2016年4月13日水曜日

13- 西川TPP暴露本 マスメディアが批判しないワケ

 衆院TPP特別委員会の西川委員長が出版する予定だった“暴露本”をめぐる与野党の攻防は向に収まる気配がなく、委員会は空転に次ぐ空転を続けています。
 しかしその発端となった45ページにわたる黒塗りの交渉経過資料を含め、大新聞・テレビの中でそれらのことを舌鋒鋭く追及しているところはありません。
 
 皮肉なことにその理由が、西川氏のTPP暴露本からすべて読み取れるということです。
 その暴露本には、TPP交渉の現地(シンガポールやアメリカ)では連日、21~23時に自民党派遣団の滞在ホテルにTPP担当の番記者たちが数十人集まって大宴会を開いたことや、帰国してからも西川氏主催の番記者たちとの「懇親会」が赤坂の居酒屋で行われたことが書かれ、その写真も載っているということです。
 番記者たちがそこまで接待されて西川氏らと“ズブズブの仲”になっているのであれば、もはやTPPや黒塗りの批判どころの話ではなくなるというものです。
 大マスコミは自分たちが安倍政権に取り込まれていることがバレるのを恐れて政府の肩を持っているわけです。
 かくして国の主権を差し出すと言われるTPPの審議は、マスメディアの無批判の中で進められようとしています。
 まことに救いのない話です。
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西川TPP暴露本 新聞&テレビが“黒塗り”を批判しないワケ
日刊ゲンダイ 2016年4月12日
 衆院TPP特別委員会の西川公也委員長が出版する予定だった“暴露本”「TPPの真実―壮大な協定をまとめあげた男たち」をめぐる与野党の攻防は一向に収まる気配がない。
 
 野党は「適切な情報開示をしろ!」と追及しているが、自民党は「条約に関するものであれば、TPPに限らず、交渉過程の資料はどのようなものでも“黒塗り”のものを出す」(小野寺五典政調会長代理)などとすっとぼけ続けている。ところが大新聞・テレビから舌鋒鋭い批判の声は聞こえてこない。
「そりゃそうでしょう。西川氏のTPP本には、夜な夜な記者たちと“懇親会”を開いていたという一節まで出てきますからね」と話すのは、西川本のゲラに目を通したというある野党議員だ。
 
 何でも、こんなことが書かれているらしい。
 西川氏らはTPP交渉に初参加して以来、自民党派遣団の滞在ホテルに自民党やTPP担当の番記者たち数十人を集め、連日連夜9~11時まで大宴会。参加者それぞれが酒を持ち寄り、記者は大半が免税店で買ってきたウイスキー。議員が持参した沖縄の泡盛は大変な人気だったとか、ゲーム形式の質問タイムを設け、議員の司会が上手だったから記者懇は大いに盛り上がったなんてことまで記されているという。
 
「そこには、ニュースのニュアンスは記者のさじ加減で変わるといった内容の一文も出てきます。記者懇の目的は、推して知るべしでしょう。さらに西川本には、赤坂の居酒屋で記者たちと仲良く撮った写真まで載っている。その一方で、TPP反対運動の中核的な役割を果たしていた日本農業新聞については、社長の実名まで挙げ、厳しすぎるときもあるなどと暗に批判しています」(前出の野党議員)
 
 これじゃあ懇親会じゃなくて接待、西川氏らと番記者が“ズブズブの仲”だと勘繰られても仕方があるまい。元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏はこう憤る。
「勘繰りどころか、そのものズバリでしょう。西川氏本人も政府・与党もきちんと答えていない。野党が審議拒否したのは当然だと批判してしかるべきなのに、大マスコミは自分たちが安倍政権に取り込まれていることがバレるのを恐れて、肩を持っているだけです」
 ダメだ、こりゃ。