昨年の「湯沢平和の輪」新年会に大雪の悪天候の中を特別講演のためにお出でいただいた坂東克彦弁護士が、18日の新潟日報=「平和とは 新潟から問う 安保法案」シリーズ再開第1回目に登場しました。
砂川事件では、一審の東京地裁で「在日米軍は戦力であり憲法9条に違反する」とした画期的な伊達判決が下されましたが、検察は直ちに跳躍上告し最高裁大法廷で審判されることになりました。
当時東京で開業したばかりの坂東弁護士は弁護団の一員に加わり、26歳のときに最高裁大法廷で弁論を行っています。
政府は安保法案の提出に当たり、集団的自衛権の行使は砂川事件の最高裁判決が認めているという、とんでもない理由をつけて合理化しようとしていますが、坂東弁護士は実際に弁護を担当した立場から、「当時、集団的自衛権は争点ではなかった」と断言し、「最高裁判決の趣旨をゆがめ、法案成立を強行しようという政府のやり方はあまりにもひどい」と厳しく批判しています。
坂東弁護士は、新潟県内の学者と弁護士111人が法案の速やかな廃案を求める共同声明を発表した14日にも、呼び掛け人らと一緒に県庁で記者会見をしています。
そのときの新潟日報の記事も併せて紹介します。
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判決ゆがめ強行許せぬ 砂川事件元弁護団 坂東克彦さん(新潟市)
―平和とは 新潟から問う 安保法案―
新潟日報 2015年7月18日
私たちの平穏な生活は守られるのか。他国の戦争に巻き込まれはしないか。明確な答えが見えないまま安倍政権は安全保障関連法案の衆院で採決を強行し、論戦の舞台は参院に移った。問われているのは戦後70年間、築いてきた平和主義と民主主義の行方。昨年、集団的自衛権を考えたシリーズ企画を再びスタートさせ、あらためて新潟から問う。
平和とは―。
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「最高裁判決の趣旨をゆがめ、法案成立を強行しようという政府のやり方はあまりにもひどい」
政府、自民党が安保関連法案を「合憲」とする根拠として挙げた砂川事件。砂川事件の弁護団の一員だった新潟市中央区の弁護士坂東克彦さん(82)は、安倍政権を激しい口調で批判する。
砂川事件は、1957年に起きた。東京都砂川町の米軍基地に立ち人ったデモ隊の参加者7人が罪に問われ、裁判では米軍駐留などが憲法9条に適合するかどうかが実質的に争われた。一審の東京地裁は、在日米軍を9条が禁じる「戦力」と認めたが、最高裁は在日米軍は「日本の戦力に当たらない」とした上で、主権国として「必要な自衛のための措置」を取ることは「国家固有の権能」とした。
坂東さんは最高裁での最終弁論の一部を書いたが「当時、集団的自衛権は争点ではなかった」と断言する。
33年生まれ。第2次世界大戦を体験し「もう少し早く生まれていれば戦地に行かされた」という思いは強い。東京で弁護士活動を始めた59年は、砂川事件が最高裁で争われていた時期。駆け出しだった坂東さんも「戦争放棄を定めた憲法を守りたい」との一心で弁護団に加わった。
「(在日米軍を戦力と認めた)画期的な一審判決を上告審でも守ろうと頑張ったが、敗訴し、悔しかった」と当時を振り返る。
最高裁判決から55年がたった昨年、与党が砂川判決を根拠に集団的自衛権を合憲と言い出したことに驚き、怒りがこみ上げてきた。「自分たちに都合よく判決を利用することはけしからん」と語気を強める。
14日に県内の学者、弁護士の有志111人が出した共同声明に進んで名を連ねた。同じ日に予定された県庁での記者会見には「(抗議行動は)若い人に任せたい」と一度は断ったが、時間がたつにつれ「砂川事件に携わった自分が語らなければ」との思いが募ってきた。記者会見には杖をつきながら出席し、法案の廃案を訴えた。
「80歳を過ぎたが、国の在り方が変わりかねない局面に、戦争体験者の一人として
黙ってはいられない。できるだけのことをしたい」 (随時掲載)
安保法案「戦争への道」許さない
学者、弁護士111人 廃案求め共同声明
新潟日報 2015年7月15日
集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案の衆院特別委員会での採決が15日に迫る中、県内の学者と弁護士111人が14日、法案の速やかな廃案を求める共同声明を発表した。呼び掛け人の佐々木寛・新潟国際情報大教授らが県庁で記者会見し「世論を無視して法案を通そうという与党の姿勢に新潟からも声を上げていきたい」と訴えた。
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佐々木教授と水内基成弁護士が呼び掛け人となり、8日から県内の学者、弁護士に声明の賛同者を募った。14日までに新潟大、上越教育大など6大学から政治学や文学、農学など各分野の研究者23人が名を連ねたほか、県弁護士会会員の3分の1近い86人が賛同した。
声明文では「法案は自衛隊が地球上のあらゆる場所で他国の軍隊と一緒に武力を行使する道を切り開くものだ」と指摘。「わが国を『戦争も辞さない国』にしてはならない」として廃案を求めた。県関係の国会議員宛てに14日、送付した。
会見には呼び掛け人のほか、坂東克彦弁護士ら9人が出席。水内弁護士は100人を超える賛同者が集まったことについて、「これだけの人数が名前を出して法案にノーという意義は大きい」と強調した。
大田陸介弁護士は「自分自身にも子どもがいる。この法案を許せば、子どもたちが戦争に巻き込まれるかもしれないと思い参加した。多くの人に法案について考えてもらいたい」と呼び掛けた。
敬和学園大の藤野豊教授(日本近現代史)は「かつての日本は東洋平和の確立を掲げて戦争を推し進めた。平和の名の下に戦争を肯定した歴史を繰り返してはいけない」と話した。
与党は15日の特別委採決を経て16日にも法案の衆院通過を目指す構えだ。佐々木教授は「日本中で反対の声が上がる中で、採決を強行することこそ、東アジアに緊張をもたらし、日本の安全保障を脅かす行為だ」と批判した。
安全保障関連法制の廃案を求めた学者と弁護士の共同声明発表の記者会見
(奥から3人目が坂東弁護士)