画」が採択されています。今、起こっている戦争を一刻も早く終結させるためには、世界中の為政者が、こうした言葉や行動計画を踏まえて行動するとともに、私たちもそれに呼応して立ち上がる必要があります。

そのため、例えば、私たちが日常生活の中で言葉や国籍、信条や性別を超えて感動を分かち合える音楽や美術、スポーツなどに接し、あるいは参加して「夢や希望がある」といった気持ちになれるような社会環境を整えることが重要となります。皆さん、そうした社会環境を整えるために、世界中に「平和文化」を根付かせる取組を広めていきましょう。そうすれば、市民の支持を必要とする為政者は、必ずや市民と共に平和な世界に向けて行動するようになると確信しています。

広島市は、世界166か国・地域の8,200を超える平和首長会議の加盟都市と共に、市民レベルでの交流を通して「平和文化」を世界中に広めます。そして、平和を願う私たちの総意が為政者の心に届き、武力によらず平和を維持する国際社会が実現する環境を作ることを目指しています。また、被爆者の平和への思いを世界中の若者に知ってもらい、国境を越えて広め、次世代に引き継げるようにするために、被爆の実相に関する本市の取組をさらに拡充していきます。

各国の為政者には、G7広島サミットに訪れた各国首脳に続き、広島を訪れ、平和への思いを発信していただきたい。その上で、市民社会が求める理想の実現に向け、核による威嚇を直ちに停止し、対話を通じた信頼関係に基づく安全保障体制の構築に向けて一歩を踏み出すことを強く求めます。

日本政府には、被爆者を始めとする平和を願う国民の思いをしっかりと受け止め、核保有国と非核保有国との間で現に生じている分断を解消する橋渡し役を果たしていただきたい。そして、一刻も早く核兵器禁止条約の締約国となり、核兵器廃絶に向けた議論の共通基盤の形成に尽力するために、まずは本年11月に開催される第2回締約国会議にオブザーバー参加していただきたい。また、平均年齢が85歳を超え、心身に悪影響を及ぼす放射線により、生活面で様々な苦しみを抱える多くの被爆者の苦悩に寄り添い、被爆者支援策を充実することを強く求めます。

本日、被爆78周年の平和記念式典に当たり、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げるとともに、核兵器廃絶とその先にある世界恒久平和の実現に向け、被爆地長崎、そして思いを同じくする世界の人々と共に力を尽くすことを誓います。
                         令和5年(2023年)8月6日
                             広島市長 松井 一實