自民党は15日の委員会強行採決をにらんで、議論は煮詰まってきたという言い方をするようになりましたが、安倍首相にしても、防衛相にしても聞かれることに対して碌な答弁が出来ていないのですから煮詰まりようがありません。
逆に議論をすればするほど、法案は憲法の精神から逸脱したものであり、ひたすらアメリカの要求に応じようとしたものであることが明らかにされています。
これはそもそも法案自体がそうだからどうすることも出来ないのですが、安倍首相の場合には、答弁に値しない『答弁』しか出来ていないという特殊性がそれに加算されています。
10日に衆院特別委員会で行われた辻本議員の質問とそれに対する首相の答弁の速記録が、その日の夜にブログ:「晴天とら日和」に掲載されました。
(同ブログは母娘で書いている由ですが、英語その他の外国語に堪能なようで長文の日本語訳が載せらることもあるし、タイピング能力もバツグンなようで、TVで報じられたことをその日の内に書き起こして文章化することもあります。今回は後者の例です。追記・・・事務局の勘違いでオリジナルは小原美由紀さんによるものでした)
辻本議員の質問の趣旨は明快で、「兵站を請け負った自衛隊が、“受け渡し先が戦闘地域になりそうなので、資材を渡せない”と断ることが出来るのか」というもので、かつて首相が、イラクでの復興支援活動の際に、「危険になったから撤退するということでは、国際社会ではまったく通用しない。そんな国とはともに活動したくないと思われて当然だ」と著書で述べたことを例に挙げて、首相に確認したものです。
読んでいただければ分かるとおり、首相は駆け付け警護やらPKOやら直接関係のない話を取り混ぜて、延々と駄弁の洪水を展開しましたが、一向に明解に答えていません。質問は後方支援=兵站活動でそれが可能なのかと聞いているので、それに端的に答えれば済む話なのですが・・・
それどころか、答弁しながら自分が一体何をしゃべっているのか分かっていない状態に陥っていると推測されます。まさに国会審議における「時間の空費」です。
普通は自分があまりにもデタラメなことを口にして逃げ回れば、そのことで自己嫌悪に陥るものなのですが、安倍氏の場合には全くそういうところはありません。今回も多分、見事に答弁し終えたという認識なのだと思われます。
これではいつまで経っても国会審議は煮詰まりません。
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平和安全法制特別委員会での辻本議員の発言
晴天とら日和 2015年7月10日
7月10日衆議院平和安全法制特別委員会
◆辻元清美議員
この委員会の細野議員との答弁の中で、細野さんはこう聞きました。「自衛隊だけ途中で撤収するということ、それはできるんですか? 本当にそれで海外の国に対して責任を果たせるんですか?」と質問されたんですね、総理は「まさに戦闘現場になったらただちに撤退するのが当然であろう。それを前提に自衛隊は活動するわけでございます」と話していらっしゃいます。
でも、やはり私はそれは国際社会では通用しないと思いますし、そんな国とは一緒に活動できないなと思われかねないなと思いますが、いかがですか?
◆安倍晋三内閣総理大臣
これはもう、そういう運用で今回ですね、法律をつくっているわけでありますから、当然これは、確かにですね、そういう状況になれば、自衛隊は撤収をするわけでございます。後方支援を止めるわけです、戦闘現場になればですね。補給を受けるほうにとっては、確かにそう辻元さんがおっしゃったような意味合いもあるかもしれません。しかしですね、私たちの法律によって定められているこれは、まさに、運用の基本的な考え方であります。まさに、われわれは、後方支援については武力行使と一体化しない、我が国独自の憲法との関係においてですね。憲法一体化論も、あるわけでありますからそれを理解した上での後方支援しか行われないということであります。われわれの自衛隊はですね、PKOについてもゴラン高原においてですね。自衛隊は撤収をしたという事例もあるわけであります。
◆辻元
先日、お示しした、総理と百田尚樹氏の対談の本です。あのあと、拝読いたしました。こういうくだりがあるわけですね、36ページ当たりですが、安保法制懇の説明をASEAN各国首脳に説明するというくだりです。
・・・引用・・・
総理 『日本は、ここは戦闘地域になったので、私たちはこれで撤退します。お先に失礼しますが、オランダ軍のみなさん、どうかがんばってください、と言い残して帰国することになります。と個別案件について説明しますと、ASEANのどこの国のリーダーも非常に驚かれます。』
百田 『国際社会では、まったく通用しないことですね。』
総理 『通用しません。そんな国とはともに活動したくない、と思われて当然です。インドネシアのユドヨノ大統領にも、そのように話をいたしました。』
・・・・・・
今回の法案、国内では撤退すると言い、インドネシアの大統領にこうおっしゃったと書いてあるんですけど、外国では「国際的にはまったく通用しない、そんな国とは一緒に活動したくない」というご認識を示されたということで、まちがいないですか?
◆安倍首相
いま、辻元議員の述べていらっしゃることはですね、PKOについて
(辻元「イラクです、もし、よろしければ、(本を)どうぞ」)
あ、あの、あ、イラクですね。イラクのオランダ軍につきましてはですね、武力行使をしているところの後方支援活動ではない、ということですから、そ、それは、ま、まさに、いわばPKO活動ではございませんが、いわば、えー、人道、人道復興支援の活動になるわけでございます。いわば、人道復興支援という文脈においてですね。いわば、駆けつけ警護的な、そこではちょっと若干正確性には欠けますが、
(辻元、本をどうぞ、と差し出す)
いや、それは結構ですが、PKOにおける、いわばPKOにおける駆けつけ警護のことも念頭に置きながら、それを述べたわけでございますが、PKOについても駆けつけ警護等は可能になるわけでございますからその点は相当改善されたと、いうことになるわけでございます。先ほど私が答弁しましたのはまさに、これは後方支援でありますので後方で支援をする。戦闘現場になるかならないかということで、文脈で申し上げている通りです。いずれにいたしましても、いま私は総理大臣としてこの新たな法制について申し上げているわけですから、今までのたてつけのなかとは変わり、新たな仮説の中で私が申し上げていることは、その申しあげている通りでございます。
◆辻元議員
総理は、この本でイラクでのサマワでの活動のことをおっしゃっていて、この法案も途中で撤退することになっているわけですよ。そしてそこを取って、国際的には通用しないと、そんな国とは一緒に活動したくないと思われて当然と言われている。今回の後方支援も、同じたてつけになっているわけですよ。
(総理、「違うちがう」と手を振る)
同じですよ。これ、法案の根幹なんですよ。総理は、本心では「国際的には通用しないな、途中で活動を止めることは」と思っていながら、「そんな国とは活動したくないと思われて当然」、と思っている法案の中身をお出しになっている。
それで、総理大臣がそう思っている法案にしたがって、自衛隊員のみなさんが命がけで海外に出ていくんですか?
私、これを読んで愕然としました。今PKOだとかいろいろおっしゃったけど、全部言い訳だと思います。
(総理、首を横に振る)
今回の法案も、途中で活動を止めるわけでしょう? 前と同じでしょう? そうすると、ここでおっしゃっているように、国際的には通用しないと。
総理、もし、通用しないとそう思ってらっしゃる、しかし憲法の制約があるので、それができない、もし、思ってらっしゃるんでしたら、そういわれたらいいと思いますよ。いかがですか?
◆安倍総理
まさに私の念頭にあったのはですね、基本的に他国部隊が襲われた時にですね、その部隊から助けてくれといわれても、それは襲われたという状況になったことをかんがみて、われわれは、「失礼します、と。助けることはできません」危険な状況になったから失礼します、ということになりますよ、という意味のことでございます。
今度の法改正に置いては、駆けつけ警護はできるようになったわけでございます。駆けつけ警護そのものを皆さんは否定しているわけでありますが、それはできるようになったということでございます。
それとは別にですね、まさに武力行使をしているところの後方支援でありますから、これはサマワにおける人道復興支援活動とも全く根本的に違うわけであります。
人道復興支援活動は限りなく、かなりですね、いわば平和維持活動に近づいて行く活動であります。ただ、国連にもとづく、PKO活動ではなかった、ということであります。それを述べていることと、いわば後方支援活動を混同させるべきではない。事実PKOについてもそうですが、後方支援活動においても、そういう状況になれば、撤収するのは当然のことであり、PKOについてもゴラン活動においてもわれわれは、撤収をしている、ということであります。そもそも法律の中に置いて、できることしか、できない。それは当然でありまして、順法精神のもとにおいて、それを行うのは当然のことであろうと。私がどう思うか、思わないかは全く関わりのないことだと思います。これはまさに、法律そのものを見ていただきたいと思います。
◆辻元議員
苦しい答弁だと思います。
ここ(本)にですね。「日本は、ここは戦闘地域になったので、私たちはここで撤退します。お先に失礼します、オランダ軍のみなさん、どうか頑張ってくださいと言い残して帰国する。これは、国際的に非常識だ」と、総理はおっしゃってるわけですよ。私は今回、この法案、無理があるし、私たちはこの点をずっと指摘してきたわけですよ。途中で中断できますか? できないでしょ? と。特にイラクのサマワよりももっと危険地帯に、後方支援は弾薬も運ぶんですよ。そこに送るということで、今の自衛隊、途中で撤収できるか? だから憲法違反だと言われているんです。武力行使と一体化すると。」
これ以降は中谷防衛相への質問に変わるので省略