安倍首相は5日の参院予算委で、集団的自衛権の行使を容認するための解釈改憲に向けて、自衛隊の武力行使を限定した「自衛権発動の」の拡大解釈を検討していることを明らかにしました。
自衛権発動の三要件は、主権国家としての固有の自衛権を否定することはできないことと憲法9条とを整合させて、どのような条件があれば行使できるのかについて明らかにしたものです。
この原則は、数学の定理のように誰が見ても否定のしようがないほどに自明なものであって、首相の私的懇談会の北岡副座長も先の記者会見で、集団的自衛権の行使を可能にするための5つの要件を、報告書に盛り込むことを明らかにしたときにも、自衛権発動の三要件は「変更できない」と述べ、その矛盾を乗り越えられないことを告白しました※。
さすがに学者としての矜持が最後の一線で踏みとどまらせたものと思われます。
※ 2014年2月24日「自衛権発動の3要件は変更できない 集団的自衛権行使の矛盾]
それをこともあろうに礒崎首相補佐官あたりの検討で、その枠を踏み越えようとするなどは正気の沙汰ではありません。仮に何かの見解をまとめてみたところで、たちまち破綻することは目に見えています。
そんなことを公然と言ってはばからない首相は、一体どのような思考回路になっているのか、ヒトラーが留まるところを知らずに暴走した史実に思いが及んでしまいます。
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自衛権3要件 拡大検討 首相表明で揺らぐ専守防衛
東京新聞 2014年3月6日
安倍晋三首相は五日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使を容認するための解釈改憲に向けて、自衛隊の武力行使を限定した「自衛権発動の三要件」の拡大解釈を検討していると明らかにした。専守防衛の基本方針を具体化した三要件が変更されれば、憲法の平和主義の理念は大きく揺らぐ。 (後藤孝好)
Q 三要件って何?
A 他国から攻撃を受けた際、自国を守るための武力行使を抑制的に認めた憲法解釈だ。
(1)わが国に対する急迫不正の侵害がある
(2)これを排除するために他の適当な手段がない
(3)必要最小限度の実力行使にとどまる
-の三つを満たす場合しか、武力行使ができない。
Q いつからあるのか。
A 一九六八年、当時の内閣法制局長官が国会答弁で、憲法に基づいた自衛権の範囲の政府解釈として三要件を示した。その後の歴代政権も長年、解釈を維持してきた。
Q 集団的自衛権との関係は。
A 自分の国ではなく友好国が攻撃された時、一緒に武力行使する集団的自衛権は「わが国に対する急迫不正の侵害」には当たらず、「必要最小限度の実力行使」も超えているとして、憲法上行使が禁じられていると歴代政権は解釈してきた。
Q 首相はどこを変えようとしているのか。
A 首相は参院予算委で「『わが国に対する急迫不正の侵害』に至らなくても、事実上、わが国の生存権に大きな影響があるのではないかということも議論している」と指摘した。礒崎(いそざき)陽輔首相補佐官も五日の討論会で「必要最小限に入る集団的自衛権は何か、今、検討している」と表明した。
「急迫不正の侵害」の対象を「わが国または密接な関係にある国」などとして他国への攻撃でも日本の武力行使を容認し、「必要最小限度の実力行使」に集団的自衛権の行使も含めようとしているようだ。
Q 大きな方針転換になる。
A 拡大解釈で武力行使のハードルが下がれば、自衛隊が海外の紛争地に出向いて、なし崩し的に戦闘に参加することにもなりかねない。