2014年10月14日火曜日

秘密保護法運用基準 懸念は何一つ解消していない

 昨年末国民の怒りの抗議のなかで強行採決され、公布された特定秘密保護法は、14日に運用基準案と政令案を閣議決定し、12月10日に施行されます。
 安倍首相は強行採決で成立させた昨年12月、「もっと丁寧に説明すべきだったと反省している」と述べていましたが、成立から1年近くが経っても「知る権利」侵害政府による恣意的な秘密指定など多くの懸念は全く解消されていません。
 
 特定秘密保護法は、禁止事項=違反事項の具体例の輪郭が不明確(限定されていない)で、殆どあらゆる箇所に「その他」の文言が記載されています。そう表現せざるを得ない場合も確かにあり得ますが、法文に合計36箇所も「その他」が用いられているのは例がないとされています。
 どんな口実ででも国民を秘密保護法違反で逮捕することが可能で、全ての資料、パソコン・端末・メモリーなどを押収できる仕組みになっているわけです。
 
 秘密保護法の運用基準を審査する「情報保全諮問会議」も、安倍首相のお気に入りの人たちが集められて、役人の作った基準案を僅か実質1回の審議で通しました。
 
 国会での質疑応答を見ていると、首相には、国民が秘密保護法のどのような点を懸念しているのかが分かっていないし、首相自身が秘密指定の仕組みや運用について基本的な認識を持っているのかも、疑われるという具合です。
 
 愛媛新聞が、特定秘密保護法の施行を間近にひかえて、「秘密保護法運用基準 懸念は何一つ解消していない」とする社説を掲げました。
 実にやりきれない話です。
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(社説) 秘密保護法運用基準 懸念は何一つ解消していない
愛媛新聞 2014年10月13日
 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法をめぐり、秘密の指定や解除の在り方などを定めた運用基準案と政令案を、安倍政権が14日にも閣議決定する見通しとなった。法施行は12月10日とする方針をすでに固めている。 
 国民の「知る権利」が損なわれることを強く危惧する。 
 
 秘密保護法は成立を急いだ結果、秘密の範囲の曖昧さや監視機関の実効性への疑問など多くの問題点を抱えたままだ。政府は7月の運用基準素案から大幅修正したと胸を張るが、多くは微修正にとどまる。懸念は何ら解消されず、解消に努めた跡も見えない。真摯な反省と法律の廃止をあらためて求めておきたい。 
 修正は、2万3820件に上るパブリックコメント(意見公募)を根拠とする。意見に対して政府が考え方を記した資料からは、従来見解への固執が見て取れる。法施行5年後に運用状況を検討し、必要なら基準を見直すとの修正を盛り込んだが、そもそも将来の見直しは論点のすり替えでしかない。根幹を変える気は、はなからなかったと受け取らざるを得まい。 
 
 「時の政権によって秘密指定の恣意的運用が可能」「監視機関には民間人の登用を」「匿名の内部通報を認めるべきだ」―指摘や提言の多くは一蹴された。昨年9月の意見公募でも、約9万件中77%の反対意見が切り捨てられたのを思い出す。公募はアリバイづくりだと言うほかない。 
 昨年12月の法成立後、強権的姿勢を批判された安倍晋三首相は「国民に丁寧な説明を重ねる」と繰り返し強調したはず。なのに政府は、意見公募を締め切る前から「情報保全諮問会議」の有識者委員と水面下で修正案を調整し、会合での真正面からの議論を避けた。本来は会合を全面公開とし、国民に見える形で徹底議論するのが筋だ。 
 安倍首相が「約束」を守らねばならないのは言うまでもない。一方で、情報公開に後ろ向きな政府の姿勢は、都合の悪い情報を片っ端から秘密にしてしまうのではないか、という秘密保護法に対する根本的な懸念を裏付けたとさえいえる。政府は自らの姿勢が国民の不信を増幅していることに気付かねばなるまい。
 
 安全保障政策との関連も気掛かりだ。例えば、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を踏まえた関連法案。審議は来春以降に先送りされたが、秘密保護法が施行されれば立法の根拠となる情報が開示されない事態が起こり得るのではないか。危機感が募る。 
 政府の情報統制が強まり、国民の目の届かない「密室」で重要政策の決定が進む。共謀や教唆を処罰の対象とすることで、一般市民も罪に問われる。そんな懸念を現実のものとしてはならないのだ。