政府はいくら論議を重ねても国民が理解しないからと16日午後、衆院本会議でも討議を打ち切り強行採決しました。
しかしそれは国民が理解できないのではなくて、国民は明らかに「違憲」の心証を強めているのであり、それに対して政府が一向にキチンとした説明ができていないということです。
第3次アーミテージ報告書の趣旨に適うべく、集団的自衛権の行使に踏み切り、さらにはホルムズ海峡の掃海にも従事することを目的にして作った法案なので、元々合理的な説明など出来よう筈がありません。
TBSニュースがいまだに集団的自衛権の行使の事例が曖昧のままにされていると報じています。
東京新聞もこの2ヵ月間を総括する記事を出しています。
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集団的自衛権「すべては3要件」で曖昧に
TBSニュース 2015年7月16日
集団的自衛権を使えるのはどういう場面なのでしょうか。政府側の答弁が揺れ続けたこの問題について、特別委員会での採決後も中谷防衛大臣は「すべては3要件」と述べるにとどめていて具体的な事例は曖昧なままです。
「密接な他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される、3要件を満たす場合であると。具体的なケースということでお答えしてきたが、すべてはこの3要件に合致するかということで説明してきた」(中谷元防衛相)
集団的自衛権を使える状況を示すため、安倍政権は、「国の存立が脅かされ国民の権利が覆される明白な危険」などの「新3要件」を示していて、これに当てはまる事例が実際にあり得るのかがこれまでの審議では大きな焦点となりました。
「集団的自衛権は憲法違反」、「新3要件の基準は曖昧」との指摘が相次いだことを受けて政府側は当初、「憲法に違反しない極めて限定的な集団的自衛権」を強調。「新3要件」を厳格に当てはめる議論の中で、安倍総理が真っ先に掲げていた「日本人の親子を輸送する米軍艦が攻撃を受ける」事例が要件を満たさないことが明らかになり、具体的な事例としてはいったん「弾道ミサイルから日本を守る米軍艦が攻撃を受ける」という事例に絞られました。
しかし、この事例に対しては、「個別的自衛権で対応が可能」との指摘が根強く、政府は、「集団的自衛権でしか対応できない事例」を挙げる必要が出てきます。
結局、先週になって安倍総理は、朝鮮半島有事を念頭に、「日本人を輸送している米軍艦が攻撃を受ける明白な危険」でも集団的自衛権が使えるとの見解を示しました。
総理が最後に示したこの事例が、「新3要件」に当てはまる「限定的な集団的自衛権」なのかについては、野党は追及しきれないまま審議が打ち切られた形ですが、議論が尽くされたかを問われた中谷大臣は、「すべてはこの3要件に合致するか」だと強調し、依然、事例は曖昧なままです。
「反対」顧みぬ2カ月 違憲判断 世論高まる
東京新聞 2015年7月16日
安全保障関連法案が閣議決定されてから二カ月間、国会審議などで法案の問題点が次々と明らかになった。日本がどういう状況に置かれたら他国を武力で守る集団的自衛権を行使できるのか、政府は答弁の修正や撤回を繰り返し、自ら法案のあいまいさや政府の裁量の大きさを認めた。多くの憲法学者から「違憲立法」との批判を突き付けられ、混乱に拍車をかけた。
集団的自衛権行使の事例で政府の答弁が揺れたのは、中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷掃海。政府が持ち出した理由は石油確保で、経済的な側面が強い。野党側から「どうして国民の生命に明白な危険がある状況になるのか」と繰り返し追及されたが、政府は国民が納得できるような答弁をできなかった。
機雷掃海などへの参加で日本がテロの標的になる可能性が高まる。安倍晋三首相は衆院特別委でこう追及された。
首相が質問した民主党の辻元清美委員に対して「早く質問しろよ」と発言したのは、きちんと答弁できない自身のいら立ちに映った。国民リスクに対する政府の答弁は歯切れが悪く、説明を避けているようにみえた。
法案の焦点が「違憲論」へと移ったのは、六月四日の衆院憲法審査会だ。参考人として招かれた自民党推薦の長谷部恭男・早大教授が安保法案を「憲法違反」と指摘した。与党推薦の参考人が与党の考えに反する発言をするのは極めて異例で、安保法案が「違憲」と国民に印象づける結果となった。
首相が「まだ国民の理解が進んでいないのも事実だ」と認めているように、憲法審査会を境に安保法案に反対する動きが急速に広まる中で採決を迎える。 (木谷孝洋)
安保法案が衆院通過、与党強行 野党は採決不参加
東京新聞 2015年7月16日
集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案は、16日午後の衆院本会議で自民、公明両党などの賛成により可決され、衆院を通過した。民主党など主な野党は質疑打ち切りに抗議して採決前に議場を退出した。15日の衆院平和安全法制特別委員会に続き、与党が採決を強行した。安倍首相が目指す今国会中の成立をめぐる与野党攻防の舞台は参院に移る。
衆院審議では憲法との整合性を疑問視する声が強まったほか、拡大する自衛隊活動に関し歯止めが不明確だとの指摘もあり、参院審議でも焦点になりそうだ。(共同)