政府は日韓関係の改善に向けた糸口を探らせるべく、1993年の河野談話を見直さないということを手土産にして、斎木外務次官を12、13日の予定で韓国へ派遣しました。
しかし1日目の趙太庸(チョテヨン)外務第一次官らとの会談の結果、当日予定されていた歓迎夕食会は中止となり、斎木氏はそのまま日帰りしました。
韓国の外務省報道官は13日、菅官房長官が日本軍が従軍慰安婦の強制連行に関与しなかったと述べたことに対して、「河野談話を継承すると言いながら、日本軍と官憲の強制動員への関与を否定するのは、被害者の心に再び傷を負わせ、国際社会を愚弄する振る舞いだ」と述べました。そして日本が求めている日韓、日米韓首脳会談については、「生産的な結果を出せる対話となることが重要だ。そのためには、日本側が歴史問題で誠意ある措置を早く取るべきだ」と強調しました。
事実、菅官房長官は10日の記者会見で、河野談話について「見直しは考えていない」とする一方で、「河野談話作成の経緯を元慰安婦の証言を中心にしっかり検証する」と強調しています。これでは「河野談話を継承する」ということの意味が、韓国ならずとも理解しかねます。
韓国は例えば日米韓首脳会談についても、米大統領から直接頼まれるのであれば兎も角、そうした感覚でいる日本政府から言われても受け入れるつもりはないとしています。
帰国後 斎木次官が安倍首相に報告したところによれば、韓国側が歴史認識を巡る問題などで、日本が前向きな姿勢を示すべきだと主張したのに対し、日本側は前提条件をつけずに首脳会談を行うべきだという立場を伝えたということです。(これは勿論安倍首相の意向に沿ったものです)
しかし、それは朴槿恵大統領の就任祝いに駆けつけた麻生副総理が、帰国してから直ぐに靖国神社の春季例大祭に参拝したため、韓国から外相会議をキャンセルされたことに始まって、年末の総理の靖国参拝、ここに来ての韓国慰安婦証言の検証と、一貫して韓国を刺激してきた日本の態度としては、大いにムシが良い話ではないでしょうか。
「対話の門は常に開かれている」という安倍氏の言葉と同様に、です。
とても外交センスがあるとも思われない=相手国の気持ちが理解できないこの人たちに、一体、最も難しいといわれている近隣諸国との外交を任せられるのでしょうか。
元外交官の天木直人氏は、菅官房長官がそれまでの「慰安婦問題検証チームの設置」とは矛盾する、「河野談話の見直しはしない」の言辞を繰り返すようになったのは、メディアははっきりと書かないものの、米国から「見直すな」という注文がついたからだと述べています。
不本意ながら、アメリカの言うことだから渋々それに従うということでは、とても韓国との関係改善などは期待できません。
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首相 外務次官に日韓関係の改善を指示
NHK NEWS WEB 3月13日 18時29分
安倍総理大臣は、外務省の斎木事務次官から、12日、ソウルで行った韓国外務省高官との会談内容の報告を受けたうえで、今月下旬にオランダで開かれる国際会議に合わせて、日米韓3か国の首脳会談などが実現できないかも踏まえ、日韓関係の改善に向けて引き続き取り組むよう指示しました。
外務省の斎木事務次官は12日、ソウルで韓国外務省のチョ・テヨン第1次官と会談し、関係改善に向けて両国の懸案事項などについて意見を交わしており、13日午後、総理大臣官邸を訪れて、。
この中で斎木次官は、韓国側が歴史認識を巡る問題などで、日本が前向きな姿勢を示すべきだという従来の主張を繰り返したのに対し、日本側は前提条件をつけずに首脳会談を行うべきだという立場を伝えたことなどを報告しました。
これを受けて安倍総理大臣は、今月下旬にオランダで開かれる「核セキュリティーサミット」に合わせて、日米韓3か国や日韓の首脳会談が実現できないかも踏まえ、日韓関係の改善に向けて引き続き取り組むよう斎木次官に指示しました。
官房長官発言、河野談話と矛盾=首脳会談には日本の誠意必要-韓国
東京新聞 2014年3月13日
【ソウル時事】韓国外務省報道官は13日の記者会見で、菅義偉官房長官が従軍慰安婦の強制連行と軍の関与を否定する立場を示したことに対し、「河野談話を継承すると言いながら、談話が明らかにした日本軍と官憲の強制動員への関与を否定するのは、被害者の心に再び傷を負わせ、国連など国際社会を愚弄(ぐろう)する振る舞いだ」と反発した。
報道官は「日本政府が矛盾する発言をすぐにやめ、真意が何かを国際社会に率直に明らかにするよう求める」と述べた。
菅官房長官は12日の記者会見で、第1次安倍内閣当時の答弁書を引用し、慰安婦募集の際に強制はなく、軍が関与した証拠はないとの見解を示していた。
一方、報道官は日韓、日米韓首脳会談に関し「生産的な結果を出せる対話となることが重要だ。そのためには、日本側が歴史問題で誠意ある措置を早く取るべきだ」と改めて強調した。
菅氏「河野談話見直さず」 外務次官あす訪韓し伝達へ
東京新聞 2014年3月11日
政府は十日、斎木昭隆(さいきあきたか)外務次官を十二、十三両日に韓国へ派遣する方針を決めた。斎木氏は韓国の趙太庸(チョテヨン)外務第一次官らと会談し、日韓関係の改善に向けた糸口を探る。
斎木氏は、菅義偉(すがよしひで)官房長官が、従軍慰安婦問題をめぐり旧日本軍の関与と強制性を認めた一九九三年の河野洋平官房長官談話を見直さないと明言したのを受け、韓国に理解を求めるとみられる。
菅氏は十日の記者会見で河野談話について「見直しは考えていない」と発言した。一方、元慰安婦の証言を中心に、河野談話作成の経緯を検証するチームを政府内に新設することに関しては「決着した過去の問題が韓国政府から再び提起されている状況なので、しっかり検証する」と強調。国会から要請があれば、調査結果の提出に応じる考えを示した。
斎木氏の訪韓は昨年七月以来。米国はオバマ大統領の四月の日韓歴訪までに関係改善するよう両国に求めている。日本側には、三月下旬にオランダで開かれる核安全保障サミットに安倍晋三首相と朴槿恵(パククネ)大統領が出席するのに合わせ、日韓首脳会談の開催を期待する声がある。
河野談話、作成過程の文言調整検証へ 官房長官が意向
朝日新聞 2014年3月12日
菅義偉官房長官は12日の記者会見で、旧日本軍の慰安婦問題をめぐる1993年の河野官房長官談話について、当時の日韓両政府間で行われた可能性が指摘されている「文言調整」に焦点を当てて検証を進める考えを改めて示した。
談話作成に関わった石原信雄元官房副長官は2月の衆院予算委員会で、談話の根拠になった元慰安婦らの証言の裏付け調査をしなかったとし、談話の作成過程で韓国との間で文言の「すりあわせ」があった可能性を指摘。これを受けて菅氏が河野談話の作成過程の検証に言及していた。
菅氏は会見で「わたしが国会で質問されたのは(慰安婦問題)全体のことではなかった。河野談話について、石原さんの証言に対して質問されたので、それに対し答えたということだ」と主張。談話自体の見直しについては「河野談話を継承するという内閣の方針に変わりはない」と改めて否定した。
すべてはオバマ大統領訪日のための付け焼刃外交だ
天木直人 2014年03月12日
菅官房長官が10日の記者会見で、あらためて「河野談話の見直しはしない」と繰り返した。
なぜいまさらそのような発言をしたのか。
メディアははっきりと書かないが米国から「見直すな」という注文がついたからだ。
岸田外相が今ごろになってロシアのラブロフ外相と電話会談し、クリミアの住民投票に懸念を表し、ラブロフ外相から一蹴された。
きょう出発する谷内正太郎日本版NSC局長の訪ロはもはや意味はなくなったということだ。
なぜ急にロシアに厳しくなったのか。
米国から共同歩調を取るように求められたからだ。
きょうからワシントンでTPPの日米実務者協議が始まるという。
TPP閣僚会議が失敗に終わったばかりだというのに日米の実務者が何を話し合うというのか。
じつはこれはTPP協議ではなく日米二国間経済交渉であり、日本が譲歩する話し合いの場だ。
米国から圧力がかかっているのだ。
河野談話の見直し停止や、ラブロフ外相との時期外れの電話会談や、TPP日米実務者協議の再開は、すべてオバマ大統領訪日を乗り切るためである。
いまの安倍首相と外務省にとって米国との関係修復しか頭にない。
4月のオバマ大統領訪日を乗り切るためには何でも譲歩するということである(了)