2014年10月24日金曜日

安倍政権の進めている雇用改革が酷すぎる

 リテラ紙が、「安倍政権の雇用改革がヒドい! 社員のクビ切り自由化、派遣の固定化も!」とする記事を載せました。
 
 安倍政権の雇用改革を以下の4つにまとめています。
 
 ひとつは、従来「整理解雇の4要件」を満たさなければ従業員を回顧できないとされている規制をとって、「一定額の再就職支援金を支払えば解雇ができる」ようにしようというものですこれは悪評の高い「規制緩和特区における解雇制限の緩和という形で、すでに実験が進みつつあるということです。
 
 二つ目は、「限定正社員」制の導入で、職務、勤務地、労働時間が限定される代わりにその分給料が安く設定され、会社の都合である仕事がなくなったり、ある事業所が不採算で閉鎖される場合は、限定社員は簡単にクビにできというものです。人件費抑制と解雇自由化の一環であることは明白です
 
 三つ目は、労働時間規制の緩和で、以前に「残業代ゼロ法案」として批判を浴びたホワイトカラーエグゼンプションを柱とする「8時間労働」原則の破壊です。現行の労働基準法では、残業代を払わなくていいのは部長職など上級管理職や研究者などの一部専門職に限定されているのを、これを年収1000万円を超える社員や、労働組合合意した社員に広げようというもので、そうなれば無制限のただ働きが行われることになります。
 
 そして最後が労働者派遣の“規制緩和”で、これまでは派遣は3年以内(それ以上に及ぶ時は社員化を考える)と決まっているのを、派遣元会社に正社員として採用されていればその期間の制限を外すことができ、そうでない場合は、個人単位で3年という派遣期間の制限は残すものの年ごとに部署さえ変えれば同じ会社内でも同じ派遣社員を半永続的に「使い回す」ことが出来るようにしようというものです。
 
 安倍政権は相変わらず「多様な働き方の実現」とか「労働者のニーズに応える」といった欺瞞的な理由で、こうした社員・労働者を奴隷化するような恐るべき改革を進めているということです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍政権の雇用改革がヒドい! 社員のクビ切り自由化、派遣の固定化も!
リテラ 2014年10月23日
 地方創生の影に隠れて目立たないが、安倍政権のトンデモない雇用制度改革(雇用規制緩和)が着々と進んでいるのをご存知だろうか。“改革”といえば聞こえはいいが、その実体は「正社員のクビ切り自由化」という話なのだ。
 現状で会社が正社員を解雇するには「整理解雇の4要件」を満たさなければならないことになっている。具体的には(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続きの妥当──がチェックされ、経営者は勝手気ままに従業員をクビにできない。
 ところが安倍政権は、この企業にとっては都合の悪い規制を“改革”して、「一定額の再就職支援金を支払えば解雇ができる」ようにしようというのだ。
 もし、こんな法改正が実施されれば、社員はいつクビを切られるかと怯えながら働かなければならなくなる。一方、経営者にとってはカネさえ払えばいつでも後腐れなく人員整理ができ、年金や健康保険といった重荷からも解放される。企業優遇の最たるものだ。
 実際にはまだそこまで露骨になっていないが、いわゆる規制緩和特区における解雇制限の緩和という形で、すでに実験が進みつつあるのである。
 
 しかもこの「クビ切り自由化」はほんの氷山の一角に過ぎないのだ。
 安倍政権の右傾化にばかり気を取られて国民はほとんど気づいていないが、アベノミクスの成長戦略の「要」に位置付けられるこの“改革”は、「サラリーマン奴隷化」政策と言っていいほどおぞましいものなのだ。
 安倍晋三首相は2013年2月の施政方針演説で「世界でいちばん企業が活躍しやすい国を目指す」と宣言し、そのためには「聖域なき規制改革を進め……企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していきます」と、ハッキリそう言っている。
 “企業活動を妨げる障害”というのは、労働者の権利を守るために設けられたさまざまな“規制”だ。安倍政権はそれを目の敵にして徹底的に破壊しようとしている。
 例えばそれは、正社員は簡単にクビにしてはいけないとか、労働時間は8時間を基本としてそれを超える場合は割り増し賃金を払わなければならないとか、労働力を必要とする企業は労働者を直接雇用しなければならないといった労働における“大原則”だ。
 いずれも長い歴史の中で定着してきた考え方だが、安倍政権はそれを“障害”とまで言い、根底からブチ壊そうとしている。「世界でいちばん企業が活躍しやすい国」とは、逆に言えば「世界でいちばん社員がこき使われる国」という意味なのだ。
 具体的に何をやろうとしているのか。
 「クビ切り自由化」については先に書いた通りで、他にもさまざまなトンデモ政策が用意されている。
 まずは、ジョブ型(限定)正社員の導入だ。これは、従来型の正社員を「無限定正社員」ということにして、新たに「限定正社員」なる雇用区分を設けるものだ。限定正社員は、職務、勤務地、労働時間が限定される代わりに給料が安い。
 表向きは転勤や長時間労働の心配がない「多様な働き方」のひとつとされ、子育てや介護と両立できるとも謳われている。
 だが、企業側の狙いが人件費抑制と解雇自由化の一環にあることは間違いない。
 限定正社員は企業にとっては単に「安い正社員」に過ぎないからだ。おまけに職務や勤務地が限定されているので、ある仕事が会社の都合でなくなったり、ある事業所が不採算で閉鎖されることになったら、そこで働いていた限定社員は配置転換など解雇回避の努力をすることなく簡単にクビにできることになる。
 一方、無限定正社員は本人が望まない配転や残業をそれこそ“無限定”に受け入れることが求められる。だからといって給料は「今まで通り」変わらない。当然、ついていけない社員が続出することも予想される。いきなり地方へ飛ばされたり、無限定な残業を強いられたり。断れば、会社をクビになるか、限定社員に“格下げ”される。
「多様な働き方ができる」というのは建前に過ぎず、要は“下級正社員”をつくるという発想に近い。これによって、ひとつの企業の中に無限定正社員(旧正社員)、限定正社員(下級正社員)、非正規雇用(派遣など)の3重の格差が生まれることにもなる。
 
 この限定社員制導入と同時に検討されているのが、労働時間規制の緩和だ。かつて「残業代ゼロ法案」として批判を浴びたホワイトカラーエグゼンプションを柱とする「8時間労働」原則の破壊である。
 表向きは「多様で柔軟な働き方」を実現するため、仕事の成果を労働時間では算定できない労働者を対象に、法定労働時間を適用しない制度だと説明されている。だが、真相はかつての批判通り「残業代ゼロ」の拡大が目的だ。
 現行の労働基準法では、会社が残業代を払わなくていいのは部長職など上級管理職や研究者などの一部専門職に限定されている。これを年収1000万円を超える社員のほか、労働組合との合意で認められた社員全般に広げようというのである。いずれも本人の同意が必要という条件がつけられているが、「クビ切り自由化」や「限定正社員制度」などとまとめて導入されるわけだから、社員に選択の余地などないのである。
 こんな制度が導入されれば、仕事ができて使い減りのしない働き盛りの社員に仕事がどんどん集中して、タダ働きの長時間労働が強いられることは明らかだ。多様で柔軟な働き方など真っ赤なウソと言っていい。
 
 もうひとつ、安倍政権が熱心に取り組んでいるのが労働者派遣の“規制緩和”だ。
 そもそも派遣労働は「労働力を必要とする企業は労働者を直接雇用しなければならない」という大原則に反する雇用で、当初は専門性の高い限られた職種にのみ、例外として許されていた。それが「(また出た)多様な働き方の実現」だとか「労働者のニーズに応える」といった欺瞞的な理由で対象職種が拡大されるなど、“企業側のニーズ”に沿った法改正が繰り返された歴史がある。
 それでも建前としては、派遣は徐々に縮小して、直接雇用の労働者を増やす方向性にはなっていた。2008年のリーマンショック後の「派遣切り」を契機に行われた法改正では、初めて「派遣労働者の保護」が明記されもした。繰り返すが、派遣はあくまでも例外的な働き方だ。必要な人材なら会社は正社員として直接雇用しなければならないし、継続的に必要な業務なら会社は正社員を充てなければならないことになっている。
 ところが安倍政権は、こうした過去に積み上げられた議論を一切捨てて、企業が望めば派遣社員を「安い労働力」として、いつまでも使い続けたり、使い回しができるようにしようとしている。
 
 具体的には、無期雇用派遣については常用代替防止の原則(正社員を派遣労働者に置き換えてはいけないという原則)を取っ払って、派遣期間の制限も一切なくすというのだ。
 これはどういうことかというと、通常、派遣は3年以内と決まっているが、派遣会社(派遣元)に正社員(無期雇用)として採用されていれば、この期間の制限(規制)がなくなり、いつまでも派遣として働き続けられるというものだ。
 一見すると派遣労働者にもメリットがありそうに思えるが、トリックがある。本来、それだけ長く必要な業務なら、会社は派遣でなく正社員を置かなければならない。もし、その業務にあたる派遣社員が優秀で、ずっとその仕事をやって欲しいと思ったら正社員として採用しなければならないのだ。
 さらに、派遣会社が正社員として雇った労働者を派遣先に派遣するというが、実際には派遣会社が派遣先から派遣契約を切られた後も、その労働者を正社員として雇い続けることは難しい。結果として、派遣契約が終われば、仕事もなくなる。不安定さに変わりはない。
 また、従来型の有期雇用派遣については個人単位で3年という派遣期間の制限は残すが、業務単位での期間制限は廃止する。簡単にいうと、3年ごとに部署さえ変えれば同じ会社内でも同じ派遣社員を半永続的に「使い回す」ことが可能になる。本来なら、それだけ必要とされる人材なら正社員として雇用しなければならないのにだ。
 いずれの施策も「働き方の多様性」だとか「育児や介護との両立」などのメリットばかり強調されるが、実体は、安くて使い勝手の良い労働力を企業に送り込むための方便なのだ。
 
 このサラリーマン奴隷化によって企業がいくら儲かるか? 労働総研の試算によると、なんと42兆円にも達するという。
 まず、ホワイトカラーエグゼンプションで従来型の正社員から残業代を奪い取る。次に「無限定社員」としてついて来られない社員を「限定社員」化することで、差額の人件費を浮かせる。限定社員の業務の一部を派遣労働者に置き換えてさらに人件費を抑制する。派遣労働者の賃金も買い叩いて……と、これがアベノミクスの正体なのだ。
 
 安倍政権がデタラメなのは、国民の生活を一変させるほどの重大事なのにきちんとした議論や手続きを踏まずに進めようとしていることだ。集団的自衛権における解釈改憲の手法と似ている。さすがにこれはマズイと気づいた労働法の専門家たちが『日本の雇用が危ない 安倍政権「労働規制緩和」批判』(旬報社)を緊急出版した。
 この本の「はしがき」には、規制緩和がそのまま進められると「格差社会」が一層深刻化し、正社員も非正規労働者も働きがいのある人間らしい仕事からほど遠い労働と生活を強いられることになる、と恐ろしいことが指摘されている。
 にもかかわらず労働者の反応は驚くほど鈍い。まともな国なら暴動が起きてもおかしくない事態だが、安倍政権の支持率も(落ちたとはいえ)相変わらず高い。
 安倍首相はアベノミクスで雇用が増えたと盛んに宣伝しているが、サラリーマンの実質賃金は13カ月連続で減少している(厚労省発表7月速報値)。要は、企業にとって都合のいい“安い雇用”ばかりが増えているというわけだ。
 
 サラリーマンの“奴隷化”は、知らぬ間に、しかも着実に進んでいるのである。
 (野尻民夫)