生活保護を受給していた京都市の男性に対して、市が車を処分する(口頭で伝達)か、収入を月額11万円まで増収する(文書で伝達)よう指導したものの、男性が従わなかったとして2006年9月に生活保護の支給を打ち切った件に対して、大阪高裁は17日、差し戻し控訴審判決で打ち切りを違法と認め、市に約684万円の損害賠償を命じました。
それに対し市は上告を断念したので判決が確定することになりました。
市の不当な打ち切りが断罪されたのは喜ばしいことですが、高裁差し戻し判決が出るまで約9年、なんとまたのろまな司法の対応でしょうか。これが日本の司法の標準的なスピードであるならば、あまりにも非常識で、とても正義が行われたなどと喜べるものではありません。
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生活保護打ち切り、無理な条件違法 京都市の敗訴確定へ
京都新聞 2015年7月29日
生活保護を受給していた京都市の和装関連職人の男性が、市の実現不可能な増収指示で保護を打ち切られたのは不当だとして、市に損害賠償を求めた訴訟で、市が上告を断念する方針を固めたことが28日、分かった。大阪高裁は17日、差し戻し控訴審判決で、打ち切りを違法と認めて、市に約684万円の損害賠償を命じており、この判決が確定する。
判決などによると、男性は生活保護を1996年から受給しており、仕事に必要として車の保有を認められていた。市は生活保護を継続する条件として、男性に対して、口頭で車を処分するか、文書で収入を月額11万円まで増収するよう指導、指示した。しかし、男性が従わなかったとして、市は2006年9月、生活保護の支給を打ち切った。
判決では、市の指示は、収入を月額11万円まで増収すべきとする内容のみと指摘。男性が月額11万円の収入に達した月はほとんどなく、病気の妻の世話などで仕事の時間を増やすことは難しい状況などを挙げ、市の指示は「客観的に実現不可能、または著しく困難」として、打ち切りを違法と認めた。市が口頭で指導した自動車の処分は、指示の内容に含まれないとした。
市地域福祉課の古川仁保護担当課長は上告を断念する理由について「上告しても受理される要件に該当しないと判断した」としている。
訴訟をめぐっては、最高裁が昨年10月、「車の処分を求めた口頭指導などを守らなかったので保護を廃止した」とする市の主張を認めた二審大阪高裁判決を破棄し、審理を差し戻していた。
■根拠ない打ち切りに歯止め
吉永純 花園大教授(公的扶助論)の話
生活保護の打ち切りは、受給者にとって生活できなくなる恐れがある重い判断。就労収入の増額を求める指示は全国でもよくあるが、判決は本人の能力や実績、家族の状況などを踏まえた実現可能なものでなければならないと明快に判断した。行政による根拠のない指示違反を理由とする乱暴な打ち切りなどに歯止めをかける貴重な判決だ。