2014年3月21日金曜日

思い込み政治の破綻

 
 首相は20日夜の記者会見で、集団的自衛権の行使容認問題に関し、自らが設置した安全保障に関する有識者懇談会で詰めの議論が行われていると説明し「期限ありきではない。懇談会の議論を待ちたい」と述べたということですが、20日付のBLOGOSの記事によれば、複数の報道機関が、安倍政権が集団的自衛権行使容認の解釈改憲の閣議決定を今国会でも見送る公算が強まった、と述べているということです。
 
 見送るのは公明党解釈改憲に慎重なためとしていますが、実際には自民党内部からの不協和音が大きいことが理由だということです。安倍政権はこれまで極端な官邸主導の政権運営をしてきましたが、党内からそれに対する不満が噴出して、ついに抑えきれなくなったようです。
 そのほか、「憲法解釈の見直しは憲法改正の必要性を失わせるとして危機感を募らせている改憲至上グループもいて、彼らも官邸の動きを牽制しているということです。それはそれで筋は通っていますが、恐るべき改憲勢力というしかありません。
 
 安倍氏は、当初から支持率の高い間に憲法「改正」などをやろうとして来たと言われます。なるほど彼は、官邸(や内閣)の気の合ったメンバーの力を借りて、一気呵成に「思い込み」の政策を実行することは出来ても、党内の意見集約して方針を決めるなどの理論的な作業はとても出来そうもありません。従ってその勢いがなくなれば、今後はこれまでのように主導権を発揮するのは難しいと見られます。
 
 党内をまとめる知性も能力も持たないままで、「思い込み」だけで一国の政治をしようとするのは危険なことです。またその「思い込み」を、「美しい日本」とか「日本を取り戻す」とか「積極的平和主義」とかの、意味の良く分からない言葉で粉飾して、押し通そうとするなどの浅薄な手法が長続きするものでもありません。
 
 憲法の解釈改憲を閣議決定で行うことなどは、もともとあってはならないことですが、それがこの度も挫折しそうであるならメデタイことです。
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安倍政権が集団的自衛権に関する
憲法解釈見直しを、昨年に引き続いて先送り  
ニュースの編集部 BLOGOS 2014年3月20日
 集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の見直しについて、安倍政権が今国会中の閣議決定を見送る公算が高まってきた。憲法解釈の見直しに慎重姿勢の公明党に配慮したというのが表向きの理由だが、実際には与党内部からの不協和音が大きいことが原因と考えられる。
 
 安倍政権では、集団的自衛権の行使を可能とするための憲法解釈について、今国会中に閣議決定する方針を掲げてきた。だが複数の報道によると、今国会中での閣議決定を見送る方向で調整が進んでいるという。
 このところ永田町では、公明党に配慮するというフレーズは、自民党内に不協和音が生じていることのサインと理解されることが多い。
 安倍政権は完全に官邸主導の政権運営であり、党内からの意見をあまり集約していない。官邸主導の決定に党内から不満が噴出し、軌道修正を迫られた時には、公明党に配慮したというフレーズを使うと何かと便利なのである。
 
 今回の憲法解釈見直しについては、旧宏池会を中心とする党内リベラル派からの反発が強いといわれている。宏池会は、池田勇人元首相を起源とする派閥で、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一といった各総理大臣を輩出している。現在は岸田派がその後継派閥となっており、現在の安倍政権では、岸田外務大臣、小野寺防衛大臣、林農林水産大臣などが同じ派閥に属している。また派閥は離脱したが、谷垣法務大臣も宏池会出身である。
 
 宏池会は、自民党最大派閥であった経世会と組み、主流派を形成することが多かったが、思想的には党内で最もリベラルといわれる。ただ現実問題としては、現在の安倍外交を支える外務大臣と防衛大臣が同派閥出身者であり、派閥として強固な政治理念があるわけではない。党内の意見を集約しない官邸に対するアンチテーゼとして、宏池会というカンバンが使われている側面が強い。
 このほか、憲法解釈の見直しは憲法改正の必要性を失わせるとして危機感を募らせている保守系議員や参議院の幹部なども官邸の動きを牽制する発言を行っている。
 
 つまり思想信条に関係なく、官邸の動きにクギを指しているわけであり、その背景には、通常国会終了後に予定されている内閣改造に向けた駆け引きがあると考えてよいだろう。ただ政界は一寸先は闇である。こうした動きが、倒閣運動にまで発展しないという保証はない。
 安倍氏は、あれほど熱意を持っていた集団的自衛権の行使容認について、昨年に引き続いて2度も先送りしたことになる。官邸が、以前のような主導権を確保するのが難しくなっているということだけは間違いないようだ。


集団的自衛権 今国会こだわらずに意見集約
NHK NEWS WEB 2014年3月21日
安倍総理大臣は、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を閣議決定する時期について、「『いつまでに』という結論、期限ありきではない」と述べていて、自民・公明両党に慎重な議論を求める意見があることなども踏まえ、今の国会の会期中にこだわらず、丁寧に意見集約を進めるものとみられます。
 
国会は、一般会計の総額が過去最大となる新年度・平成26年度予算が20日の参議院本会議で可決・成立し、後半国会では、集団的自衛権の行使容認を巡る議論が焦点となる見通しで、安倍総理大臣は、政府の有識者懇談会の報告書が提出されたあと、内閣法制局の意見を踏まえながら、与党側と調整したうえで、憲法解釈の変更を閣議決定する方針を示しています。
 
これを受けて、自民党は、来週、集団的自衛権などを議論する総裁直轄の新たな組織を設置することにしていますが、党内には、時間をかけて議論すべきだという意見のほか、行使が必要かどうか個別の事例ごとに厳しく検証して判断するよう求める意見もあります。
 
また、公明党は、山口代表が、20日、「国民生活で優先すべき課題は、ほかにいくつもある」と述べるなど、集団的自衛権の行使容認に慎重な姿勢を崩しておらず、19日には、自民党と対等に議論するために必要だとして、これまでの政府の憲法解釈の成り立ちなどを検証する勉強会を始めました。
 
こうしたなか、安倍総理大臣は、20日の記者会見で、憲法解釈の変更を閣議決定する時期について、「『いつまでに』という結論、期限ありきではなくて、まずは政府の有識者懇談会の議論を待ちたいと考えている」と述べました。
 
政府内では、今の国会の会期中に閣議決定すべきだという意見がある一方、当初、今月中とみられてきた有識者懇談会の報告書の提出時期を大型連休明けに先送りし、与党側との調整に時間をかける必要があるという意見も強まっていて、安倍総理大臣としては、今の国会の会期中の閣議決定にこだわらず、丁寧に意見集約を進めるものとみられます。