憲法解釈変更の閣議決定で集団的自衛権の行使容認へ踏み切ろうとしている安倍首相の姿勢に、野党が批判を強めています。
集団的自衛権行使の解釈改憲は憲法9条の形骸化につながるとの主張に対して、首相は 恣意的な解釈拡大を否定していますが、連立を組む与党の公明党にも慎重論は根強くあることはご存知の通りです。
民主党、結いの党、共産党、社民党などの有志議員は20日、解釈変更に反対する勉強会を立ち上げてました。そして同日、阪田雅裕元内閣法制局長官を招いて国会内で初会合・勉強会を開きました。
会の名称は「集団的自衛権を考える議員と市民の勉強会」で、メンバーは約20人です。
以下に共同通信の記事と、藤末民主党参院議員がBLOGOSに掲載した「政府の憲法9条解釈」と題する阪田氏の講演レジメを紹介します。
講演レジメの原文はBLOGOSのバックナンバーでご覧になれます。
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【集団的自衛権】 憲法9条形骸化に懸念 解釈改憲路線に批判
共同通信 2014年3月1日
憲法解釈変更の閣議決定で集団的自衛権の行使容認へ踏み切ろうとしている安倍晋三首相の姿勢に、野党が批判を強めている。憲法が国家権力に制約をかける「立憲主義」に反し、解釈改憲で憲法9条の形骸化につながるとの主張だ。首相は 恣意 (しい) 的な解釈拡大を否定するが、連立を組む公明党にも慎重論は根強い。
「集団的自衛権の行使容認は、自衛隊が海外で武力行使することになる。大転換だ」。民主党の岡田克也元代表は20日の衆院予算委員会で、解釈変更を閣議決定する前に国会で議論を尽くすよう迫った。だが首相は「閣議決定で初めて案が確定し、その案を国会で議論してもらう」と述べ、要求を突っぱねた。
野党側は、首相が12日の予算委で解釈変更をめぐり「私が責任を持っている」と答弁したことも危険視している。首相は「変更して何でもできるわけではない」と懸念の 払拭 (ふっしょく) に努めるが、反発は収まる気配はない。
民主党や結いの党、共産党、社民党などの有志議員約20人は20日、解釈変更に反対する勉強会を立ち上げ、阪田雅裕元内閣法制局長官を招いて国会内で初会合を開いた。阪田氏が「解釈改憲で集団的自衛権を行使できるのならば憲法9条の意味はない。 こんなことが許されるなら立法府なんて要らない 」と指摘すると、参加者は「首相の暴走をストップしよう」と気勢を上げた。
一方、解釈変更の閣議決定では公明党の対応が焦点となる。井上義久幹事長は「真正面から否定しているわけではない」と柔軟な姿勢。だが山口那津男代表は「国の最高規範を変更することには慎重でなければならない」と首相をけん制しており、与党内調整は難航しそうだ。
「政府の憲法9条解釈」 元内閣法制局長官 阪田雅裕弁護士講演
藤末健三※ BLOGOS 2014年2月20日
※ 民主党参院議員
本日は超党派の「集団的自衛権を考える議員と市民の勉強会」を開催しました。
藤末は集団的自衛権の行使容認を政府の憲法解釈変更により行うことについて、もっと世論を盛り上げたいと考えており本勉強会の発起人となっています。
本日は阪田元法制局長官のお話をお聞きしました。
阪田元長官は大蔵省に入省され内閣法制局長官(大臣と同じ地位)までなられた方です。そのような経歴をお持ちの方が講師を受けて頂けたことは大きな意味があります。
概要は以下のとおりです。
まず「戦争の放棄」については日本国憲法9条だけでなく。不戦条約や国連憲章にも見られます。
戦争の放棄
憲法第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を途するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。
不戦条約(1929年発効)
第1條
締約国ハ国際紛争解決ノ為争イニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トセテノ戦争ヲ放棄スルコトヲ其ノ名ニ於テ厳粛ニ宣ス
第2條
締約国ハ相互間二起コルコトアルベキ一切ノ紛争又ハ紛議ハ其ノ性質又ハ起因ノ如何ヲ問ハズ平和的手段ニ依ルノ外之ガ處理又ハ解決ヲ求メザルコトヲ約ス
国連憲章
第2条[原則]
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当たっては、次の原則に従って行動しなければならない1
1,2 略
3 すぺての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によ.って国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
自衛隊は、「国民の生命・財産等を守るための必要最小限度の実力」として位置づけられます。
また、自衛権発動の三要件は、
① わが国に対する急迫不正の侵害があること
② この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
③ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
となります。
日本政府は、集団的自衛権(right of collective self-defense)を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」としている。
集団的自衛権は、国際連合憲章第51条に規定されている。しかしながら、国連憲章はその定義について明確には規定していない。
(国連憲章) 第51条〔自衛権〕
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
憲法第9条の解釈変更が許されない理由
9条の解釈変更はなぜ許されないか
1.正当な法的理論の有無(政策の当否とは異次元)
2.9条の空文化(規範性の喪失)
3.立憲主義と法の支配の否定
4.国会での議論の積み重ね(議会制民主主義の意味)
5.デュープロセス(正規の改正手続)の存在
憲法第98条(1項略)
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
(講演レジメ 以上)
阪田先生に教えていただいたことを本に、これから国会で議論を深めていきます。