2014年10月10日金曜日

財政健全化をドイツに見習うべきだ

 政府は財政の健全化を謳って4月に消費税率を8%にアップしましたが、その途端に目的を忘れたらしく、法人税率の引き下げが画策される一方で、来年度の予算は膨張の一途をたどっています。財政健全化というのは、単に消費税率アップの際の口実にされただけでした。
 こんな不健全なことを続けていたら、消費税を10%に上げようが15%に上げようが財政は健全化されません。30%近くまで上げてようやくバランスするといわれていますが、勿論庶民の生活はそれ以前に破綻します。
 
 本当に財政を健全化したいのなら、逆進性の高い消費税で庶民から収奪するのではなくて、担税能力のある高額所得者への累進課税や内部留保を膨らませている大企業から徴税するという、本来の形に戻すしかありません。
 
 政府は消費税10%へのアップの意図を隠さなくなりましたが、そのときは当然に食料品や生活必需品への軽減税率を導入すべきで、インボイス制が厄介とかというのは理由になりません。
 片や生活が掛かっているのですから、韓国その他のところで出来ていることが日本では出来ないということはありません。
 
 そしてかつて民主党が主張したように、官僚の天下り先(シロアリ)への10数兆円の国費の支出も当然やめるべきだし、使い切れない程の公共事業費を抑えるなど、何よりも先ず無駄使いをやめることです。
 
 ドイツは東西ドイツの合併後悪化していた財政を、苦節25年で健全化させました。
 高知新聞の社説を紹介します。
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【財政健全化】 少しはドイツに倣いたい  
高知新聞 2014年10月09日  
 東西冷戦を象徴したドイツの「ベルリンの壁」が1989年11月9日に崩壊して、来月で25年になる。 
 その翌年に東西ドイツを統一して誕生したドイツは、当初は統合に伴う財政負担に苦しんだが、2015年連邦政府予算は無借金で歳出を賄える見通しとなった。旧西ドイツ時代を含め久しぶりのことで、歳出削減などの取り組みが実を結んだ。
 
 対照的なのは日本だ。ことし4月に消費税率を5%から8%に引き上げても、財政健全化のめどは全く立っていない。先進国最悪の財政状況なのに、15年度政府予算の概算要求額は過去最大の規模になっている。  
 自民党の行政改革推進本部が概算要求の検証に乗り出すという。膨らんだ概算要求そのものが問題だけに、せめて歳出削減の道筋を示すことだ。 
 
 第2次大戦後、社会主義圏に属した旧東ドイツは、西ドイツと比べると社会資本、生産設備などの遅れが次第に目立つようになる。その東ドイツを編入した統一ドイツには増大する財政負担への懸念が存在した。  
 しかも新生のEU(欧州連合)は、加盟国に対し単年の財政赤字は国内総生産(GDP)比3%以内の規律を設定した。ドイツがこの基準を超える年もあったが、15年は新規国債発行に頼ることなく、自前の歳入で連邦予算を編成できるという。 
 日本の財務省がまとめた「各国の財政健全化の取り組み」と題する資料によると、ドイツは歳出は歳入の枠内という連邦基本法(憲法)の精神を守ろうとしている。特にこの4年間は財政健全化計画に沿って経費削減に取り組み、その一方では優遇税制見直しなどで税収増を図っている。
 
 経済好調という追い風があったにせよ、ドイツは財政改革を進めたことで単年の財政赤字はGDP比0・5%以内とする新しいEU財政基準もクリアできることになった。 
 日本の財政法も財政均衡をうたい、歳入不足を補うための赤字国債は認めていない。両国に法規定の違いはないのに、現実は大きく異なる。 
 
消費税10%でも  
 それを象徴するのが日本の財政悪化だ。国債、借入金、政府短期証券を合計した政府の借金は、13年度末に1024兆円を超えた。特別立法を制定することで例外的に認められる赤字国債の発行が常態化している。 
 過去に政府は財政健全化に向けた法律を制定したことがあり、安倍政権は基礎的財政収支を20年度に黒字化する目標を掲げている。 
 現状では目標達成はかなり厳しい。政府の経済財政諮問会議の試算によると、消費税を来年10月に10%に引き上げても、20年度の基礎的財政収支はなお11兆円の赤字になる。 
 歳出が増える背景には高齢化に伴う社会保障費の増加がある。それを踏まえながら財政健全化を進めるには歳出構造の改革が欠かせない。 
 時代の要請が眼中にないかのように見えるのが各省庁から集まった15年度予算の概算要求総額だ。14年度当初予算を5兆8千億円上回り、初めて100兆円の大台を突破した。 
 査定による減額を見越しての要求もあろうが、財政赤字への危機意識、歳出削減に対する問題意識が政府全体に欠けているのは否めない。 
 行政改革本部が膨らんだ歳出にメスを入れるのは当然のことだ。これとて構造改革の第一歩にすぎない。