安全保障関連法案の合憲性をめぐり、朝日新聞は判例集「憲法判例百選」(有斐閣、2013年発行)を執筆した憲法学者ら209人にアンケートをし、122人から回答を得ました。
結果は、「違憲」が104人、「違憲の可能性がある」が15人で「合憲」は2人でした(無回答1人)。
合憲と答えた2人は理由を、「国家を守るために必要な範囲に限定されている」、「従来解釈と論理的整合性が欠如しているだけでは憲法違反の理由にならない」としています。
昨年7月1日の閣議決定については116人が妥当でないとし、法案が合憲と答えた2人を含む6人は無回答でした。
政府が集団的自衛権行使容認の根拠として1959年の砂川事件の最高裁判決を挙げているのに対して、判決が集団的自衛権行使を「認めていない」と答えた人は95人で、「認めている」は1人、「その他」が24人で、合憲の2人は「無回答」でした。
なお、法案の合憲派として菅義偉官房長官が名前を挙げた3人は執筆していないため、アンケートの対象に含まれていません。
自由記述欄には、下記のような手厳しいコメントが並んでいました。
・集団的自衛権行使の容認は、解釈の限界を超える
・行使容認の政府解釈は論理的に破綻している
・武力行使の新3要件は定義があいまい、または制限規定となっていない
・新3要件は主観的な『危機』の判断で拡大する基準
・砂川判決で言及されたのは個別的自衛権であることは時代背景と判決理由の文脈から明らか
・砂川判決を根拠とするのは筋違い、またはその一節を根拠とすることは許されない
・砂川判決の曲解以外の何ものでもない、または全くの的外れ
・砂川判決を理由に挙げるのは苦し紛れで、政府の便宜主義と知性の欠如にあぜんとする
・閣議決定で憲法の解釈を変えるのは国民の憲法改正権を奪い、憲法の最高規範性を毀損する
・日本国憲法史上、今ほど憲法が軽々しく扱われたことはない
・憲法無視は国会の正統性を揺るがすもの
・憲法の軽視は基本的人権の軽視につながる
・法案の強行は憲法学への侮辱である
等々です。
詳細は、下記の別記事を参照願います。
11日 憲法学者らから見た安保法案 「曲解」「政策論に期待」
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安保法案「違憲」104人、「合憲」2人 憲法学者ら
朝日新聞 2015年7月11日
安全保障関連法案の合憲性をめぐり、朝日新聞は憲法学者ら209人にアンケートをした。回答した122人のうち「憲法違反」と答えた人は104人、「憲法違反の可能性がある」は15人。「憲法違反にはあたらない」は2人だった。
調査は先月下旬、判例集「憲法判例百選」(有斐閣、2013年発行)を執筆した210人のうち故人1人を除いてメールなどで実施。一部無回答を含め122人(実名85人、匿名希望37人)が回答した。法案と憲法との整合性を問う質問は四つの回答から選ぶ選択式で、「憲法違反にはあたらない可能性がある」は0人、回答なしが1人だった。
違憲か違憲の可能性があると答えた計119人は「集団的自衛権の容認は、解釈の限界を超える」「憲法は武力行使を政策的に判断する権限を政府に与えていない」などを理由に挙げた。一方、合憲と答えた2人は「国家を守るために必要な範囲に限定されている」「従来解釈と論理的整合性が欠如しているだけでは憲法違反の理由にならない」とした。
法案に先立ち、安倍内閣は昨年7月、集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定をした。この妥当性について尋ねたところ、回答した116人が「妥当でない」とした。「都合のよい憲法解釈は法的安定性を失う」といった批判があった。法案が合憲と答えた2人を含む6人は無回答だった。
政府は集団的自衛権行使容認の根拠として1959年の砂川事件の最高裁判決を挙げている。この判決が集団的自衛権行使を「認めていない」と答えた人は95人で、「認めている」は1人。「判決は判断していない」などとして「その他」を選んだ人が24人、無回答が2人だった。
自衛隊については「憲法違反」が50人、「憲法違反の可能性がある」が27人の一方で、「憲法違反にはあたらない」は28人、「憲法違反にあたらない可能性がある」は13人だった。憲法9条改正が「必要ない」は99人、「必要がある」は6人だった。
憲法判例百選は重要判例の概要を紹介し、意義を解説する専門書。13年発行の第6版はⅠ、Ⅱ巻合わせて210人が執筆した。衆院特別委員会で法案の合憲派として菅義偉官房長官が名前を挙げた3人は執筆していない。
法案をめぐっては、衆院憲法審査会に参考人招致された憲法学者3人が憲法違反と発言するなど法的正当性に疑問の声が出ている。