2014年10月24日金曜日

中教審が道徳の教科化を答申

 安倍政権下で教育の右傾化が急ピッチで進められています。
 
 中教審は21日、現在は教科外活動の小中学校の道徳を、検定教科書を用い学習評価を行う正式な教科とすることを決め、下村文科相に答申しました。文科省は教科書作成の都合から2018年度の教科化を目指し、学習指導要領の改定や教科書検定基準の作成に入るということです。
 
 一応、中教審の答申という形になっていますが、文科省は既に道徳の教科化に賛成する委員で固めた有識者会議を設けて、検定教科書や評価導入を盛り込んだ報告書を作成しており、中教審が議論する以前から教科化の方向性が示されていたのでした。
 
 道徳教育をめぐっては、戦前「修身」による愛国心教育が行われ、国民を戦争に駆り立てたとの反省のもとに、第一次安倍政権が登場するまでは、歴代の内閣でも極めて抑制的に考えられてきました。
 今回も、特定の価値の押し付けにつながりかねない教科化やそのための検定教科書化には、当然文科省内や自民党内でも否定的意見がありましたが、愛国心教育で首相と気脈を通じる下村文科相が押し切ったということです。
 下村氏は安倍氏に優るとも劣らない右翼的思想の持ち主といわれ、それゆえに教育の「改革」にただならない意欲を示している安倍首相から、文科相に任命された筈でした。
 
 23日の地方紙社説は、一斉に教科化を懸念するタイトルを掲げました。
 
道徳の教科化 心を評価する危うさ       .東京新聞
道徳の教科化 多様な価値観育つのか         朝日新聞 
( ※ 朝日新聞のみ22日付) 
 琉球新報の社説を紹介します。
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(社説道徳の教科化 価値観押し付けを危惧する
琉球新報 2014年10月23日  
 中教審が「道徳」の教科化を答申した。国による価値観の押し付けにつながりかねない動きだ。
 答申は、現在は正式教科ではない小中学校の「道徳の時間」を教科として位置付け、検定教科書や評価制度を導入する内容だ。
  授業は原則として担任が行い、評価は数値ではなく記述式にするというが、子どもの内面に踏み込む分野をどう客観的に評価するのか。甚だ疑問であり、教育現場に混乱をもたらしかねないことを強く危惧する。
  道徳の教科化はもともと、教育改革に熱心な安倍晋三首相が強い意欲を示してきたものだ。
  教育基本法を改正し愛国心条項を盛り込んだ2006~07年の第1次安倍政権下の教育再生会議も道徳の教科化を提言したが、検定教科書や点数評価、教員免許などをめぐり中教審では慎重論が根強く、教科化は見送られていた。
  だが第2次安倍政権は発足間もない昨年1月に教育再生実行会議を設置。同会議は11年の大津市の中2いじめ自殺事件などを踏まえて議論し、いじめ対策と関連付ける形で道徳の教科化を同年2月に提言した経緯がある。
  さらに文科省は教科化に賛成する委員で固めた有識者会議を設け、検定教科書や評価導入を盛り込んだ報告書も作成していた。中教審が議論する前から教科化の方向性が示されていたのは明らかだ。
 
  特定の価値の押し付けにつながりかねない教科化やそのための検定教科書には自民党や文科省内でも否定的意見があった。だが愛国心教育で首相と気脈を通じる下村博文文科相が押し切っている。
  教科化は、戦前の「修身」の反省の上に立つ戦後日本の教育の重大な転換点となるはずだ。安倍政権は本年度内には教科書作成の基本となる学習指導要領を改定するという。愛国心教育を推進するための基盤づくりとして教科化を急いでいるとしか思えない。
  教科化に対する学校現場の不安は根強い。専門家からも「子どもは本心を隠して迎合した発言しかしなくなる」(教育評論家・尾木直樹氏)などの声がある中、教科化を進めることは間違っている。
  子どもたちの多様な価値観を養い、自ら物事を考えて社会で健やかに成長していくために学校教育に何が求められるのか。国民的な議論を喚起する中で、望ましい道徳教育の在り方を模索すべきだ。