2014年3月25日火曜日

私的安保懇がようやくまともに 集団的自衛権行使を限定 

 首相の私的安保法制懇(座長=柳井俊二・元駐米大使)が4月にまとめる報告書の、中核となる集団的自衛権の行使を認める憲法解釈案で、「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」に限り、行使を認めるという限定的容認の考え方を採用することがわかりました。 
 これにより、外国領土での戦争に加わるといった典型的な集団的自衛権は容認対象から除外されることになります
 
 安保懇の北岡座長代理は2月21日の記者会見で、内閣法制局=内閣が基準としている自衛権発動の三要件※1は「変更できない」と述べ、その一方で集団的自衛権の行使を認める矛盾を乗り越えられないことを告白していました2
     1 個別自衛権発動の三要件
 ・急迫不正の侵害があること(急迫性、違法性)
 ・他にこれを排除して、国を防衛する手段がないこと(必要性)
 ・必要な限度にとどめること(相当性、均衡性)
      2  2014年2月24日自衛権発動の3要件は変更できない 集団的自衛権
行使の矛盾
 
 北岡氏は、「それでも集団的自衛権の行使を可能にするための5つの要件を報告書に盛り込む」となんとも支離滅裂な話をしたのですが、安保懇の中でそれではあまりにもみっともないということになったのでしょう、4月の報告書では、「放置すれば個別自衛権の発動に至る場合」には、集団的自衛権を行使することも可能とすることにしたようです。
 
 そうすることで、辛うじて個別自衛権発動の三要件との矛盾を回避しようという苦肉の策ですが、2月21日の支離滅裂な話に比べればはるかにまともなものになりました。
 
 そうまでして無法な集団的自衛権の行使にこだわる必要があるのか、というのが率直な思いですが、安倍首相の無理強いにも何とか応えようという発想なのでしょう。
 
 しかしソフトな形で提案してそれを国会で成立させてしまえば、その後はいくらでも拡大解釈して行使するという惧れは十二分にあります。
 従って限定した条件下でも行使は容認されるべきではありません。 
 
 因みに、「放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合」というのは、当初構想された集団的自衛権行使 の5要件※3 のうちの(2)の部分にあたるもので、この1要件にしようというものです。
 
 ※3 集団的自衛権行使 5要件
(1) 密接な関係にある国が攻撃された場合
(2) 放置すれば日本の安全に大きな影響が出る場合
(3) 当該国からの明示的な支援要請がある場合
(4) 第三国の領海通過では許可を得る
(5) 首相が総合的に判断して国会承認を受ける
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集団的自衛権、行使を限定…安保懇の憲法解釈案
読売新聞 2014年3月24日
 政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」(座長=柳井俊二・元駐米大使)が4月にまとめる報告書の中核となる集団的自衛権の行使を認める憲法解釈案で、「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」に限り、行使を認める限定的容認の考え方を採用することが23日、関係者の話でわかった。
 
 これにより、外国領土での戦争に加わるといった典型的な集団的自衛権は容認対象から除外されることになる。
 安保法制懇が第1次安倍内閣の諮問を受けて2008年にまとめた報告書では、集団的自衛権の行使を一般的に認め、個別の法律や政策判断で歯止めをかける立場を取っていた。新たな報告書で限定的容認の立場を取る背景には、憲法解釈見直しに慎重な公明党や世論の理解を得やすくしようという狙いがあるとみられる。
 現在の政府の憲法解釈では、自衛権の行使について、「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲内にとどまる」とし、日本への武力攻撃を排除する場合(個別的自衛権)に限定。これに対し、4月の報告書では、「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」に集団的自衛権を行使することも「必要最小限度の範囲内」に含まれると整理する。
 
 「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」という表現は、適用範囲を限定した周辺事態法と同じ内容だ。安保法制懇では、朝鮮半島有事などの周辺事態に加え、中東などから原油を輸送する海上交通路(シーレーン)も想定しているという。
 
 
 安保法制懇が第1次安倍内閣の諮問を受けて2008年にまとめた報告書では、集団的自衛権の行使を一般的に認め、個別の法律や政策判断で歯止めをかける立場を取っていた。新たな報告書で限定的容認の立場を取る背景には、憲法解釈見直しに慎重な公明党や世論の理解を得やすくしようという狙いがあるとみられる。
 現在の政府の憲法解釈では、自衛権の行使について、「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲内にとどまる」とし、日本への武力攻撃を排除する場合(個別的自衛権)に限定。これに対し、4月の報告書では、「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」に集団的自衛権を行使することも「必要最小限度の範囲内」に含まれると整理する。
 
 「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」という表現は、適用範囲を限定した周辺事態法と同じ内容だ。安保法制懇では、朝鮮半島有事などの周辺事態に加え、中東などから原油を輸送する海上交通路(シーレーン)も想定しているという。