2014年3月7日金曜日

信濃毎日が安保懇を批判 阪田元法制局長官も政府を批判

 安倍首相集団的自衛権の行使容認に向け4月に出るといわれている安保有識者懇談会報告書を口実にしようとしていますが、信濃毎日新聞は6日の社説で、その有識者懇談会を痛烈に批判しました。
 曰く、
 『懇談会は、行使が許されるかどうかを論じるのではなく、容認を前提にしたものであるから、報告書が出ても解釈変更の根拠にはならない。2008年に第一次安倍内閣の依頼を受けて、ほぼ同じメンバーで行使容認の報告書をまとめた経緯がある。
 政府報告書を受けた後に議論すると言いながら、既に秋の臨時国会で自衛隊法や周辺事態法など10本超の法律を改めようとしており、容認ありきで進めている
 そもそも私的懇談会のメンバーは、首相が意のままに集めたものであって、公正かつ均衡のとれた構成とは程遠い。
 懇談会はもともと、話し合いによって何らかの結論を出したり、方向付けをしたりする場ではない。報告書に盛られるのは、懇談会のメンバーの意見であり、一つの考え方にすぎない
 政権にとって都合のいい顔触れを集め、その提言を「錦の御旗」に憲法解釈を変えるとすれば、自作自演のようなものだ。
という具合です。首相はこれに対して何一つ反論できない筈です。(^○^)
 
 また、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めようとする動きを厳しく批判している内閣法制局の阪田雅裕・元長官が6日、日本記者クラブで会見し、安倍政権を改めて批判しました。
 行使を認める解釈の変更「解釈の域を超えている」とし、「内閣法制局理屈をしっかりと政府に申し上げることができるかどうかが全てで、そこが失われたら、政府の使い走りになる」と述べました。
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(社説)安保をただす 懇談会報告書 容認の根拠にならない 
信濃毎日新聞 2014年3月6日
 安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認に向け、4月にも有識者懇談会が報告書を提出する。
  これを受けて政府内で議論し、与党とも協議して憲法解釈を改める―。首相は国会で、そう説明した。6月下旬までの今国会中にも閣議決定する構えだ。そのため報告書にことさら重みを持たせようとしているのではないか。
  懇談会は、首相の私的諮問機関だ。行使が許されるかどうかを論じるのではなく、容認を前提にしている。報告書が出ても、解釈変更の根拠にはならない。
    <容認へ続く地ならし>
  懇談会が解釈変更を提言するのは既定路線だ。ほぼ同じメンバーで2008年に行使容認の報告書をまとめた経緯がある。第2次安倍政権で再び発足し、昨年2月の初会合で早々と容認の基本方針を確認していた。
  座長代理を務める北岡伸一国際大学長は先ごろ、講演で報告書の骨子を公表した。
  集団的自衛権を行使する際の条件として▽放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合▽同盟国や友好国など連携相手から明示的な要請があった場合―など5点を挙げている。
  さらに、日本への攻撃を排除する「個別的自衛権」、国連平和維持活動(PKO)など国連憲章に基づく「集団安全保障」についても自衛隊の活動範囲を広げる方向で見直す方針だ。
  これに呼応するように、政府は秋の臨時国会で自衛隊法や周辺事態法など10本超の法律を改めようと調整に入った。報告書を受けた後に議論すると言いながら、容認ありきの姿勢が鮮明だ。
    <自作自演は通らない>
  私的諮問機関とはどういうものか、確認しておきたい。
  政府の指針は、行政運営の参考にするための意見交換や懇談の場と位置付けている。法令に基づく審議会などとは違い、首相らの決裁で設けることができる。
  首相は国会で、報告書について「結論が出た段階で国会に要求されれば説明する義務がある」と述べている。しかし、懇談会はもともと、話し合いによって何らかの結論を出したり、方向付けをしたりする場ではない。
  報告書に盛られるのは、懇談会のメンバーの意見であり、一つの考え方にすぎない。
  懇談会は、顔触れをどうするかの決まりもないため、意のままに集められる。政府の指針で「公正かつ均衡のとれた構成になるよう留意する」ことになっている審議会とは、この点も異なる。
  今回、集団的自衛権の行使について賛否双方の立場から意見を交わしているならまだしも、そうではない。著書で容認を主張するなど、首相と考え方の近い人たちがそろっている。
  行使について歴代政府は、憲法9条の下で許容される必要最少限度を超えるとしてきた。憲法解釈上、容認はあり得ないとする専門家も多い。
  政権にとって都合のいい顔触れを集め、その提言を「錦の御旗」に憲法解釈を変えるとすれば、自作自演のようなものだ。
  国会で首相は、懇談会での議論を紹介する形で質疑に応じる場面が目立つ。アフガニスタン戦争を例に「実際に戦争に参加するのではなく、そこに医薬品や弾薬を運ぶことができるかどうかを議論している」といった具合だ。
  憲法との関係では「自衛権自体に9条の制約がある中、集団的自衛権についても(制約が)かかるとの議論が主流になっている」と述べている。といって、遠く離れた海外での武力行使の可能性が全面的に消えるものではない。
  懇談会の議論を引き合いに出すことで正面からの議論を避けるとともに、行使容認を限定的なものと印象付けたいのだろう。
    <議論するというなら>
  私的諮問機関を利用するやり方は、集団的自衛権に限らない。事実上の禁輸政策である武器輸出三原則の見直しも同じだ。昨年、閣議決定した国家安全保障戦略に見直し方針を盛り込み、既に新たな原則案を検討している。
  戦略は、集団的自衛権とは別の懇談会の議論を基に3カ月ほどでまとめた。国民や国会を置き去りにして重大な政策転換が進められようとしている。
  集団的自衛権の行使容認、三原則見直しともに、世論調査では反対が多数を占める。懇談会の考え方と民意との隔たりは大きい。
  首相は、集団的自衛権について「国民的な理解が深まっていくことも必要だ」とする。閣議決定する前に国会論議に応じる考えも表明している。
  政府の一存ではなく、反対意見も聞いた上で是非を判断するのは当然だ。野党から特別委員会の設置を求める声も出ている。政府与党は、議論を尽くすための場をきちんと整えなくてはならない。
 
法制局元長官、再び政権批判 憲法解釈変更に反対
朝日新聞 2014年3月6日
 内閣法制局の阪田雅裕・元長官が6日、都内の日本記者クラブで会見し、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めようとする安倍政権を改めて批判した。「(改憲)手続きが面倒くさいから解釈(変更)というのは憲政の王道では決してない」と述べ、国民投票を経る憲法改正で臨むべきだとの考えを強調した。
 
 阪田氏は行使を認める解釈の変更を「解釈の域を超えている。無視に近い」と批判。海外での自衛隊の武力行使につながるおそれもあり、「大きな転換で国民の覚悟もいる」と述べた。
 「(内閣法制局は)理屈をしっかりと申し上げることができるかどうかが全てだ。そこが失われたら、法制局が国会でなにを言おうと『政府の使い走りをやっているだけだ』と見られてしまう」とも述べ、解釈変更に関わることで内閣法制局への信頼が損なわれかねないとの懸念を示した。