2014年10月10日金曜日

マスコミ文化情報労組が朝日新聞バッシングを懸念する決議

 一時期よりはいくらか落ち着いたようですが、かつて朝日新聞が慰安婦問題で吉田清治証言を全肯定した誤りを最近になって認めたことや、原発事故での吉田所長調書をスクープしたときに勇み足の報道をしたことに端を発した、読売新聞、産経新聞や週刊誌等による朝日新聞バッシングには目に余るものがありました。
 
 また安倍首相による朝日新聞バッシングも際立っていて、政治権力の頂点に居る人間がそこまでメディアに介入すべきでないとの批判を受けました。
 官邸主導の朝日新聞バッシングという見方もありました。
 
 9月27日、日本マスコミ文化情報労組会議第53回定期総会で、「朝日新聞への過剰な非難を懸念する決議」を行いましたので、紹介します。
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朝日新聞への過剰な非難を懸念する決議
 
 8 月上旬の慰安婦問題の検証記事に端を発し、朝日新聞への誹謗中傷ともいえるバッシングが続いている。東京電力福島第1 原発の吉田前所長の調書の内容を初めて報道した記事では、朝日新聞社長が謝罪して記事を取り消す事態にまで発展した。
 確かに、検証記事の内容が不十分だったり、記事を批判するコラムの掲載を一時拒否したり、朝日新聞の対応に問題があったことは否めない。また、他の報道機関が批判を込めて検証記事や後追い記事を出すことは、一つの事実を様々な角度から照らし出すという意味で有益な点もある。
 しかし「国会で検証する必要がある」との与党幹部の発言や、不買運動を呼びかけ「廃刊に追い込むべきだ」などとする主張は、報道や表現の自由を守る立場から看過できないし、それをあおり立てて言論を封殺するかのような動きも決して容認できない。
吉田前所長の調書をめぐっては、内容を記事にする際に踏み込みすぎた表現があり、
朝日新聞は記事に誤りがあったと認めざるを得なかった。しかし、政府が非公開としていた調書の内容を他社に先駆けて入手し、公開への流れを作り上げたのは朝日新聞の報道だった。情報公開を求める社会的な要請に、報道機関として応えようとした結果だったことを忘れてはならない。
 
 慰安婦問題の検証記事は、朝鮮人女性を強制連行したといういわゆる「吉田証言」が虚偽だったとして、過去の関連記事を取り消した。吉田証言には、以前から信憑性を疑問視する指摘があり、この証言だけを根拠に慰安婦問題が語られていた訳ではない。問題の責任を朝日新聞にすべて押しつけるかのような論調には、首をかしげざるを得ないし、あたかも慰安婦問題がなかったかのような主張によって、本質的な議論が置き去りにされてしまう恐れがある点にも警鐘を鳴らしたい。
 
 朝日新聞は、一連の問題の責任を取って社長が辞任を示唆した。その是非はともかく、朝日新聞が「読者の信頼回復に取り組む」との態度を表明した以上、我々はバッシングに加担することなく、冷静に対応を見守るべきではないだろうか。
 過剰な批判は新聞業界全体の信頼性を損ない「国民の知る権利」を奪う危険性にもつながる。報道の多様性や表現の自由を守る立場から、安易なバッシングへの懸念を表明する。
2014 年9 月27 日
日本マスコミ文化情報労組会議 第53 回定期総会