国民の6割が反対し、今国会での成立には8割が反対している安保関連法案が、15日の昼に、衆院特別委員会で自民・公明の2党で強行採決・成立しました。あってはならない暴挙ですが、これ以上延ばせば与党がますます不利になるからということで、多数を持っている側が決断した確信犯的行動であればどうすることも出来ません。
与党は16日には衆議院でも強行採決を行って参議院に送る予定にしています。
慶応大学の小林節名誉教授は、13日の段階で
「強行採決はあるだろう。それを覚悟していないとガクっとくる。いま我々が何よりも考えるべきことは、史上最悪の政権の退場です。来るべき参院選で、3大野党(民主党と維新と共産党)と生活の党と社民党がきちんと選挙区をすみ分ければ、政権交代が可能な状態になる」
と述べています。
野党が協力して安倍自民党政権を退場させれば、憲法違反の安保法制も廃止するなり、再改定するなりができるということです。
東京新聞と日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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安保法案 衆院委で可決 反対民意の中 強行
東京新聞 2015年7月15日
他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする政府の安全保障関連法案は十五日午後の衆院特別委員会で、自民、公明両党の賛成で可決された。民主、維新、共産の野党三党は強行だと抗議して採決に加わらなかった。安保法案に対し、憲法学者から「違憲」との指摘が続出するなど、各界各層に反対の声が広がる中、安倍政権は今国会中の成立を目指す姿勢を鮮明に打ち出した。
特別委は同日午前、安倍晋三首相が出席して締めくくり質疑を行い、与野党が質問。続いて野党側が審議の継続を求める動議を提出したが、賛成少数で否決され、浜田靖一委員長(自民)が質疑終局を宣言。野党議員が委員長席に詰め寄って抗議する中、維新案、政府案の順で採決した。維新の対案二本は賛成少数で否決された。野党三党は席に着かず、浜田氏に抗議を続けたが、政府案は与党単独で可決された。民主、維新両党が共同提出した領域警備法案は採決しなかった。
首相は採決前の質疑で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱にした安保法案について「まだ国民の理解が進んでいないのも事実だ」と認めた。「批判に耳を傾けつつ、確固たる信念があればしっかり政策を進めていく必要がある」とも強調した。
民主党の長妻昭代表代行は「説明が尽くされたと思っているのか。国民の理解が得られていない中、強行採決は到底認められない」と訴えた。
特別委に先立ち、自民、公明両党の幹事長は都内で会談し、安保法案を十六日の衆院本会議で可決し、参院に送付する方針を確認した。
参院では法案を審議する特別委の設置に野党が同意しておらず、早期の審議入りは難しい情勢。与党は、衆院通過後に六十日が経過しても参院が採決しない場合、憲法の規定に基づき衆院が三分の二以上の賛成で再可決、成立させる可能性も排除しない姿勢を示し、参院に審議を促す考えだ。
◆世論説得 自信のなさ露呈
<解説> 与党は十五日午後、安全保障関連法案に関する衆院特別委員会で採決強行に踏み切った。五月末から一カ月半にわたるこれまでの審議では、政府側の説明の矛盾やあいまいさが際だった。審議を進めるほどに世論の疑念が深まる中での採決は、拙速との批判を免れない。説明を尽くしても、国民の理解を得る自信がないと認めているに等しい。
法案の最大の問題点は、どんな状況になれば、他国を武力で守る集団的自衛権を行使するのか不明確なこと。歴代政権が憲法解釈で禁じてきた集団的自衛権を行使する判断について、安倍晋三首相の答弁は「私に任せてほしい」と言っているようにしか聞こえない。大半の憲法学者が「違憲立法」と批判する理由はここにある。
首相は審議の序盤では、「他国の領土、領海、領空で戦闘行為を行わない」と強調。他国での武力行使は中東・ホルムズ海峡の機雷掃海以外に「念頭にない」と明言していた。ところが、近隣国の領海で米艦が攻撃を受けた際の対応について野党から追及されると、集団的自衛権を行使する可能性を排除しなかった。
首相は、敵国の意図が不明でも集団的自衛権行使に踏み切る可能性にも言及。政府の裁量次第で行使の範囲が広がる懸念は、審議を重ねるごとに強まった。
そんな状況で採決したのは、世論の反対がこれ以上強まる前に採決してしまえという姿勢にほかならない。首相は安保法案を閣議決定した五月十四日の記者会見で「分かりやすく丁寧に、必要な法整備であることを審議を通じ説明していきたい」と強調した。自身の発言の意味を、今こそかみしめるべきだ。 (新開浩)
安保“強行採決ムード”も…小林節氏が宣言「安倍政権は倒せる」
日刊ゲンダイ 2015年7月14日
安全保障関連法案を審議している衆院特別委員会は13日、中央公聴会を終え、いよいよ、強行採決カウントダウンだ。野党は猛反発、全国規模に広がっている反対運動も怒りのシュプレヒコールを上げているが、狂乱政権は聞く耳を持とうとしない。かくなるうえはどうするか。憲法学者の小林節氏はこう訴えている。
「だんだん強行採決が行われそうになってきましたね。結論を先に言いますと、強行採決は行われると思っていなければなりません」
こう言う小林氏は、その根拠をこう説明した。
「安倍内閣はそういう体質だからです。『上御一人』ということです。子供の時からそういう育ちをした人は、何があっても、爺や婆やがその通りにしてくれました。周りには2種類の人間がいて、ひとつは、あの方と同じような先祖代々の世界、価値観の人たち。もうひとつは、秀才なのだけれども、その貴族集団にゴマすることで出世しようとする政治家・官僚たち。良心を売って新貴族階級に自分を入れてもらおうとする価値観しかない人たちです。ですから『殿、だいぶ風雲急になってきております。作戦を変えてはいかがでしょうか』とは言えない。言った途端、クビを切られるから。ですから暴走自動車は止まりません。彼らが衆議院で3分の2以上の多数を握っている以上、強行採決をやる。そう思っていないと、ガクッと来ちゃう。絶望します。その後、どうしてくれるのかということですね」
小林氏がまず挙げたのが野党共闘だ。
「この前の総選挙の時は、国民の中に反民主の感情があって、結果、3割の得票で自公は7割の議席を獲得して、『何でもできる』と威張っている。いまもって反民主の感情はありますが、『自民党感じ悪いよね』というムードも広がりつつある。来年は参議院選挙があります。3大野党(民主党と維新と共産党)と生活の党と社民党がきちんと(選挙区を)すみ分ければ、政権交代が可能な状態になる。いま我々が何よりも考えるべきことは、史上最悪の政権の退場です。この国は“狂った迷走状態”に入っている、日本丸という巨大な船。船長がいかれているのですよ。それなのに周りのクルーが『あんたが大将』と担いでいる。我々はこの船のオーナーであり受益者です。狂ったような船員集団を追い出さないといけないのです」
小林氏は選挙協力の具体的な方法にも言及した。
「野党は比例区の直近の票を前提に、(衆院の)小選挙区や参院の選挙区で取る割合・数をまず決める。それぞれの政党で一番戦いやすい選挙区を取る。そこで、いかにも党内だけでしか通用しない人ではなくて、周辺からも票が取れそうな超党派で推してもらえそうな人を出す。各党がそういう人を責任を持って出して、その代わり、他党は絶対に邪魔しない。これさえすれば、安倍政権なんて吹っ飛ばせるのです」
小林氏は最後にこう力説した。
「今回、強行採決をされても、諦めないで下さい。予定通り、バカがバカをやっただけです。『やっぱり来たか! バカ野郎!』と言っていればいいのです。強行すれば、参院選はつまずく。いや、つまずかせる。違憲訴訟も準備しています。法律が成立してしまったら、その瞬間から我々の平和的生存権がシクシクと害され続けるのです。たくさんの人が集団訴訟を起こすでしょう。今日も弁護士会でお願いをしてきました。『何百人という話も出ていますが、1000人の弁護団を作りませんか』と。そうすると、地裁の裁判官も『違憲』の判決を出しやすくなる。私は死ぬまで諦めません」
(取材協力=ジャーナリスト・横田一)