日経新聞も産経新聞もひたすら安倍政権に肩入れし、その他の中央紙も政権批判の記事は先ず書きません。まともな政権批判の記事を書くのは、政党機関紙以外では日刊ゲンダイくらいのものです。
そんな中、英国経済紙フィナンシャルタイムズが、アベノミクスを辛辣に批判する記事を掲げました。
アベノミクスに第3の矢がないとは良く言われますが、英フィナンシャルタイムズは「 “通貨の下落”の1本しかなくその有効性はない。そのうえに“構造改革”がないので賃金は上昇せず、内需へのシフトも起きなかった」としています。
既に顕れ始めた円安による物価の上昇は、このさき急劇に進むと予想されています。
国会で、円安の副作用である株高の効用を問われた安倍首相は、投資家が潤えばやがて社会にも還元されるという趣旨の答弁をしましたが、それこそは空理空論で、かつての“1億総株主”と揶揄された時代とは異なって、景気が改善することもありません。
同紙は、かつての軍国主義への回顧こそが安倍氏の本当の関心であるとして、「2番目の矢が“軍国主義の復活”でないことを願う」と結んでいます。
昭和20年代には、戦争の実態は何も知らないまま、雑誌などに掲載される軍艦や航空機に憧れをもつ「軍国少年」が、少数ですが確かに居ました。その名残のような人物が立ち現れて、硬直した頭脳で国をそちらの方に引っ張るという時代錯誤は止めて欲しいものです。
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的を外すアベノミクス 「3本の矢」は1本のみ
英フィナンシャルタイムズ 2014年9月28日
8月中旬のお盆の時期、日本の人々は故郷に帰って祖先の霊に敬意を衷する。お盆は過去をじっくり振り返る時期だが、今年は目標へ突き進むことがいかに難しいかを思い起こすことになぅた。
4~6月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長となり、市場予想を大幅に下回った。純輸出はプラスだったが、輸入が減ったことが原因で、輸出が特に堅調だづたわけではない。
安倍晋三首相の「3本の矢」ば明らかに的を外している。理由はそもそも矢が3本ないことで、あるのはたった1本、通貨の下落のみだ。
これは過去には常に有効な公式だった。だが、もはやそうした効果はない。日本の製造業は生産拠点の多くを海外に移転させており、今後もその流れは続くだろう。さらに重要なのは、日本の製造業が優位性を失ったことだ。JPモルガン証券の在東京のチーフエコノミスト、菅野雅明氏は、日本製品を好んでいた日本の消費者も魅力を感じなくなり始めていると指摘する。
加えて、安倍氏は抜本的な構造改革に取り組むという約束を果たさなかった。日本企業で備く労働者の賃金が上昇しないため、内需へのシフトも起きなかった。
アベノミクスの欠点が露呈するにつれ、この数カ月で日本株は、運用成績が最もすぐれた投資先の1つから、最も低迷する部類へと転落した。そのため東京株式市場の買い材料も変化している。当初はアベノミクスとマクロ経済要因が日本株を支えていた。
直近ではコーポレートガバナンス(企業統治)の向上が正当化の説明に使われているようだ。法人減税案が打ち出され、自社株買い入れなど表面的な動きはあるが、これもいずれは中身がないと判明するだろう。
事態はさらに悪い方向に進みかねない。安倍氏は、小泉純一郎元首相が少なくともそうあろうとした意味での「真の改革者」ではなかった。安倍氏は将来を見すえるよりも、過去を回顧する政治家だからだ。
4番目め矢(数え方によっては2番目の矢)として軍国主義が復括しないように願いたい。安倍氏の本当の関心がそこにあるという兆候がしきりに見える。解決策を過去に求めるのは常に危険なことだ。