日本ペンクラブが17日、児童ポルノ禁止法改正を名目とした言論表現規制に反対する声明を出しました。
表現の自由を著しく侵害する惧れのある、問題含みの「児童ポルノ禁止法改正案」は政府提出でなく、自民党政調会長の高市早苗衆院議員らによる議員立法です。
この改正案は「単純所持の禁止」などをめぐって長らく議論が続き、先の通常国会では自民党法務部会に差し戻されて継続審議になりました。
満を持して会期の長いこの通常国会で、法案成立への動きが出てくるといわれています。
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日本ペンクラブ、児童ポルノ禁止法改定案に反対声明
漫画・アニメ対象は「表現の自由を著しく侵害」
ITメディア 2014年3月18日
(概要)
日本ペンクラブは、児童ポルノ禁止法改定案に反対する声明を発表した。「漫画やアニメを取り締まりの対象とすることは、表現の自由を著しく侵害する」と指摘している。
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日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は3月17日、児童ポルノ禁止法改定案に反対する声明を発表した。「漫画やアニメを取り締まりの対象とすることは、本来守られるべき表現の自由を著しく侵害し、ひいては表現行為やその内容の多様性を失わせる」と指摘。「児童ポルノ禁止法改正を名目とした言論表現規制に反対する」としている。
児童ポルノ禁止法改定案は、自民・公明・日本維新の会の3党が昨年の通常国会に共同で提出し、継続審議中。写真やデジタル画像など児童ポルノの所持自体を禁止する「単純所持の禁止」導入や、漫画やアニメ、CGなどと性犯罪などとの関連性を「調査研究」するよう政府に求め、施行から3年後に「必要な措置」をとるといった内容が含まれている。
ペンクラブは、単純所持の禁止、罰則化についても、「報道・出版への圧迫をなお一層加速させるもの」で、「表現活動に携わる私たちに強い危機感を抱かせる」と警戒する。また、児童ポルノから子どもたちを守ることは「現行法でも可能」とし、改正案は「規制基準があいまいなまま規制対象を拡大する」ものだと指摘する。
「親が子どもの入浴写真を成長の記録として所持することすらも法に触れかねない社会へと転ずることが、果たして子どもたちに良い影響をもたらすのでしょうか」とペンクラブは問題提起。「国会での冷静な議論と、良識ある結論を望む」としている。
日本ペンクラブ声明
児童ポルノ禁止法改正を名目とした言論表現規制に反対します
私たち日本ペンクラブは、児童ポルノ禁止法改正を名目とした言論表現規制に反対します。
政府は今回の改正に伴い、広範に漫画やアニメ全般を取り締まりの対象とする方針ですが、それは本来守られるべき表現の自由を著しく侵害し、ひいては表現行為やその内容の多様性を失わせるものであります。また、「単純所持」の禁止、販売や流通の関係者にまで及ぶ罰則規定とその厳罰化等は、近年の社会に不穏な影を落としている報道・出版への圧迫を尚一層加速させるものとして、表現活動に携わる私たちに強い危機感を抱かせます。
従来のルールを逸脱した表現物から子どもたちを守ることは、現行法制度によって可能であり、出版業界も自主規制のための取り組みを続けています。肝心の規制基準が曖昧なまま規制対象を一挙に拡大する今回の法改正によって、親が子どもの入浴写真を成長の記録として所持することすらも法に触れかねない社会へと転ずることが、果たして子どもたちに良い影響をもたらすのでしょうか。
自由に開かれているべき子どもたちの未来が言論表現規制によって不条理に抑圧されることがないよう、国会での冷静な議論と、見識ある結論を望みます。
2014年3月17日
一般社団法人日本ペンクラブ
会 長 浅田次郎
言論表現委員長 山田健太
「子どもの本」委員長 森 絵都
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