2014年3月5日水曜日

新聞労連が安倍政権の報道に対する弾圧行為に抗議

 琉球新報が石垣市長選告示日と同じ2月23日付で(、また沖縄タイムスは24日付で)、日本の南西諸島地域の防衛体制を強化するため、石垣市の2カ所が陸上自衛隊の部隊配備先として絞り込まれていると報じたことに関し小野寺防衛相は「報道の自由があるが、事実と違う内容で2日に投開票される石垣市長選に影響を及ぼすことは適当ではないして、琉球新報社と日本新聞協会に文書で抗議したことを28日の記者会見で明らかにしました。政府が新聞協会抗議するのは異例なことです
 
 それに対して、新聞労連は3月4日、「安倍政権と防衛省は報道に対する弾圧行為を撤回し謝罪せよ」とする声明を出しました。
 そのなかで、「琉球新報は独自の取材で現状を報じたのであり、それが事実と異なるならば政府として配備計画の現状や詳細を明らかにすればいいだけ」、「政府は弱者ではない。情報と決定権を握り、常日頃から情報を選択して公表している、さらに「政府が新聞協会へ抗議したことも許しがたい」、「政府が業界団体に申し入れれば、そこに参加している会社は言うことを聞くという発想の裏には、戦前のように政府が新聞業界を管理しようとする意図が読み取れる」、「新聞協会は政府の抗議を突き返すべきだ」、としています。
 
 そして反ナチズム運動を率い、ナチスによって1937年に拘束され、ドイツが敗戦するまで強制収容所に収容されていたルター派のマルチ・ニーメラー牧師の有名な言葉
 「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声を上げなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、・・・・ 。 彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、・・・・  そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声を上げる者は、誰一人残っていなかった」
 を引用して、もしも今回の事態を他人事として放置するならばいずれ新聞業界全体が弾圧の対象になるだろう」、と警告しています。そして年内にも予定されている特定秘密保護法の施行後であれば記者が逮捕され、新聞社が捜索を受けたのではないかとも述べています。
 
 それとは別に、3月4日付の北海道新聞は、安倍首相が特定秘密保護法へ反対する世論が高まった昨年12月以降、またもや全国紙や在京民放キー局幹部たちと夜に会食することが増えて、12月は5回、今年に入ってからも5回を数えるに至っていることを報じています
 勿論マスコミを懐柔しようという目的に他ならないのですが、それに安々と応じている幹部たちの態度は何んとも不明朗です。2月の国際ジャーナリスト組織の報告書で、日本における報道の自由度(政権との距離)が世界で59位と酷評される所以です。 
 
 以下に新聞労連の抗議声明と、関係の新聞記事を紹介します。
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安倍政権と防衛省は報道に対する弾圧行為を撤回し謝罪せよ
2014年3月4日
 日本新聞労働組合連合(新聞労連)
 中央執行委員長  日比野 敏陽 
 防衛省は琉球新報の記事について事実と異なるとして2月24日、琉球新報社と日本新聞協会に文書で抗議した。これは防衛省と安倍政権による報道への弾圧であるとともに、新聞業界を政府の管理下に置こうとする意図が明らかな行為である。極めて不当であり許しがたい。新聞労連は防衛省と安倍政権の不当な行為に対し断固抗議する。安倍政権と防衛省は琉球新報社および新聞協会への抗議を撤回し、愚かな行いについて深く反省し謝罪せよ。
 
 琉球新報は2月23日付紙面で陸上自衛隊の警備部隊配備先として石垣市の2カ所が候補地に挙がっていると報じた。防衛省は「事実と異なる」として琉球新報社と日本新聞協会に文書で抗議した。琉球新報には訂正も求めた。菅義偉官房長官は28日の記者会見で、23日が石垣市長選の告示日と重なっていたことから「選挙の公正性に影響を及ぼしかねない」と批判した。防衛省の報道官は会見で新聞協会に抗議したことについて「(他紙で)同種の報道が続き、地元でも大きな懸念が広がりかねないということもあった」と話した。
 
  政府が昨年、南西諸島の防衛体制強化として警備部隊新設の方針を明らかにして以来、配備先として石垣や宮古、奄美が有力視されている。これはすでにメディア各社が報じ、賛否両論の議論が起きている。部隊がどこに配備されるのか、政府は明らかにしないままだが各地元では切実な関心事になっている。こうした中、琉球新報は独自の取材で現状を報じたのであり、それが「事実と異なる」ならば政府として配備計画の現状や詳細を明らかにすればいいだけだ。
 
  菅官房長官や防衛省報道官の発言は、都合が悪い報道がなされたときに政府関係者が必ず口にしてきた言葉だ。「公正性」とは政府にとって都合の良いことであり、「地元でも大きな懸念が広がりかねない」というのは、情報コントロールができなくなることを恐れているだけである。政府は弱者ではない。情報と決定権を握り、常日頃から情報を選択して公表しているのにもかかわらず、自らの意に沿わない報道に対して被害者面することは犯罪的ですらある。
 
  政府が新聞協会へ抗議したことも許しがたい。新聞協会と各新聞社の関係に上下関係はない。政府が業界団体に申し入れれば、そこに参加している会社は言うことを聞くという発想の裏には、戦前のように政府が新聞業界を管理しようとする意図が読み取れる。私たち新聞労働者は今回の琉球新報に対する政府の対応を厳しく糾弾する。同時に、新聞協会と全国の新聞経営者にもこの事態を看過してはならないと訴える。新聞協会は政府の抗議を突き返すべきだ。
 
  「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声を上げなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声を上げなかった。私は社会民主主義ではなかったから。彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声を上げなかった。私は労働組合員ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声を上げる者は、誰一人残っていなかった」
 
  反ナチズム運動を率いたニーメラー牧師はこのように訴えた。今回、私たちが抗議するのは、この事件が琉球新報だけの問題ではないと考えるからだ。新聞協会や新聞経営者が今回の事態を前にして「うちは琉球新報ではないから」「沖縄ではないから」と放置すれば、いずれ新聞業界全体が弾圧の対象になるだろう。
 
  年内にも特定秘密保護法が施行されようとしている。施行後ならば記者が逮捕され、新聞社が捜索を受けたのではないか。そのような事態を招いてはならない。だからこそ、私たちはいま、声を上げなければならない。        
以上 
 
防衛省、琉球新報に抗議 陸自石垣配備記事
沖縄タイムス 2014年3月1日
【東京】小野寺五典防衛相は28日の記者会見で、石垣市の2カ所が陸上自衛隊の部隊配備先として絞り込まれていると県内で報じられたことに関し「報道の自由があるが、事実と違う内容なので抗議する」と述べ、琉球新報社と日本新聞協会に文書で抗議したことを明らかにした。防衛省によると文書は24日付で、琉球新報社には訂正も求めた。新聞協会への抗議は異例。
 防衛省が抗議した報道は、琉球新報が石垣市長選告示日と同じ2月23日付の1面トップ。沖縄タイムスは24日付1面で報じた。防衛省は南西諸島地域の防衛体制を強化するため、離島防衛を担当する部隊の配備先を選定中。
 
 小野寺氏は「石垣への陸上自衛隊部隊の配備についての報道がされたと承知をしているが、これは事実とは違う内容だ」と強調。2日に投開票される石垣市長選に触れた上で「間違った報道が選挙に影響を及ぼすことは適当ではないということで抗議した」と説明した。
 防衛省の辰己昌良報道官は新聞協会に送付した理由を「同種の報道が続き、地元でも大きな懸念が広がりかねないということもあった」と説明。防衛省は2紙の報道とも「事実と異なる」と主張し、「最初に報じた琉球新報社だけに抗議した」と回答した。
 琉球新報社の松元剛編集局次長は「十分な取材に基づいた報道であり、訂正の求めには応じられない。石垣市長選に関連付けたものでは全くなく、内容も特定の候補者を利するものになっていない」とコメント。防衛省が新聞協会に申し入れたことについては「釈然としない」とした。
 新聞協会の会長宛てには西正典事務次官名の申し入れが内容証明郵便で届いた。「今後適切な報道を強く要望する」との内容。担当者は「加盟社の報道にどうこう言う立場になく、協会に何を求めているのかが分からない。返信を含め、対応の予定はない」と話した。
 
 
新聞労連「報道への弾圧」と抗議 琉球新報社の報道めぐり、政府に
東京新聞 2014年3月4日
 沖縄県の琉球新報社の報道をめぐり、同社と日本新聞協会に防衛省が文書で抗議したことに対し、新聞労連は4日「報道への弾圧であり、極めて不当で許しがたい」とする声明を発表、安倍政権と防衛省に抗議の撤回と謝罪を求めた。
 琉球新報社は2月23日付朝刊で、同県石垣市の2カ所が陸上自衛隊の部隊配備先として絞り込まれていると報道。防衛省は事実と異なるとして翌24日に抗議した。琉球新報社には訂正も求めた。
 新聞労連は声明で「琉球新報社は独自の取材で現状を報じた。『事実と異なる』ならば政府として配備計画の現状や詳細を明らかにすればいいだけだ」と指摘した。(共同)
 
 
首相、報道関係者と会食盛ん 安全保障政策で懐柔? 公邸宿泊も増加
北海道新聞3月4日
 安倍晋三首相が全国紙や在京民放キー局幹部といった報道関係者と夜に会食することが増えてきた。首相官邸隣の公邸に自民党議員を招いたり、宿泊したりすることも急増。集団的自衛権の行使容認など肝いりの政策実現に向け、世論や党内の理解を得る狙いがあるようだ。 
 
 報道関係者との会合が増えたのは、国民の「知る権利」の侵害が懸念されるとして特定秘密保護法への世論の反対が高まり、国会審議が最終盤を迎えた昨年12月以降。それまでは月1、2回程度だったが、昨年12月は5回、今年に入ってからも5回を数える。 
 昨年は経済再生を最重点に掲げ、秋に消費税増税の決断を控えていたこともあり、夜の会食は財界人が中心。8月に5回、9月に3回だったが、今年に入ってからはまだ2回だ。 
 政府関係者は「集団的自衛権の行使容認など首相が目指す安全保障政策は、世論を二分する問題。首相はマスコミを懐柔しようと必死なのだろう」とみる。 
 
 首相が公邸に宿泊する日数も増えた。昨年8~9月は月1日だったが、いまは月10日を超えることも珍しくない。集団的自衛権を含めた安保政策などの国会答弁の勉強会を深夜まで行い、そのまま宿泊することも多い。