2014年3月18日火曜日

自民総務懇で集団的自衛権容認に慎重論続出 +

 自民党は17日、党の意思決定を担う総務会のメンバーによる総務懇談会を開き、安倍首相が目指す憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認問題を議論しました。
 自民党の「総務懇談会」には特別な意味があり、党を二分するような大きなテーマに限って開催する位置づけられ、2005年郵政民営化問題が議論されて以来です
 
 約2時間に及んだ議論では行使容認への賛否は分かれましたが、今国会中の閣議決定への慎重論が噴出し、結論を急がないよう求める声が大勢を占めました。
 慎重論「十分に話し合うべきだ」「本来は憲法改正が必要だ」、「集団的自衛権の行使が本当に必要かどうか、個別の事例ごとに厳しく検証して判断すべきだ」などとするものでした。
 行使容認をめぐる党内の対立が顕在化し、意見集約が難航する可能性も出てきました。
 
 それを受けて安倍首相は役員会で総裁直属機関を新設して党内論議を続ける方針を表明しましたが、もしも首相の好みのメンバーで私的懇談会の結論を検討するということになれば二の茶番になりますし、仮に執行部が総裁直属機関で議論を押し切っても、個別法案は総務会の了承がなければ党議決定にはならないので、そう簡単に行くものではありません。
 
+公明党山口代表の見解を追加
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集団的自衛権で自民9年ぶり総務懇談会 解釈見直し異論噴出 
産経新聞 2014年3月18日
 安倍晋三首相(自民党総裁)は17日の自民党役員会で、憲法解釈見直しによる集団的自衛権の行使容認に向け、総裁直属機関を新設して党内議論を進める方針を表明した。ただ、同日の党総務懇談会では今国会中の閣議決定への慎重論が噴出。執行部は反対派の牙城となりつつある総務会はガス抜きの場にとどめ、議論を総裁直属機関に一本化する構えだが、反対派からは関連法案の造反を明言する議員が出るなど、対立はエスカレートしている。(比護義則)
 
 総務懇談会の開催は平成17年4月の郵政民営化法案をめぐる議論以来、約9年ぶり。懇談会は約2時間続き、約20人が発言した。村上誠一郎元行政改革担当相は「解釈変更は憲政に汚点を残す。憲法改正で堂々と議論するのが筋だ」と解釈変更への反対を表明。「解釈変更に基づいて関連法が提出されるなら反対せざるを得ない」と明言した。
 
 第2次安倍内閣発足以降、高い支持率を背景に総務会で首相に対する不満は鳴りを潜めてきたが、この日の懇談会では「なぜ今なのか」「安定性、継続性、透明性を確保すべきだ」などの慎重論が目立った。
 石破茂幹事長ら首相サイドは、ベテラン議員の異論を総務懇談会で丁寧に聴取することで、高まる不満のガス抜きを図りたい考え。石破氏は同日の記者会見で「意見を述べ合うのが懇談会だ」と述べ、党内手続きによる政策決定とは無関係であることを強調した。
 
 ただ懇談会が発火点となり、派閥の勉強会などで慎重論が党内全体に広がる可能性は否定できない。岸田派はすでに派内に勉強会を立ち上げる方針を決定。行使容認に慎重姿勢の公明党と太いパイプを持つ大島理(ただ)森(もり)前副総裁率いる大島派も20日に勉強会を開催する。
 
 憲法解釈変更自体は内閣の判断で可能だが、それに基づく自衛隊法の改正などの関連法案は国会での採決が必要となる。執行部が総裁直属機関で議論を押し切っても、個別法案は総務会の了承がなければ党議決定にはならず、反対派がこれを逆手にとって抵抗する事態も予想される。
 秋に予想される関連法案採決までを見据えれば、反対派の抵抗手段は事欠かないことになる。
 
 岸田派の古賀誠名誉会長は17日の横浜市内での講演で、集団的自衛権の解釈変更の閣議決定について「そういうルール違反、姑(こ)息(そく)なことは絶対やってはいけない」と牽(けん)制(せい)した上で、首相が憲法解釈をめぐり「最高責任者は私だ」と発言したことを「愚かな坊ちゃん的な考え方だ」と批判した。
 
 
集団的自衛権行使容認、与党に強い慎重論 自民懇談会
朝日新聞 2014年3月17日  
 集団的自衛権行使のための憲法解釈変更を今国会中に認めるのか。自民党が17日、約9年ぶりに開いた総務懇談会で、安倍晋三首相と与党との攻防が幕をあけた。首相は今国会中の解釈変更の閣議決定に強い意欲を示すが、憲法の「平和主義」の根幹にかかわるだけに、与党には慎重論が強い。
 
 自民党の「総務懇談会」には特別な意味がある。大きなテーマに限って開催する、という位置づけだが、前回は小泉政権下の2005年、郵政民営化問題が議論された。過去のテーマはいずれも解散・総選挙などの大きな政局に発展した。
 約2時間に及んだ議論では行使容認への賛否は分かれたが、結論を急がないよう求める声が大勢を占めた。この問題は戦後の歴代自民党が堅持してきた路線を大きく転換する。そうした認識が広く党内にあるからだ。懇談会では出席者から「この問題は憲法の『平和主義』に抵触する。慎重の上にも慎重にやらないといけない」と指摘が出た。
 
 
自民総務懇談会での発言要旨
時事通信 2014年3月17日
 自民党総務懇談会での出席者の発言要旨は次の通り。
 村上誠一郎氏 (集団的自衛権行使容認に向けた憲法解釈の変更について)見解が対立したら正面から憲法改正するのが筋だ。解釈変更は法の安定性を害する。(自衛隊法改正案などの)法案が出てきたら、議場で反対せざるを得ない。
 船田元氏 憲法解釈すら変更できないと政治が停滞する。現状を考えると解釈変更せざるを得ない。ただ、ケースはかなり限定しないといけない。地球の裏側(での行使)という話が出るようでは、国民が理解するのは難しい。
 野田毅氏 必要なら解釈を変えざるを得ないが、いろんな角度からのチェックが必要だ。なぜ今なのか、行使する地域はどこか、専門的な議論をしなければならない。
 衛藤征士郎氏 個別的自衛権だけで国を守れるのか。集団的自衛権が必要だ。
 金子一義氏 必要な政策でも有権者が理解できないと悪法になる。何をやりたいのか、具体例を示した方が有権者に分かりやすい。わが国憲法は平和憲法そのもので、行使が可能になっても制約を付けざるを得ない。
 小坂憲次氏 議院内閣制だから、内閣がどのような決定をするか(党側が)意見を述べる機会を確保するのも重要だ。党内議論なくして閣議決定に至ってはいけない。
 武見敬三氏 党公約の国家安全保障基本法を制定し、シビリアンコントロール(文民統制)を明確にすべきだ。
 溝手顕正氏 国民に丁寧に説明するのも大事だが、党内にも丁寧に説明すべきだ。
 
山口代表 解釈変更で行使容認に慎重
NHK NEWS WEB 2014年3月18日
公明党の山口代表は記者会見で、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認について、「否定的に捉えてきたのが政府の一貫した姿勢だった」と述べ、慎重な考えを重ねて示しました。
安倍総理大臣が目指している憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を巡っては、17日開かれた自民党の総務懇談会で、賛成する意見が出る一方で、「国民の支持が得られるまで時間をかけて議論すべきだ」といった指摘も出されました。
これについて、公明党の山口代表は記者会見で「自民党内でも、内外の理解を得るためのプロセスを踏もうという意見が出るのは当然だ」と述べました。
そのうえで、山口代表は「『自衛隊の存在は認めるが海外で武力を行使しない』というのがこれまでの憲法解釈の柱だ。重要な憲法規範の解釈を一内閣で変更するのは極めて慎重でなければならないと、否定的に捉えてきたのが、これまでの政府の一貫した姿勢だった」と述べ、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に慎重な考えを重ねて示しました。