2015年7月31日金曜日

安倍政権が「中国脅威論」を強調しだす

 外務省は22日、突如東シナ海での中国のガス田開発の写真を十数枚公表しましたが、それはどういう意図からなのでしょうか。

 中国側は即日、「ガス田開発は争いのない中国の管轄海域排他的経済水域内で行われており主権と管轄権の範囲内だ。日本は対立を作り出そうとしている」と主張しました。
 それはそのとおりで日本のやり方は対立を作る意図があったとしか思えません。 
 
 果たして28日から始まった安保法案の参院特別委では、与党側議員との質疑応答で、安倍首相中谷防衛相中国を名指しし“仮想敵国”扱いの答弁を繰り返すようになりました。
 これまでオフレコの酒席では、安倍首相は安保法案の真の対象は中国であると繰り返してきましたが、なぜ急に、各国が注目している国会でそれを公言するようになったのでしょうか。9月には訪中が予定されているのに実に不可解なことです。
 
 「中国脅威論」をあおることで世論をできるだけ好戦的なものに変え、違憲立法の「安保法案」をゴリ押ししようという意図だとすれば、実に拙劣なやり方というしかありません。まして両国の戦闘機の数を比較するなどはあまりにも好戦的で、9条の精神から離れすぎています。さらに「場合によっては日本が先制攻撃することになる」などといいすに至っては、唖然・呆然というしかありません。 
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“仮想敵国”名指し安倍政権が煽り始めた「中国脅威論」の詭弁
日刊ゲンダイ 2015年7月30日
 もはや「軍事衝突」の危機をあおり、国民の理解を得るしかない――。そんな安倍政権の恐ろしい“本性”が表れていた。28日から始まった安保法案の参院特別委。驚いたのは、与党議員とのやりとりで、安倍首相や中谷防衛相が「中国」を名指しし、“仮想敵国”扱いの答弁を繰り返していたことだ。
 
「中国は防衛識別圏を設定し、領空のような扱いをしている」「中国の東シナ海におけるガス田開発のプラットホーム建設をどう見るか」
 与党のトップバッターで質問に立った自民党の佐藤正久議員は、中国が南シナ海で進めている埋め立て工事の写真などを示しながら、執拗に政府側の認識を質問。これに対し安倍首相は、東シナ海のガス田開発について「08年の(開発に関する日中両国の)合意が守られていない」「南シナ海で中国は大規模な埋め立てをしている」などと批判。中谷防衛相も「中国が海、空軍のプレゼンスを増大させる可能性がある。南シナ海の安定的利用に対するリスクが増大しかねない」と答弁した。
 
 続く自民党の愛知治郎議員は、中国が保有する第4世代(最新鋭)以降の戦闘機数を質問。中谷大臣が「中国が保有するのは731機、我が国は293機」と答弁すると、すかさず愛知議員は「バランスが悪い。いい状況じゃない。だから米軍との協力が不可決。これが抑止力だ」と強調した。
 
 ほかにも中国機に対する自衛隊のスクランブル発進回数の増加などがやりとりされたのだが、要するに安倍政権は「安保法案は中国に対抗するため」と言いたかったらしい。だが、安倍首相は20日に生出演したフジテレビの番組で、男性アナから「目の前の脅威は、ズバリ中国ということですか」と問われ、「私は特定の国だと申し上げるつもりはありません」とトボケていた。それが参院特別委では一転して中国批判だ。一体なぜなのか。
 
「『安保法案はなぜ必要なのか』という疑問に対し、安倍政権はこれまで『安全保障環境の変化』とお茶を濁してきたが、いよいよ国民をごまかし切れなくなった。『中国』という具体名を挙げないとダメだと判断したのでしょう。22日に突然、外務省が中国の東シナ海のガス田開発の写真を公表したのも、その伏線だと思います」(与党関係者)
 違憲立法の「安保法案」をゴリ押しするために「中国脅威論」をあおり、世論を誘導しようなんて、つくづく姑息だ。ヒトラーの参謀、ヘルマン・ゲーリングは「戦争を望まない国民を政治指導者が望むようにするのは簡単。国民に我々は攻撃されかかっているとあおり平和主義者に対して愛国心が欠けていると非難すればいい」と言っていたというが、今の安倍政権そのものだ。
 
 他方、国会で「仮想敵国」扱いされた中国はカンカンだろう。安倍首相や中谷防衛相の敵視答弁を受け、日中関係が今以上に悪化するのは避けられない。元外交官の孫崎享氏はこう言う。
「中国の脅威について論じられていましたが、それは日米安保条約で対応する問題で、集団的自衛権とは何ら関係ありません。東シナ海や南シナ海の話も安保法案と全く関係ない。国会で今、議論されている集団的自衛権は、自衛隊をイラクやアフガンに派兵していいのかということ。それを安倍政権は、中国脅威論をあおって国民をごまかそうとしているのです」
 国民をだましても安保法案に突き進む安倍政権を絶対許してはダメだ。