インターネット上で、1月7日に、ノーム・チョムスキー氏や映画監督オリバー・ストーン氏、ノーベル平和賞受賞のマイレッド・マグワイア氏ら29人が呼びかけ人となって始めた、「辺野古への米軍普天間飛行場の代替施設建設の中止と普天間飛行場の即時返還を求める国際署名」※は、20日までに1万人を超えました。
※ 2014年1月9日「海外識者29人が『辺野古移設中止を』の声明」
一万人の世界の良識、それは戦後70年間も他国に駐留し続け、住民に不安を与え、珊瑚とジュゴンの住む美しい海をコンクリートで埋め尽くそうとしていることへの、非難にほかなりません。
署名者の中には沖縄に駐留経験のある元米軍人や現役海兵隊員も多く含まれていて、次のようなコメントを寄せています。
署名者の中には沖縄に駐留経験のある元米軍人や現役海兵隊員も多く含まれていて、次のようなコメントを寄せています。
「われわれが世界の警察である必要も、業者の懐を膨らませる必要もない」、「返還合意時に外国の占領を止めるべきであった」、「軍事基地の拡大は、より大きな問題を招く不道徳な解決策だ」 。
彼らも言っているとおり、今日、アメリカ軍を正義の軍隊と見たり、アメリカが引き起こしている戦争を正義の戦争と信じるような人は少数なのではないでしょうか。
またそれとは別に、植草一秀氏がウクライナ情勢に関するブログを発表しました。(ブログの原題は「消費税・国際情勢・金利高・株安が日本市場を襲う」)
彼は、
「ウクライナの政変は、ウクライナを西側陣営が自分たちに取り込もうとしたために生じたものであり、西側諸国は正当な政権交代であると見ているのに対して、ロシアは新たな政権をクーデター政権であるとして承認していない。
米欧はロシアを一方的に非難する見解を流布させているが、客観的、中立・公正の論評とはほど遠いもので、米国が善でロシアが悪という評価は、あまりに表層的である。
米国の産軍複合体産業は年商60兆円の規模を有し、軍事産業だけで20兆円を超える規模である。この産業にとって、戦争の創出は死活問題であり、10~15年に一度は大規模戦争を起す必要がある」
と述べています。
いつもながらアメリカがリードし、日本の政府やメディアも一斉に追随している、「西側」の論調には決して惑わされていない、冷静で怜悧な視点です。
以下に、辺野古反対署名の記事と、植草氏のブログを紹介します。
(関係記事)
2014年3月19日「ウクライナ・クリミア問題 ロシアは何も悪くない」
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辺野古反対署名1万人超 元在沖米兵も賛同
沖縄タイムス 2014年3月22日
【平安名純代・米国特約記者】世界の有識者らが名護市辺野古に予定されている米軍普天間飛行場の代替施設建設の中止と普天間の即時返還を求め、1月末からインターネット上で始めた署名が20日までに1万人を超えた。オバマ大統領と安倍晋三首相に訴えを要請する署名とともに、沖縄に駐留経験のある元米軍人や現役海兵隊員らもコメントを寄せている。
沖縄に駐留経験を持つニューメキシコ州在住の男性は、「だらしなく酔っぱらった『醜いアメリカ人』たちの行動をたくさん見た」と語り、「われわれが世界の警察である必要も、業者の懐を膨らませる必要もない」と地域の安定維持のために軍事力は必要性との主張を否定し、辺野古反対を訴えた。
本土復帰の1972年に沖縄に駐留したノースカロライナ州の男性は、「返還合意に地元の所有権の回復も含まれるべきだった」とし、「外国の占領を継続するのは、不当で賢明ではない」と指摘。
イリノイ州在住の現役の米海兵隊員は、「戦争は不道徳であると考え、兵役拒否の手続きを申請中だ」と自身の変化を述べ、「軍事基地の拡大は、より大きな問題を招く不道徳な解決策だ」と軍事拡張を否定した。
署名は、1月7日に映画監督オリバー・ストーンやマイケル・ムーア、言語哲学者ノーム・チョムスキーやノーベル平和賞受賞者マイレッド・マグワイアら29人の世界の識者・文化人らが発表した声明に賛同するもので、共に行動することを呼び掛けている。
ウクライナ情勢について(原題:消費税・国際情勢・金利高・株安が日本市場を襲う)
植草一秀の『知られざる真実』 2014年3月21日
ウクライナでの政変を契機に東西の緊張が拡大し、これが2014年の世界経済に重大な影響を与える。そのリスクが高まりつつある。
安倍晋三政権はコウモリの対応を続けているが、最終的に、どちらの陣営につくのかの態度表明を迫られる。最終的に安倍政権は対米隷属の道を選択する。日ロ問題進展の道は断たれることになる。本来、日本は「是々非々」=「自主独立外交」の道を選択するべきである。日本の危うさが深刻化することになるだろう。
ウクライナはロシアにとっての生命線である。冷戦終結後、旧東側世界に属していた諸国がNATOに加盟した。東西冷戦の象徴とも言える二つの軍事同盟がNATO(北大西洋条約機構)とワルシャワ条約機構であった。
ところが、冷戦終結に伴い、ワルシャワ条約機構は1991年7月に解散された。そして、旧東側陣営のブルガリア、ルーマニア、東ドイツ、ハンガリー、ポーランド、チェコ、アルバニアの各国が順次、NATOに加盟した。EUも拡大され、旧ソ連陣営は縮小の一途を辿ってきた。
その中心国であるロシアにとって、ウクライナは最重要の「最後の砦」であった。このウクライナの西側陣営への取り込みが積極化した。ウクライナ内部で昨年末から反政府デモの活動が拡大し、これが大きな混乱となって、ウクライナの政変が生じた。
西側諸国は正当な政権交代であると評価するが、ロシアは新たな政権をクーデター政権として承認していない。ウクライナの領土であるクリミア半島は、歴史的な地政学上の係争地であり、ロシアにとっての生命線でもある。
ロシアはウクライナ情勢の変化を先読みして、クリミア半島の喪失を避けるために準備を進めてきた。その延長上にクリミアでの住民投票およびロシアへの帰属決定という電光石火の対応があった。
米欧の報道ではロシアを一方的に非難する見解が流布されているが、客観的、中立・公正の論評とはほど遠い。もちろん、ロシアが正しく米欧が間違っているということではないが、問題の背景に各国の「核心的利益」が関わっているという現実を見落とすことはできない。
ウクライナにおける抗議デモ活動が拡大して死傷者が出る混乱が生じたが、この混乱がデモ隊による自作自演のものであったとの説も有力視されている。
米国は世界中でデモ活動=テロ活動を画策、支援して、政権転覆を図ってきた歴史事実を背負っている。米国が善でロシアが悪という評価が、あまりに表層的であることは、世界の識者が熟知するところである。
これまでの動きを見る限り、ロシアのプーチン大統領の策動が、オバマ大統領の一歩も二歩も先を行くものである。国連の安全保障理事会は常任理事国に拒否権が付与されているため、第二次世界大戦の戦勝国である常任理事国相互の対立事案では、決定を下すことができない。
ウクライナはNATOにも加盟していないから、西側諸国がウクライナに介入することもできないわけである。
問題は、ウクライナ問題がくすぶり、これが東西の軍事衝突につながるリスクが存在することだ。ロシアはロシアにとっての生命線であるクリミアを確保することを優先した。米欧はロシアの行動を非難するが、有効な方策を示し得ていない。
経済制裁を提唱しているが、EU諸国の経済はウクライナ経由の天然ガスに依存しており、経済制裁強化は逆にEU経済を大混乱に陥らせる原因になる。さらに、ウクライナ国内では、ロシア語系住民が多数勢力である東側地域で、クリミア同様にロシアへの帰属を求める声が根強く存在する。ウクライナ東部地域でクリミアと同様の動きが生じる場合、ウクライナ国内で内乱状態に移行するリスクが存在する。
米国の産軍複合体産業は年商60兆円の規模を有する。軍事産業だけで20兆円を超える規模である。米国最大の産業は産軍複合体産業なのである。この産業にとって、戦争の創出は死活問題である。10~15年に一度は、大規模戦争が必要なのである。だから、米国は世界中で、人為的に戦争を創作してきた。
冷戦終焉後は、戦争を創作する大義名分を見出すのが困難になっている。そのなかで、ブッシュ・ジュニアが提示した、新たな戦争の大義名分が「テロとの戦い」であった。しかし、これも、仕組むのがなかなか難しくなっている。
(以下は有料のため非公開)