安倍政権の安保法案の制定は、自衛隊をアメリカの走狗にするという売国の所業に他なりませんが、彼はもう一つ、TPP協定でも、日本国民の権利を全てアメリカの多国籍企業に売り渡すという意味で、正に売国の協定締結に向けて邁進しています。
ISD条項は、多国籍企業が進出先の例えば日本政府から「不当な法律や規制で損害を受けた」とみなした場合、国際的な第三者機関に提訴し、それが認められると日本から賠償を得られる制度です。
第三者機関はアメリカの3人の弁護士で構成され(世銀のビルの一角にある)、多数決で決まり上訴はできず、問題とされた制度の必要性は争われず、「不利益」の有無だけが裁定の争点になります。
もしも日本の医療制度や保険制度が、医薬品の拡販や医療業界に進出を目指す彼らにとって都合が悪ければ、非関税障壁として直ちに訴訟の対象となります。
これまで多国籍企業は訴訟を起して負けたことがないといわれています。
こんな米多国籍企業本位の制度を周囲は何故許容しているのでしょうか。
植草一秀氏のブログを紹介します。
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マハティールが指摘するTPP毒素条項の罠
植草一秀の「知られざる真実」 2015年7月16日
日本の主権者必読のマハティール氏の見識が記されている。
稲村公望氏は元郵政官僚であるが、小泉政権の郵政民営化路線に反対し、日本郵政公社の常務理事、日本郵政株式会社の副会長などを経て、現在、中央大学の客員教授をされている。日本の自立自尊を重んじる、気骨ある学者である。
この稲村氏がマハティール氏の見解を直接聞きだした。全文は『月刊日本』にてご高読賜りたいが、さわりの部分を以下に転載させていただく。
稲村 『月刊日本』は、自立自尊の日本を求める政治評論の月刊誌です。狭い視野のナショナリズムではなく、開かれたナショナリズムを標榜しており、相互依存の世界にふさわしい日本を主張する雑誌です。
まず、交渉が大詰めを迎えているTPPについてお聞きしたい。
マレーシアはTPP交渉に参加していますが、あなたは、TPPは、「マレーシアを大安売りすることになる」と評されました。その真意は何でしょうか。
私は、TPPは「日本の大安売り」にもなるのではないかと考えております。
交渉過程は秘匿されていますし、一部の多国籍企業が、各国の政策を支配することになる危惧があるからです。
日本の中では、TPPは中国を封じ込めるための道具だとの見方もありますが、とてもそうは思えません。
なぜ、あなたはTPPを厳しく批判されるのでしょうか。
マハティール 第一に、通常なら国際協定をつくる交渉においては参加国が集って題目を決めて、参加国で内容を固めていきます。
ところが、TPPの29章の原案は、参加国が対等の立場で用意されたものではなく、米国が自国が有利になるように秘密裏に事前に作成したものであり、到底受け入れがたいことです。
微細に案文が決まっていて、その条項を無効にすることも修正することもできないようになっています。
TPP賛同者は「TPPは国境をなくして市場を開放することを意図している」と言っていますが、TPPが結ばれれば、資本を持っている国の資本がどんどん入り込んで来て、あらゆる企業が買収され、どんなビジネスでもやりたいことを始めることができるようになります。
米国にとっていいことでも、マレーシアにとっては悪いことになります。
マレーシアが、ゼネラルモーターズを買収できるわけはありませんが、資本を持つ彼らは、どこにでも入り込んで、カネにまかせて企業を買収できるので、結局は市場を独占してしまうでしょう。
重大な問題は、「投資家・国家間訴訟(ISD)条項」です。ある国の政府の政策のせいで、企業が損失を出したとすると、その企業は裁判所に訴えることができるとしていますが、裁判所はそれぞれの国の裁判所ではなく、彼らが設立した裁判所で係争することになっています。
そして外国企業が損失を出せば、国内の規制のせいだとされて、国は賠償金を払わされることになります。
ペルーやインドネシアは、多国籍企業が損をしたとして訴えられました。
こうした悪しき先例がすでにあり、インドネシアはTPPに参加しないことを表明しています。
各国が、経済発展を支援するために、いわば幼稚産業を保護する必要があっても、米国企業の参入を妨げるものは、何でもTPPの条文に反することになり、保護政策は排除される制度になっているのです。
私は、TPPによって、マレーシアが自由に国内政策を行うことができなくなると確信するに至ったのです。
TPPは、マレーシア経済をコントロールすることになります。
マレーシアには、民族間の経済格差と不平等の問題があります。
これを是正するために、マレーシアは、米国で言うアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)である「ブミプトラ政策」を採用し、貧しき社会階層を支援して、富裕層に追いつかせようとしていますが、こうした政策はTPPの規定に反することになります。
例外が認められると言いますが、条項を見ると、こうした社会政策を許容するような国際条約の規定にはなっていません。
だから、TPPは自由貿易の協定ではなく、貿易をコントロール、支配するための協定です。
本ブログ、メルマガで主張してきたことと、まったく同じことが指摘されている。
問題の本質を認識する者は、事実を正確に認識しているのである。
TPPの最大の問題はISD条項にある。そして、TPPは米国を中心とするグローバル強欲巨大資本が、彼らの利益を極大化させるために設計したものであり、参加国の国民の利益を軸に構築されたものではないのである。
TPPに入ってしまえば、主権者国民に損失を与える制度が、外部の力によって決定され、強制されることになる。
TPPが国民主権を定める日本国憲法に違反していることも明白である。
日本の主権者が真実を見抜き、主権者自身の利益を守ってゆかねばならない。
(以下は有料ブログのため非公開)