憲法解釈の変更が閣議決定や国会の多数決で出来るのであれば、国会で多数さえ握れば、憲法が規定している改憲の発議要件や国民投票などによることなく、自由に実質改憲することができることになります。これは国会審議が先か、閣議決定が先かというような次元の問題ではありません。これほどの不合理が、これまで政権党のなかで野放しにされていました。
古賀誠・元自民党幹事長は8日のBSフジテレビで、「集団的自衛権をやるとしたら、憲法議論が必ず先なので、間違いがないようにしないといけない」と、正論を述べました。また自民党員がみんな「首相のポチ」になっているとも酷評しました。
古賀氏はその前には野田聖子総務会長に、「解釈改憲の閣議決定は間違いだ」と苦言を呈したといわれます。
自民党内でも、集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更をめぐり、首相に自制を求める声がようやく広がり始めました。
脇雅史参院幹事長は7日の記者会見で、解釈変更のための閣議決定を今国会中に行いたい意向の首相に、拙速を回避するよう求めました。
衛藤晟一首相補佐官が、首相の靖国神社参拝に「失望」を表明した米国を批判したことについても、党内には米国にそれが「首相の本心だと思われている」(幹部)とのいら立ちが募っています。
17日には党総務会メンバーが参加する総務懇談会が開かれ、集団的自衛権をめぐり討議しますが、総務会には首相の政権運営に批判的な村上誠一郎元行革担当相らがいます。
与党の公明党内にも「自民党は幅広い党。修復力がある」(幹部)と自民党内の空気の変化を歓迎する声があります。
一内閣の解釈の変更で実質改憲してしまう暴挙だけは、何とか党内の良識で抑えて欲しいものです。
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「集団的自衛権、憲法議論が先」 古賀・元自民幹事長
朝日新聞 2014年3月8日
■古賀誠・元自民党幹事長
国会審議を見ていると、安倍政権は急がなくていいのを急ぎすぎている。立ち止まる勇気が必要なのではないか。安全保障や外交と国の基本的な形について、わたしは非常に危機感を持っている。
安倍さん(首相)は非常に保守的な思想をお持ちだが、今一番優先順位の高いのは経済だ。経済に集中しているという姿勢が国民にわかるような誠実さ、緊張感が必要だ。集団的自衛権をやるとしたら、憲法議論が必ず先なので、間違いがないようにしないといけない。消費税や春闘など経済政策が仮にうまくいかなかったときに、国家の安全と安心に関わるところにすり替えていくという思いがあるとすれば、きわめて心配なことだ。(BSフジの番組で、集団的自衛権について問われ)
「みんな首相のポチになっている」 古賀元幹事長、自民党に苦言
産経新聞 2014年3月7日
古賀誠元自民党幹事長は7日夜のBSフジの報道番組で、安倍晋三首相の政権運営に関し「党の機能が果たされていない。『これが首相の思いだ』という錦の旗だけで、みんなが首相のポチさんになっている」と述べ、与党による内閣チェック機能が失われていると苦言を呈した。
古賀氏は、首相が集団的自衛権の行使容認に意欲を示していることについて「いま一番大事なのは経済だ。経済政策が仮にうまく転がらなかったとき、集団的自衛権や憲法など、国家の安全と安心に関わるところにすりかえていくとしたら心配だ」とも指摘。首相が政権浮揚のために集団的自衛権を利用する可能性があるとの見方を示した。
さらに「安倍政権で右傾化が進んでいるが、どう抑止していくかだ。自民党の保守本流の先生方に頑張ってもらいたい」と述べ、党内のリベラル派議員の“奮起”を促した。
拙速回避の声拡大=集団自衛権めぐり自民
時事通信 2014年3月8日
安倍晋三首相が意欲を示す集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更をめぐり、自民党内で首相に自制を求める声が広がり始めた。連立を組む公明党の慎重論に加え、首相の前のめりな姿勢への懸念が強まっているためだ。自民党内で首相批判が強まるようなら政権運営に響きかねず、執行部は丁寧に党内議論を進めていく考えだ。
「結論ありきではない。外交の基本方針に関わることだから、しっかり議論していく」。自民党の脇雅史参院幹事長は7日の記者会見でこう語り、解釈変更のための閣議決定を今国会中に行いたい意向の首相に拙速回避を求めた。
集団的自衛権の行使容認は、同党が大勝した2012年の衆院選、13年の参院選の公約だったこともあり、それ自体への反対意見は少ない。
ただ、党内には、首相周辺から軽率な発言が相次ぎ、国際的な「右傾化」批判を招いていることへの不満がある。衛藤晟一首相補佐官が動画サイトで、首相の靖国神社参拝に「失望」を表明した米国を批判したことについても、「首相の本心だと思われている」(幹部)とのいら立ちが募っている。
こうした中、17日には党総務会メンバーが参加する総務懇談会が開かれ、集団的自衛権をめぐり討議する。総務には首相の政権運営に批判的な村上誠一郎元行革担当相らが含まれ、議論が紛糾する可能性もある。
高村正彦副総裁は7日の党役員連絡会で「しっかり意思決定しなければいけないので、石破茂幹事長を中心にやっていただきたい」と述べ、党内調整に万全を期すよう求めた。今後、新たな組織も含めて意見調整の場を設ける方向で検討する。
一方、首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が4月に予定する提言を受け、与党内調整も始まるが、公明党内には「自民党は幅広い党。修復力がある」(幹部)と自民党内の空気の変化を歓迎する声がある。