2016年4月5日火曜日

物価上昇、若年層を直撃 格差対策に鈍い政府

東京新聞 2016年4月4日
 金融資産の格差が拡大しているのは、株高など金融緩和の恩恵が富裕層に限られる一方、低所得層は、円安による物価高という金融緩和の「副作用」で、金融資産を食いつぶしていることが要因とみられる。識者からは対策を求める声もあがるが、政府の反応は鈍い。 (吉田通夫)
 
 日銀のアンケートで鮮明なのは単身世帯の苦境だ。中でも二十代の人たちは、預貯金を持っていない人が多い。物価上昇による生活費負担と消費税増税が、所得の低い若年層を直撃している。
 若年層で非正規雇用が増えていることも一因とみられる。総務省の労働力調査では、二十五歳から三十四歳までの若い労働者のうち非正規雇用は27・3%で、安倍政権が本格始動する前の一二年より1ポイント近く上昇。このうち三割もの人が「正社員として働きたかったが就職できなかった」と答えており、不安定な低賃金労働に苦しむ姿が浮かび上がる。労働者派遣法の改正により、今後はさらに非正規雇用が増える可能性もある。
 円安で収益を上げた大企業は政権の要請で賃上げを実施してきたが、中小企業や非正規職員には波及しにくい。若い世代での低所得層の増大は消費低迷という形で経済に打撃を与えているが、未婚や少子化の加速にもつながり、日本社会自体の活力をそいでしまう。仏経済学者トマ・ピケティ氏も「行きすぎた格差は経済成長を阻む」と指摘している。
 
 しかし、金融資産格差の実態についての調査を政府はほとんどしていない。三月二十九日の参院予算委員会では安倍首相は総務省の家計調査を基に「貯蓄がない世帯は減った」と説明した。だが、家計調査で金融資産について調べているのは二人以上世帯だけ。本来懸念されるはずの単身の若い人たちや高齢者については細かく調べていない
 立命館大学の高橋伸彰教授は「統計に表れなくても年金生活の高齢者など追い詰められる人が増えている。困っている世帯には役立たない金融緩和ばかりに経済政策を頼っていることに問題の根幹がある」と指摘している。