自民党の高村副総裁は3日放送のNHK「日曜討論」で、「自民党改憲草案」が「公益及び公の秩序」による人権制約を認めていることについて、「現憲法の『公共の福祉』を置きかえただけ」などと言い訳しましたが、それは自民党の「改憲草案Q&A」からみても成り立たないものです。
「改憲草案Q&A」では、現憲法は 「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、『公共の福祉に反しない限り』最大限に尊重される」としているが、「公共の福祉」はその意味が曖昧で、分かりにくいとして、「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」と述べています。
現行の憲法は、「基本的人権」は法律によって制限されることはなく、個人の基本的人権が「干渉」しあうときに「公共の福祉」という概念を導入して調整するという考え方に基づいています。それは基本的人権はそれ以外の要因によって制限されることがあってはならないからです。
それに対して自民党案のように「公益及び公の秩序に反しない限り」とすると、政府の見解や法律によって「公益」の内容が定まるので、「基本的人権」がそれらによって自由に制限されることになり、自民党改憲案に謳われている以下の権利、
憲法が国民に保障する自由及び権利(12条)、
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利(13条)、
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由(21条)
などが、ことごとく法律等で制限されることになります。
そもそも「公益及び公の秩序に反しない限り認める」という言い方は、大日本帝国憲法の下記の青字部分を言い換えたものに過ぎないので、国民の権利を戦前のレベルに戻そうという考え方に他なりません。
第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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自民改憲案「Q&A」が“告白”
「公益」優先 人権は制約 高村氏の言い訳 成り立たず
しんぶん赤旗 2016年4月5日
自民党の高村正彦副総裁が3日放送のNHK「日曜討論」で、「自民党改憲草案」(2012年4月)について述べた言い訳が、自民党自身の「改憲草案Q&A」からみても成り立たないことが浮き彫りになっています。
高村氏は同番組で、同党改憲草案が「公益及び公の秩序」による人権制約を認めていることについて、「現憲法の『公共の福祉』を置きかえただけ」などと言い訳しました。
「公共の福祉」とは、人権と人権が互いに衝突する場合にそれを調整する原理です。ところが、自民党が改憲案を説明するために作成した「Q&A」では「公共の福祉」について「その意味が曖昧で、分かりにくい」と非難。「公の秩序」に書きかえた理由について、「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」と告白しています。
自民党改憲案には「国防軍」創設や「機密の保持」義務が明記されており、それらが「公益」として優先され、人権が制約されることは明らかです。
日本共産党の志位和夫委員長は同番組で、高村氏の弁明に対し「(公の秩序による制約は)上からの国家目的のために人権を縛るというもので、まったく違う。立憲主義破壊だ」と批判しました。
志位氏は、自民党改憲案について、
(1) 戦力の不保持を定めた9条2項の削除と「国防軍」創設で海外での武力行使を無制限に可能とする
(2) 「緊急事態条項」創設で事実上の戒厳令を可能とする
―ことも合わせて指摘し、「憲法が憲法でなくなるものだ」と糾弾。参院選で、安倍改憲を許すのか戦争法を廃止するのかが大争点になっていることを浮き彫りにしました。
自民党改憲草案 13条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。