参院選争点化を懸念
産経新聞 2016年4月1日
与党は1日、昨年9月以来開かれていない衆院憲法審査会を今国会中も開催しない方針を固めた。公明党は夏の参院選で憲法改正を争点化しないよう求めており、自民党も選挙前に安全保障関連法をめぐる議論などを蒸し返したくない思惑があるとみられる。ただ安倍晋三首相(自民党総裁)は在任中の憲法改正に意欲を示し、党は参院選公約にも改憲を掲げる予定。論議を封印すれば、国民の理解が深まらないとの懸念も強い。
「自民党の政権公約に(憲法改正は)ずっと入っている。党として示していることを任期中にやらないこと自体がおかしい」
首相は3月28日の参院予算委員会で、在任中の憲法改正実現に改めて意欲を示した。首相は夏の参院選で、憲法改正発議に必要な3分の2以上の改憲勢力確保を目標に掲げており、本来なら発議に向けた道筋などの議論を深めたいところだ。
ただ、連立を組む公明党は正面から改憲を掲げることに慎重姿勢を崩さない。山口那津男代表は先月27日放送のラジオ番組で、参院選で争点化することについて、9条改正に意欲的な首相を念頭に「やはり9条も変えたいのかと受け取られかねない」と指摘。「国民の不信や不安を招く問題提起は得策ではない」とも述べ、慎重な対応を求めた。
公明党幹部は、憲法解釈と安保関連法で集団的自衛権の行使を容認した経緯に触れ「支持者への説明に相当のエネルギーを使い、今も完全に理解されているとはいい切れない」と語る。
この時期に衆院憲法審を開けば、野党が安保関連法の議論を蒸し返すのは必至だ。与党には、昨年6月の参考人質疑で自民党推薦の憲法学者が安保関連法を「違憲」と断言し、野党に徹底抗戦の材料を与えた記憶も残る。このため自民党は「どこから弾が飛んでくるか分からない審査会を、選挙前に無理に開く必要はない」(幹部)と判断したようだ。
一方、野党も開催見送りは得策と判断しているとみられる。民主党が維新の党を吸収して結成した民進党は、憲法改正をめぐる意見がバラバラで、審査会で足並みの乱れを露呈したくないのが本音。選挙協力を模索する共産党との路線対立を避ける狙いもある。