2014年10月3日金曜日

アベノミクスで100兆円以上が消失

 安倍首相の所信表明演説の中で、あれだけ看板にしていた「アベノミクス」が一度も出なかったと、インターネットで指摘されています。
 酒席では怪気炎を上げはしたものの、やはり藻谷氏などの批判※1に心が折れてきたということなのでしょうか。しかしアベノミクスの問題は単に成果が上がらなかったというようなものではなくて、日本の社会に巨大な害悪・マイナスを生じさせたという点にあります。
 
 8鉱工業生産指数は前月比で1.5%低下の95.5となり、在庫は前月比1.0%上昇とさらに積み上がり、経済指標は悪化の一途をたどっているということです。
 そうした落ち込みは、とても消費税率アップ前の駆け込み需要の一時的な反動、などと呼べるものではありません。
 また政府は完全失業率が3.5%に低下したことを強調しますが、ここヶ月でみても正規社員は11万人減、非正規社員は168万人増で、労働形態は質的に低下する一方です。とても何かが改善されたというようなものではありません。
 これがアベノミクスの実態です。
 
 不思議なことはこんな経済の実態でも、消費税率10%へのアップは「法律で決まっている」ことだとして、政権関係者の中に消費税率のアップを見合わせようと言い出す人が一人も居ないことです。
 このまま消費税率10%に突入すれば、15年以上続いてきた不況が更に輪をかけてひどくなります。植草一秀氏はその場合 安倍内閣は2015年で終わりになると述べています(1日付同氏ブログ)。
 
 確かに株価は円安の反動として上がってはいますが、そんなことで景気が上向いていると判断するのであれば大間違いです。ドル建ての株価は低下している2し、国内で株高の恩恵を受ける人たちは極くごく限られた人たちであって、それによって国民の購買力が上がり需要が喚起されるなどということはありません。その正反対で殆どの国民は円安の副作用によってただ痛めつけられているだけです。
 
 日刊ゲンダイが「アベノミクスで100兆円消失…ドル換算で見える真実」を掲載しました。 
 アベノミクスの2年間で、ドル建てのGDPに換算すると 1兆ドル=100兆円以上が吹っ飛んでしまったとしています円は実に1ドル83円から110円に下がりました。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
 
      ※1  9月30日 「アベノミクス有害」の批判に首相が激怒 
      2  9月27日 日本の株高 ドル建てでは逆に下落基調 
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アベノミクスで「100兆円消失」…ドル換算で見える真実 
日刊ゲンダイ 2014年10月1日
 安倍首相は、相変わらず「アベノミクスで景気は上向いた」とか言っている。その根拠は株価の上昇だ。日経平均は9月25日に1万6374円をつけた。6年11カ月ぶりの高値だが、これは、あくまで日本円の世界だけの話。ドル換算すると、アベノミクスの“真実”が見えてくる。
 
 「このグローバル経済時代ですから、日本円だけで見ていると実態を見誤ります。株価も統計も、国際的にはドルベースで評価される。ドル建てで見れば、株価もたいして上がっていないことが分かります」(RFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏)
 年初来高値の1万6374円も、1ドル=109円で計算すれば150ドル程度。実は、アベノミクスの異次元緩和が始まってから、ドル建ての株価はほとんど上がっていない。昨年末が約155ドルだった。ちょっと前までは下がり続けていたことになる。
 
■GDPは中国の半分
 「それ以上に深刻なのは、GDPの激減です。民主党政権の12年までは、ドル建ての名目GDPは増えていた。ところが、アベノミクスの円安政策によってガクンと減ってしまったのです。今年6月には、一気に中国の半分以下の水準に縮んでしまった。世界的に見れば、中国の半分以下の経済規模しかない国では投資する魅力は減る一方。しかも、通貨の実力を示す購買力平価を用いて換算した場合、日本のGDPは、今や中国の3分の1しかありません」(田代秀敏氏)
 
 2012年の日本の名目GDPはドル換算で5兆9378億ドル。それが2013年には4兆9015億ドルに減った。2014年は、IMF推計によれば、日本が4兆8463億ドルで、中国は10兆275億ドルだ。
 アベノミクスの2年間で、1兆ドル=100兆円以上が吹っ飛んでしまったのである。