2014年10月29日水曜日

労働者派遣法改正案が衆院で審議入り 野党猛反発

 28日、企業が派遣労働者を事実上無期限で使えるようにする労働者派遣法改正案が衆院本会議で審議入りしまし野党は「派遣社員の増加を招く」と猛反発しました
 
 いわゆる規制緩和特区で端的に示されているように、安倍政権の雇用制度改革=雇用規制緩和は「社員のクビ切り自由化」など、企業がなんでもありで利益の拡大を目指すことが出来るようにするものです。
※  10月24日 安倍政権の進めている雇用改革が酷すぎる
 
 労働者派遣法改正もその一環で、3年ごとに部署さえ変えれば同じ会社内でも同じ派遣社員を半永続的に「使い回す」ことが出来るようにしようというもので、これまでは多少なりともあった企業側に正社員化を促す機能も無にさせるものです。
 
 労働派遣法の規制緩和は小泉政権・第一次安倍政権以来一貫して行われてきたものですが、それは企業側の利益とともに派遣会社経営者の利益も目指したものであって、労働者側の待遇等の改善を目指したものではありませんでした。
 派遣法の規制緩和を主導した竹中平蔵氏はその後最大規模の派遣会社のトップに収まっている(いまも派遣法の自由化を推進する提言などを行う委員会のメンバー)事実がそのことを雄弁に物語っています。
 
 衆院本会議で民主議員が、改正案によって「『生涯派遣』の労働者が増えるのではないか」とただしたのに対し、安倍首相は改正案が正社員になるための教育訓練を派遣元企業に義務づけていることなどを挙げ反論したということですが、その程度のことで正社員化が進む筈もなく、相変わらず空虚な答弁に終始しているようです。
 
 毎日新聞の記事と、派遣法改正案が「経営側寄りが過ぎないか」とする南日本新聞の社説を紹介します
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労働者派遣法改正案:「派遣社員増加を招く」猛反発の野党
毎日新聞 2014年10月28日
◇衆院本会議で審議入り、今国会での成立目指す政府
 企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間の上限規制(最長3年)を事実上撤廃する労働者派遣法改正案が、28日の衆院本会議で審議入りした。来年4月の施行に向け、今国会での成立を目指す政府に対し、民主、共産、社民などの野党は「派遣社員の増加を招く」と猛反発。閣僚の「政治とカネ」の問題も絡めて廃案に追い込む構えで、11月30日までの会期内成立は微妙な情勢だ。
 現行の労働者派遣法は、「派遣は臨時的」との原則に沿い、企業が同じ職場で派遣労働者を受け入れることができる期間を原則1年、最長3年(通訳など専門26業務は無期限)と定めている。これに対し、改正案は全業務で派遣期間の上限を3年とする一方、3年たった時点でそれまで雇っていた人とは別の派遣労働者に代えるなら、引き続き派遣で要員を賄える。企業が労組の意見を聞いたうえで3年ごとに人を入れ替えれば、ずっと派遣労働者を使うことも可能になる。
 
 衆院本会議での趣旨説明に続く質疑で、民主党の菊田真紀子氏は改正案について「『生涯派遣』の労働者が増えるのではないか」とただした。これに対し、安倍晋三首相は改正案が正社員になるための教育訓練を派遣元企業に義務づけていることなどを挙げ「派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化している」と反論した。【中島和哉】
 
 
(社説) 派遣法改正 待遇改善ができるのか
南日本新聞 2014年10月28日
 政府は、企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限を事実上撤廃することなどを柱とした労働者派遣法改正案を国会に再提出した。今日にも審議入りする予定だ。
 
 改正案には、制限撤廃で不安定な雇用が拡大するとの批判が絶えない。民主党は他の党と、非正規労働者の待遇改善を目指す法案の共同提出を模索している。
 政府は改正案を早期成立させ、2015年4月の施行を予定している。だが、派遣で働く人の待遇改善につながるのかどうか、十分な論議が必要である。
 現在、企業が派遣労働者を受け入れる期間は、通訳など専門的な業務を除き、同じ職場で3年が上限だ。改正案では、専門業務の区分をなくす一方、企業は3年ごとに働き手を代えれば派遣労働者を使い続けられるようになる。
 企業が派遣労働が可能なすべての業務に関して、労働組合の意見などを聞くことが条件だ。
 経営側寄りが過ぎないか。民主党など野党が「派遣労働を生涯続ける人が増える」と批判するのはもっともな面がある。
 
 政府・与党は、派遣労働者の雇用安定やキャリア向上につながる対策も盛り込んだとしている。
 確かに改正案は派遣会社の責任を重くした。同じ職場で3年を迎えた労働者に、次の派遣先を紹介することなどを派遣会社に義務付けた。
 悪質業者をなくすため、すべての派遣会社を許可制にし、教育訓練などで労働者のキャリアアップを図ることも求めている。
 ただ、派遣会社や派遣先企業への努力義務や配慮義務が多いため、どこまで対策が徹底できるか不透明だ。
 
 派遣労働者は12年6月時点で全国で135万人。厚生労働省によると今後も「派遣労働者として働きたい」人が43.1%なのに、ほぼ同率の人が「正社員として働きたい」と望んでいる。
 改正案はこうした声を受ける形で、派遣労働者が同じ職場で働ける期間を3年までとした。「派遣労働は、臨時的で一時的な働き方と位置付けることを原則とすべきとされた」(厚労省のQ&A)からだ。
 
 労働者の就労のあり方は個人の生活だけでなく、年金など社会保障や税の基盤にも影響する。
 不安定な雇用が低収入につながり、非婚や晩婚化、少子化を強いている面も否定できない。
 派遣など非正規雇用の労働者は昨年、約1900万人にも上った。国会は、非正規雇用が社会全体の問題であることを念頭に議論すべきだ。