2016年4月4日月曜日

パソナへの「辞めさせ出向」 田辺三菱製薬が撤回

 リストラ対象の労働者を「日本雇用創出機構」に出向させ、転職先を探させようとしていた田辺三菱製薬が、「辞めさせ出向」を撤回したことが2日、わかりました。
 出向日である4月1日、同社は「厚労省から指導があったため、出向をやめてほしい」とパソナから連絡が入ったとして、出向を撤回したというものです
 
 竹中平蔵氏会長をしている最大手人材派遣会社パソナの 子会社である転職支援会社「日本雇用創出機構」のやり口は、大企業などがリストラしたい対象者たちを、”再就職支援”という口実で受入れた後に、ノルマを課して自分の再就職先を自分で探させるという絶望的な境遇に落とし込んで辞めさせるというものでした。
 リストラ対象者たちがそうして傷つきながら退職せざるを得なくなるのとは対照的に、人材派遣会社の方はそういう人たちを受け入れるたびに「転職支援費用」の名目で多額の収入を得ることができます。安倍政権下の14年4月からその予算が大幅に増額されて、転職支援費用の2/3が国費で助成(転職者1人当たり最大60万円)されるようになりました。当時竹中氏は既に「産業競争力会議」のメンバーを務めていたので、人材派遣業に有利なように画策したのではないかとも言われていました。
 
 この件に関しては3月24日の参院厚生労働委員会で共産党の小池晃議員がそうした非道なやり方を告発して実態調査と対策を求めたのに対し、塩崎厚労相は「しっかり調査する」と表明していたものです。「雇用創出」などという偽名の蔭に隠されていたブラック企業そのもののあり方に、何はともあれ抑制が掛かったことは喜ばしいことです。
 しんぶん赤旗の2つの記事を紹介します。
 
     (関係記事)
3月30日 出向社員の待遇は悲惨 パソナ子会社の『追い出し部屋』
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パソナへの「辞めさせ出向」 田辺三菱製薬が撤回
しんぶん赤旗 2016年4月3日
小池議員追及実る
 リストラ対象の労働者をパソナ(竹中平蔵会長)グループの転職支援会社「日本雇用創出機構」に出向させ、転職先を探させようとしていた田辺三菱製薬(本社・大阪市中央区)が、「辞めさせ出向」を撤回したことが2日、わかりました。
 
 パソナの転職支援会社への出向は、労働者本人に退職後の再就職先を探させるもので、「辞めさせ出向部屋」とよばれています。
 この問題をめぐって3月24日、日本共産党の小池晃議員が参院厚生労働委員会で追及。塩崎恭久厚労相は「人事権を乱用して出向させて再就職先を探させるのは不適切」と答弁し、「しっかり調査する」と表明していました。
 
 田辺三菱製薬は昨年10月、12月までに早期退職を募集すると発表。634人が早期退職に応募しました。応じなかった労働者約30人に、「あなたにしてもらう仕事はありません」などとのべ、日本雇用創出機構に出向する辞令を出しました。
 しかし、出向日である4月1日、同社は「厚労省から指導があったため、出向をやめてほしい」とパソナから連絡が入ったとして、出向を撤回しました。
 リストラ対象の労働者に対して田辺三菱製薬は、昨年11月から今年2月までの4カ月間で、早期退職への応募やパソナへの見学などを求める“面談”を10回程度実施。退職に応じた労働者では10回を大幅に超える“面談”をされた人もいたといいます。
 
 同社の関係者は、「小池議員の質問の効果で、パソナ出向がとりやめになりました。引き続き奮闘してほしい」と話しています。また今後、リストラ対象となった労働者が、社内にある「追い出し部屋」に異動させられることから「会社に残れるような国の対応が必要だ」と語っています。
 
 
パソナ「辞めさせ出向部屋」 転職活動強いる片道切符
しんぶん赤旗 2016年3月25日
 日本共産党の小池晃議員が24日の参院厚生労働委員会で取り上げた、大企業と大手人材・派遣会社パソナグループがつくっている「辞めさせ出向部屋」。その恐るべき実態は―。(深山直人)
 
 「出向して、転職先をみつけてほしい」
 富士電機の子会社、富士電機ITソリューション社員のAさん(48)が上司から通告されたのは、2011年のことでした。
 「退職勧奨だ」と思ったAさん。拒否しましたが「君の席はない」といわれ、業務命令でパソナグループの転職支援会社・日本雇用創出機構に出向させられました。
 機構での仕事といえば、転職先を探して面接を受けたり、ハローワークに通うこと。「出向といっても戻れない片道切符。業務命令で拒否できない。こんなやり方は許せない」とAさんは語ります。
 Aさんはその後、会社と和解し、機構に対しては損害賠償を求めて裁判で係争中です。
 
 シャープ系列のアルバックでも2012年から、人員削減対象者となった管理職も含めて50人程度を機構に出向させました。
 
■過酷なノルマも
 連日、求人先訪問を課して結果を報告させる過酷なノルマに、労働組合が神奈川労働委員会に訴え、あっせんを受け、ようやくAさんは元の職場に戻れました。
 これまでは、労働者が退職するか、退職が決まってから人材会社に委託して再就職先を紹介するやり方が通例でした。パソナのやり方は、リストラ対象者を出向で受け入れ、自ら転職先を探させるやり方です。パソナグループ代表でもある南部靖之会長は、「失業なき転職『人材ブリッジバンク』」と誇っています。
 しかし、拒否できない出向で転職活動を強いられているのが実態です。熱心にやらなければ不利益扱いされ、まじめにやればやるほど自分を退職に追い込む―「自発的意思を装って退職に追い込む巧妙な仕掛け」(戸舘圭之弁護士)と指摘されています。同機構にコメントを求めましたが、寄せられませんでした。
 
■安倍内閣が支援
 安倍内閣は、「雇用維持型から労働移動支援型に転換」といって、こうしたリストラを支援する「労働移動支援助成金」を大幅に拡充してきました。
 同助成金は、人材会社に委託した再就職支援費の半分を支給。2014年度予算では301億円を計上し、前年度予算から158倍にも増やしました
 当初は中小企業だけが対象でしたが、大企業にも支給を拡大。再就職時だけでなく委託時にも支給。人材会社などが「転職訓練」を行うだけでも支給できるようにしました。労働者を「追い出し部屋」に配転し退職強要する大企業や、会社に代わって退職強要する人材会社にも支給されるようになったのです。
 Aさんはいいます。「こんなやり方を支援するなんて許せませんよ。人権無視のリストラをやめさせ、雇用を守るべきです」
 
◇機構の主な株主・賛助企業
 旭化成、オリックス、京セラ、コスモ石油、ソニー、第一三共、キヤノン、JR西日本、ソフトバンク、ダイキン、電通、東レ、パナソニック、富士通、三菱電機、三井住友海上、リコー